2013年05月10日
●続和文解釈入門 第89回
遂行動詞を否定すると(専門的に言えば発語内的否定)、元の発語内行為の否定ではなくて、保留であり、「ない」は遂行動詞ではないということが、入江幸雄先生の『発語内的否定と質問』という論文に書かれている。つまり遂行動詞を否定すると、否定された動詞は遂行動詞とは言えず、単に動作が否定されていることになるという意味である。ご参考のために、発語内的否定と命題的否定の違いを入江先生の論文に従って例文で示す。なお、「主張する」は遂行動詞である。
(発語内的否定)私は、aはbである、と主張しない。
(命題的否定)私は、aはbでない、と主張する。
次の文は第81回の本文にあるような結果の非存続の用法だが、遂行動詞が否定されているために、遂行動詞ではなくなっている。つまり、現在の時点では動作はないのだが、過去において動作がなかったということではなく、動作はあったが、結果が現在まで残っていないという、いわば不完了体過去形を使った結果の非存続という用法になる。
(そういうつもりで言ったのでは全くないのです)Я совсем на это не имел в виду.
出題)「あの峰々の間に寺がある」をロシア語にせよ。
(1) Между теми
вершинами есть
буддийский храм.
(2) Сквозь те вершины
виден буддийский
храм.
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(2)は眼鏡越しに、ガラスを通して、穴を通してというような場合ですから違います。(1)はロシア語自体としてはともかく、「あれ」を単にтотという風にご理解され得いるのであれば違います。私の答えは、Между этими горами и расположен буддийский храм.
指か何かで指し示すなら、теми горамиでもよい。ロシア語と日本語の指示代名詞の違いについては次回の本文にて説明する。
Там в горах стоит храм.
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「山々のあそこに」ということですから、違います。
(お題)
あの峰々の間に寺がある
(コーシカ訳)
Храм находится среди вершин тех гор.
現在の状態ですから不完了体が適すると考えます。
さて、正解は
んん、располагать。確かに建物関係はこちらが多いような気がします。
しかも被動形動詞過去短語尾。結果の現存…かな
этиなんですね。外国語での距離感は難しい…
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среди + 生格とмежду + 造格はシノニムですが、同義語の場合と類義語の場合があります。これについては、第94回本文に書いておきますので、参照願います。