2013年05月29日
●続和文解釈入門第106回
拙著の『和文露訳入門』を通読すれば、体の使い分けがすぐに分かると言いたいが、必ずしもそういうわけにはいかない。ロシア語の学習レベルというのは人それぞれだからだ。体の奥義を究めるために私の勧める読書法は、1日10ページでもいいから、『和文露訳入門』を読んでみて、とにかく通読する。そのときに例文には注意を払わない。本文を通読して、体の本質という事に対して著者が何を言いたいのかを頭の隅に置くようにする。一冊丸々理解するとか、ましてや例文を暗記するなどという事は考えない。この本は全部で270ページぐらいだし、今度出す『新訂和文露訳入門』は380ページぐらいの予定なので、1カ月あればどこに何を書いてあったかがおぼろげながら分かるようになる。体の本質に関する内容がどうであるというのではなくて、ただ時制には3つあって、過去・現在・未来で、他に命令法と不定法があったなぐらいでよい。その後、第1章の体の本質と規範を再読してみる。通読してみれば、各項目に書いてある体の用法で分かりやすいところ、分かりにくいところが見えてくる。用法がよく理解できなかった項目は、目次に印をつけておく。その後、自分が理解しにくいと思う項目を、気が向いたらアトランダムに読んでみる。自分が理解しにくい項目がいっぱいあり過ぎて分からなければ、その優先順序をつける手段として、このコーナーの出題の日本語を読んでみる。語彙はともかく、どの体を使うのか分からなければ、回答に書いてある体の用法を見て(もし書いていなければ、私宛に投稿いただければ当該項目番号を知らせる)、『和文露訳入門』の目次を利用して、当該項目を再読するという方法である。『和文露訳入門』には数えたことはないが500以上の例文が再録されているはずなので、自分が和訳を見て露訳できなかったものを1日一つ丸暗記するというのを並行してやるのも、いろいろな分野の語彙を増やすうえで有効だと思うし、このコーナーの出題に対して回答する(実際に回答を寄せるかどうかは別にして)というのも役に立つと思う。『和文露訳入門』の目次が体の使い分けそのものなので、目次にさらっと目を通しておけば、またその項目に戻って理解を深めればよい。第1章に書かれている体の本質と実際の個々の項目にある用例を往復することにより、実際の体の運用について奥義に至ると確信している。近く出版予定の『新訂和文露訳入門』は目次数も増やし、より理解しやすい工夫をしたつもりである。今回の出題は本文の内容に則した設問である。
出題)「ここに書かれていることを全て丸暗記する必要はありませんが、あらゆる質問への答えをどの章で探すべきかを精確に心に思い浮かべなければなりません」をロシア語にせよ。
Нет необходимости
зазубривать все, что
здесь написано, однако, вам нужно
точно запоминать,
в какой главе следует поискать
ответы на всякие
вопросы.
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поискатьと完了体にすると、具体的な1回の動作ですから、всякие вопросыという反復を示すような語句とはうまくつながりません。запоминатьは記憶するということですから、頭に浮かべるというのとは違います。私の答えは、Вам не нужно знать наизусть всё, что здесь написано, вы должны только точно представлять себе, в каком разделе искать ответ на любой вопрос.
Не нужно помнить всё, что там написано, но надо точно угадать, в каком обзаце найти ответ на какой бы то ни было вопрос.
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обзацはабзацでしょうが、段落ということで違います。помнитьは覚えているということで、状態の動詞であって、暗記するという動作を示すものではないので厳密に言えば違います。угадатьは完了体で1回の具体的動作を示すので違います。найтиは見つけるという意味であって、探すという意味はありません。
(お題)
ここに書かれていることを全て丸暗記する必要はありませんが、あらゆる質問への答えをどの章で探すべきかを精確に心に思い浮かべなければなりません。
(コーシカ訳)
Вы должны представить точно, к какой главе вы обратитесь за ответы на всякого рода вопросы, хотя не нужно запоминать (наизусть) все написанные здесь.
う~む長いと大変。
представитьは完了体を取ることで、今後生じる個々の場面への対応を表すと考えます
(未来+具体的な行動)。
обратитьсяも上記と同様に完了体で、未来における具体的な行動を指します。
ответыは様々な質問に対する様々な答えと考えて複数です。
вопросыは色々な内容があり得るので
(たとえ「あらゆる」が問題文に含まれていなくとも)複数です。
запоминатьは不要を表す文脈の動詞ですから不完了体を取ります。
さて、正解は
あらゆる問題に対応する以上、複数回を想定し
представлять、искатьと不完了体を取るのが相応しいのですね。
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「представитьは完了体を取ることで、今後生じる個々の場面への対応を表すと考えます(未来+具体的な行動)」と理解されているようですが、違います。долженは叙想語(主観を示す)ですから、本来はお答えのように完了体不定形を取るのが筋です。しかし、それは具体的な場合であって、出題のような反復をしめすもの(この他に研究するなどある程度の期間を示す動詞)には不完了体が来ます。
обратиться к + 与格 за + 造格です。