2013年03月01日
●続和文解釈入門 第21回
不必要はもっとも重要な不完了体の属性とされる。ラスードヴァ先生もそう書いてはいるが、どうしてなのかという説明はだれからもない。そこで自分なりに考えてみたので、『和文露訳入門』をご購入された方は、6-1-2項を下記のように追補したので、御一読願う。
「不必要はもっとも重要な不完了体の属性とされる。その理由として考えられるのはこうである。должен(~しなければならない), надо(~する必要がある), нужно(~する必要がある), хотеть(~したい)などの叙想語は具体的な1回の動作を示す時には、主観的ニュアンスを帯びているために完了体と結びつきやすい。それはその動作に文の焦点が来るからである。ただ一定の期間を示す場合は不完了体を使わざるを得ない。逆にこの叙想語を、不必要という否定的な文脈で使えば、主観的ニュアンスを否定するわけだから、不完了体と結びつくことになる。つまりне надо, не нужно, не следует, не стоитなどの後に続く不定形には、必ず不完了体を使わなければならなくなるという意味である。何も要らないというのは、動詞の基本的意味(動作そのもの)も否定するわけで、その基本的意味を否定するために不完了体の出現が必須であるという事になる。不必要は意味的に禁止(3-2-4、5-1-4、6-1-5項)や嫌気(6-1-1-2項)につながるために、これらの文脈でも不完了体不定形が用いられる。6-2-6-3項も参照のこと。不必要、禁止、嫌気も主観的ニュアンスだが、このニュアンスを担うのは叙想語であり、расхотеться(~したくなくなる)のような否定詞неを伴わない動詞が叙想語を兼ねれば、完了体が来る可能性が高い。хотетьが不完了体なのは、反復や状態の動詞、遂行動詞だからだと考えられる。
(お見送りの必要はありませんから)Провожать меня не надо, спасибо.
(子供をおもちゃで甘やかす必要はない)Детей не надо баловать игрушками.」
出題)「我々はそれを秘密にしたことはない」をロシア語にせよ。
(1) Мы никогда не
это скрывали.
(2) Мы никогда не
делали секрет из
этого.
(3) Мы никогда не
держали это в секрете.
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すべて正解ですが、個人的には(2)が出題により近いように感じます。ただэтогоが語末に来ているので強調されている感じはしますが。それとсекретаは具体的な秘密を指しているわけではないので、否定生格にすべきだと思います。私の答えも、Из этого секрета мы никогда не делали.
Я не сохранял его в тайне.
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正解ですが、егоだと先行詞が男性か中性の単数名詞という前提が必要です。そういう意味でэтогоがよいと思います。
(お題)
我々はそれを秘密にしたことはない
(コーシカ訳)
1) Мы это никогда не держали в тайне.
2) Мы это не держаем в тайне.
3) Из этого мы не сделали тайну.
4) Мы это не сохранили в тайне.
「…したことはない」と行為の否定ですから不完了体が適すると思います。
ただ1)では「決して秘密にしなかった」と過去の話になってしまう恐れがあり、
2)では「秘密にしていない」という訳の方が適切になってしまうように感じます。
3)は研究社の例文から作りました(2296頁、тайна):「それを材料に秘密をこしらえる」
という意味合いかと思います。これなら結果の現存の意味を出せるはずです。
тайнаをсекретにそれぞれ代えても大きく意味は変わらないと思います。
…とここまで書いて、сохранитьという完了体動詞を思い出しました。
さて、正解は
具体的な事柄が話題ではなかったのですか。それなら否定生格になりますね。
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3)や4)はロシア語として正しいのですが、出題の露訳としては間違いです。出題は「~したことがない」と経験の用法ですから、不完了体過去形が来る必要があります。3)や4)は否定の強調(結果の現存でもありますが)としてなら、「そんなことを秘密なんかにしなかったよ」ということです。これでも分かるように、ロシア語が正しくとも、元の和文と対応しているかは別の問題です。日本語が会話程度しかできないロシア人に、和文露訳をチェックしてもらうときには、このような点に留意する必要があります。