2013年01月11日
●和文解釈入門 第602回
前々回の投稿者の回答を読んでいるうちに、過去の時制の否定の強調について考えてみた。アオリスト的用法というのは、過去の一点において一度具体的な動作が行われたことを示すのだが、これを否定文に使えば、一度も行われなかったということになる。「一度も~ない」というのは否定の強調であり、ゆえに否定の強調もアオリスト的用法だというふうに理解できるのではなかろうか。
動作の一括化についても出題したが、ほぼ連続して行われた動作が、細かい点のように理解され、それが主観的に大きな一つの点に見立てられるとすれば、それはアオリスト的用法そのものだということになる。ほぼ連続した動作と見なせるための動詞が限られているので、普遍的な完了体の用法とはならなかったのだろう。
このように和文露訳入門を7月末に出してから今日に至るまで、これまでと本質的に異なるような新しい知見はないものの、体の用法についてより系統的な説明がつくようになったような気がする。このように考え直すきっかけとなったのも、投稿者からのフィードバックのおかげであり、ここに改めて投稿者の皆様に感謝申し上げる。
ついでだが、いろいろ考えて相転移型動詞(誤伝の動詞改め)を、さらに結果現存兼評価型動詞と名称変更することにした。その方が内容を表していると思うからである。
設問)「妻のつわりはひどかった」をロシア語にせよ。
(1) Жену тяжело
тошнило во время
беременности.
(2) У моей жены была
тяжелая тошнота,
когда она беременела.
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つわりは吐き気だけでしょうか?私の答えは、Беременность жена преносила плохо.
переносить = обладать способностью выдерживать какое-либо воздействие на организм(人体への耐性がある)ということで、不完了体で何らかの体質を示しています。似たような表現に、
Я хорошо (плохо) переношу жару (холод).(暑さ(寒さ)には強い(弱い)です)
Как вы переносите качку?(乗り物には強いですか?)
Вы хорошо переносите полёт?(飛行機は大丈夫ですか?)
Как вы переносите лекарство?(その薬は大丈夫ですか?)<アレルギーがあるかどうかなどを尋ねるときに>
Жена так страдала от токсикоза беременности.
страдать от にするか страдать чем にするかで迷いましたが、妊娠は病気ではないのだからと от をとりました。
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確かに妊娠は病気ではないと思います。つわりをтоксикоз беременностиとしていますが、妊娠中毒症(現在の妊娠高血圧症候群)の用語として1970年版の露和医学辞典(大矢全節編、金原出版)にありますが、今ではтоксикоз беременных と言い、つわりはрвота беременных (рвота при беременности, у беременных), ранний токсикоз беременных(ロシアでは妊娠20週前であればこのように言う)であり、поздний токсикоз беременных = ОПГ-гестоз(日本では妊娠中毒症が妊娠高血圧症候群と2005年から改称された)ではないかと思います。お答えでは、妊娠高血圧症候群と誤解される可能性があるように思います。
страдать чемとот чегоの違いですが、確かにстрадать тяжёлой болезнью(重病である)や страдать головной болью(頭痛持ちである)と言いますが、страдать от головных болей (бессонницы, ревматизма)〔頭痛(不眠、リューマチ)に悩む〕ともいいますから、あまり変わらないように思います。от какой болезни страдатьという語結合も語結合辞典にありますから、こだわる必要もないと思います。
Жена страдала от тошноты по поводу беременности.
昔妊娠したときひどかったということで不完了体。
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設問は過去形ですから昔のことなのですが、つわりが軽いかどうかは体質的なもの(長期間にわたるとか、常にそういう状態が続いているという意味で)だから不完了体ということなのです。тошнота = неприятная томительная ощущение, предшествующее рвотеは吐き気であって、嘔吐ではないことは露露辞典の定義からお分かりと思います。つわりでは、吐き気のほかに嘔吐も含みます。
1) У моей жены была сильная тошнота во время беременности.
2) Моя жена страдала от сильной тошноты во время беременности.
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妊娠時の吐き気だけではなく、嘔吐そのもののことをロシア語ではつわりと呼ぶようです。
У моей жены бывало сильная тошнота при беременности.
Моя жена сильно страдала от тошноты при беременности.
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妊娠時の吐き気というよりは嘔吐そのものをロシア語ではつわりというようです。吐き気は周りに実害がないが、嘔吐するとその始末が大変という実利的というか実害的ものでしょうか?