2013年01月09日
●和文解釈入門 第600回
硬軟取り混ぜて幅広くロシア語の本を読むべきだと書いたが、柔らかい方で自分が読むのは警察小説である。隠語が多いが、会話の場面も結構多く 勉強になる。読まないのに進めるのはどうかとは思うが、日本で出ているハーレクイーンのような恋愛小説ロシア版も好きな方には勧める。会話が多いだろうし、決まり文句の宝庫だろうからだ。自分で小説を書くなら別だが、通訳に必要なのは出来るだけ多く決まり文句を覚えることである。正しく使えば、その方が相手の理解が早い。ただ決まり文句を丸暗記するのではなく、一応、単数複数や体の用法について一考してみれば、よりロシア語に興味もわくし、語彙の習得にもよいと思う。
設問)「追うものも追われるものに力ではひけを取らなかった」をロシア語にせよ。
Догоняющий не уступал в силе догоняемому.
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追うものと追われるものの解釈ですが、逃亡犯とその追跡者、いろいろな意味での競争相手(ライバル)と考えるのが普通だと思いますが、お答えは競争や、単に歩いていたり、走っている人や車に「追いつきつきつつあるもの」という感じで、違うと思います。ただこれは出題の狙いは、引けを取らないですから、それは正しいということになります。И преследующие не уступали преследуемым в силе.
Гонящий тоже не уступил гонимому в силах.
追う者、追われる者…?!
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гнать = заставлять идть, двигатьсяで、追うのではなく、カウボーイが牛などを追い立てるという感じです。動作を否定する場合は不完了体を用います。出題の日本語を見る限りそういうニュアンスはありません。完了体を過去の時制で否定で用いるためには、否定の強調ぐらいでしょう。和文露訳入門2-2-8参照。過去の時制で完了体が否定形で不可能の意味にならないのは、過去が動作の確定を扱うために、動詞自体に可能性の意味を担う余地がないからだと思われます。
И догоняющий не уступал в силе лидирующему.
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追いつきつつあるものは、追うものとは必ずしも言えないと思います。
Тот, кто гнавшийся за впереди идушим тоже не уступил в силе.
違うと思うのですが、これ以上思いつかず投稿します。
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何でもトライすることが前進の第一歩です。гнатьは無理やり行かせる、という意味であることと、「追い立てた人」となっていること、過去の時制において完了体の否定形を用いていることです。最初の二つは語彙の問題で、特に二番目はその派生ですから、気にする必要はありませんが、最後の体の用法の間違いは問題です。体についてはいろいろな考え方があり得ますが、私は動詞本来の動作だけを意味するのは不完了体だと考えています。完了体は動作プラスアルファということで、叙想的ニュアンス(主観的なもので、懸念、期待、動作の完了、新しい情報や事態が出てくるとか、否定文では不可能、否定の強調など)がつくものだと思います。だから素の動作を否定する、動作がないことを示すには過去でも現在でも不完了体を用いることになります。未来においては、未来自体が不確定要素のために、否定文においても、完了体が不可能を、その対比で不完了体では否定の意思というニュアンスが出やすいと考えられます。