2013年01月07日
●和文解釈入門 第598回
ドストエフスキーの作家の日記を読んでいたら、挿入語句で気になるものが出てきた。亡き兄の人柄を紹介するくだりで、И многим из освобождённых через два месяца подверглись бы ей (ссылке) непременно (говорю утвердительно), если б не были все освобождены по воле покойного государя ...(もし亡き帝の意思により全員が釈放されなかったら、2カ月後に釈放されたものの多くが必ずそれ(流刑)の憂き目に遭っていたろう〔と自信を持って言えるが〕)という文の、挿入語говорю утвердительноである。この作品には、他にもповторяю(繰り返しますが)、тут-то я вас и ловлю〔言葉尻をとらえて申し訳ありませんが(на слове, на словахが省略されていると思われる)〕という不完了体現在形の挿入語句が散見されるが、これらは遂行動詞だと思われる。ちなみにговоритьにも遂行動詞としての意味はある、例えば、Я тебе русским языком говорю.(分かるように言っているんだ)とか、Глупости говорю?(馬鹿な事を言っているというの?)などである。挿入語句には、話題の転換であれば完了体未来形を、話しの流れに沿ってであれば遂行動詞として不完了体現在形を使えるものがあるという事になる。露文和訳や露文解釈だけをする人にとっては、どうでもいいことかもしれないが、会話で和文露訳をせざるを得ない者にとっては時制をどうするか、体のどちらを使うのかは非常に重要であり、ご参考のために紹介した。
設問)「テレパシー能力者たちは離れたところで、考えていることを発信したり受信するすることができる」をロシア語にせよ。
Телепаты умеют
передать свою мысль
и получить мысль
чужих в отдаленных
местах.
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уметьは自転車に乗るとか泳ぐとか努力してできる技能についていうのが普通ですし、そのような技能はいつもできるものですから不完了体不定形と結び付くのが自然です。テレパシーは先天的なものでしょう。私の答えは、Телепаты могут передавать и принимать мысли на расстоянии.
能力のことを言っているので、不完了体不定形が来る。
мысльにも思考の過程という意味もありますが、この場合は思考の結果(産物ですから)、一つの考えなら単数ですし、設問のような不定のものは複数にします。Это мысль! = хорошая идеяということで、A good idea!ということです。
① Телепаты умеют передавать и принимать мысли на расстоянии.
② Телепаты передают и принимают мысли на расстоянии.
① は、テレパシー能力者はおそらく努力しないでもテレパシーが使える人が多いと思うので мочь を使おうかとも思ったのですが、中には途中から練習して能力開発した人もいるかもしれないし、何よりも一般の人が誰でも持っている能力ではないのでやはり уметь を使いました。
② は、文脈によっては可能の意味を内在する動詞としても使えるのではとそのままで使ってみました。よろしくお願いします。
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(1)はそういう風な理解と文脈であれば正解です。前にも書いたように体の用法は話し手がどのようにその文脈を理解するかによります。(2)は露露辞典を見る限り、可能の意味があるとは思えません。
Телепатист способен отправлять вдаль свои чувства и понимать на расстоянии то, что думают другие.
精一杯短くしたつもりです。ずるくてすみません。
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テレパシー能力者はтелепатです。発信機と受信機を何というか分かれば、正解にたどりつけます。もっというとラジオはрадиоприёмник(ラジオ受信機)と言いますから、ここから動詞は推測できるはずです。発信機はпередатчикと言います。
Телепаты могут передавать и принимать мысли на расстоянии.
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正解です。
Телепаты издали могут и передать и принять мысли.
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いつでも使える能力ですから不完了体不定形を使います。
やはりいつでも使える能力、ととるべきなのですね。超能力は何となく科学的でないイメージがあり(すみません!)、迷ったのですが特殊事例(状況次第では失敗する)のように思ってしまいましたが、設問にはそんな文意はありませんね。でも、もしかしたらその場合でも不完了体でしょうか?
関連質問ですが、和文露訳6-2-6-1の例文にある
Баня помогает справиться с простудой, с болями в мышцах и суставах.
この例文は状況次第では効かない(効能には個人差あり)という含意がある、と捉えてもよいでしょうか?
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生まれつきの能力で、後で習得したにせよ、いつでも使える能力ですから不完了体と申し上げているのです。例示的用法と分かりにくいと思いますが、完了体の例示的用法は普段は使わない(しない)が、いざとなればやるという風にご理解ください。
また6-2-6-1の説明がややこしくて誤解されているように思います。помогаетは繰り返しという意味での不完了体現在形です。その後に続く不定形動詞も、本来であれば、同じ繰り返しなので不完了体が来るべきなのですが、2度不完了体を使うのはくどいと感じているのかどうかは知りませんが、例示的な意味で完了体が来ているのです。個人的な意見ですが、これは文章を引き締めるために別の体を使う例だと思います。不定形では繰り返しでも述語動詞が不完了体であれば、繰り返しの機能は述語動詞 (この場合はпомогает)が担い、同じ繰り返しでも、目先を変えて完了体が使われます。目的の意味の不定法では完了体が使われるので、その類推からかもしれません。6-2-6-1のこの部分の説明は、増補改訂版が出れば、下記のように訂正します。
「規則的な反復性が、目的を示す不定形動詞でも、主節の中の述語動詞でも表現される場合は、不定形動詞、ないしは目的を示す従属節中の不定法形動詞には完了体が用いられるのが普通である。これは反復という動作を主節の述語動詞が担い、不定形で示される動作を、例示的な(何かあったら~するという)単一の動作と見ているからだと思われる。」
способенが使えるかどうかだが、例示的用法として完了体不定形を取ることが多いと和文露訳6-2-6-1に書いた。способный = такой, который может или умеет делать что-либоであり、可能の意味はある。しかし例示的な意味があるということから、普通は完了体不定形が来る。不完了体不定形が来るとすれば、делать(動作の名指し、要は不完了体の使用が圧倒的に多い動詞)とか、работать(対応の完了体がない)動詞である。この他に、что-либо способно = обладает свойством(性質がある)という意味があって、この意味で不完了体が来るのはгореть(一般的に対応の完了体とされるсгоретьは焼失するという意味で、この場合の焼けるという意味とは合致しない)、проводить электричество(通電するという意味で、この意味では完了体провестиは使えない)ぐらいで、後は完了体のвместитьぐらいである。私の結論は、この設問に対しては、способенは動名詞を使ってк + 与格、на + 対格という事も可能だが、そういう無理をせず、設問のような能力と言う意味では使わない方がよいということである。способенが完了体不定形で使えなければ、上記の例以外はмочь, можноで使うべきだし、Они способные в любой момент нанести удар в спину.(奴らは後ろからいつ何時ガツンとやりかねない)、Он готов на всё.(奴は何でもやりかねない)というような「~しかねない、やりかねない」という露訳に取っておけばよいと思う。
передавать と принимать が感覚を表すと勘違いしてしまい、可能の意味を内在するかもと思いました。それぞれ「伝える」と「受け取る」ですから。しかもテレパシーなので脳?で。自分でもあとで笑ってしまいました。調べていただいてありがとうございました。
丁寧にありがとうございます!よく読んで、噛み砕いて吸収したいと思います。