2012年12月28日

●和文解釈入門 第588回

日本語を勉強しているロシア人が露文和訳をしたとする。その和訳をロシア語を知らないか、日常会話はできるが、ロシア語は読めない日本人がチェックして直したとする。その日本文は正しいだろうか?そのロシア人はロシア語をハイレベルで勉強した日本人に見てもらわないと、正確な訳かどうかは判断できないし、直された日本文と比べて自分の作った元の文のどこがいけないのかが分からないから、次も同じような誤りをするかもしれない。同じことはロシア語を学ぶ日本人学習者にも言える。他に選択肢がないという場合も多いと思うが、ロシア人にチェックしてもらう時は、このことを念頭にいつも置いておいた方がよい。

 若いころ和文露訳をするときに、周りにロシア人が多かったので自分の訳文をよく見てもらった。そのとき、ロシア人が見るのは私の訳文のロシア語である。そのロシア人は日本語が全くできないか、できても日本語が読めないのが普通だからだ。そのロシア語が見てもらうロシア人の考えるロシア語とどう違うかであって、原文の和文との比較ではない。つまり私が日本語から曲がりなりにも訳した露文は、時制や体の用法は基本的に正しいという前提がある。ロシア人にロシア文を見てもらうときに、その前提が問題だという事は、きれいさっぱり無視されているようだ。日本語の時制やテンスはそう簡単なものではないことは、このコーナーの設問の短文でお分かりだろう。日本人だから日本語の時制やアスペクトは分かるだろうが、それをロシア語の時制や体に置き換えるのは、日本語とロシア語の時制が微妙に違っている以上、非常に無理があると思う。そういう意味もあって、ロシア人に頼らずとも、和文露訳のチェックができるような参考書を、体の使い分けを中心に書いて見たかったわけで、その願いが熱心な常連投稿者のおかげもあって叶ったことは非常にうれしく思っている。この参考書『和文露訳入門』はあくまでも私自身用であるが、幾分かでも私の考える体の使い分けに実践で使えると考える人にはそれなりに役に立つと思うし、学習者自身がさらによりものを自分自身のために編み出すことは可能だと思う。私はロシア人を無視しているのではない。私が心の中で師事し、準拠しているのはラスードヴァ先生、ボンダルコ先生、ロゼンターリ先生、ムラヴィヨーヴァ先生、ヴィノグラードヴァ先生、アプレシャン先生、フセヴォロードヴァ先生、パードゥチェヴァ先生、磯谷孝先生、城田俊先生、宇多文雄先生、中沢敦夫先生、原求作先生などのロシア語の権威であって、一般のロシア人ではないといいうことを言いたいのだ。

設問「光と音ではどちらが速いですか?」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年12月28日 07:35
コメント

Что быстрее
передается, свет или
звук ?
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正解です。私の答えは、Что быстрее: свет или звук?
「どちら、どの」という意味でкоторый はкакой из несколькихということであり、疑問代名詞なので、名詞を伴うのが一般的である。修飾される名詞の省略は可能だが、いきなり名詞なしでは使えない。例えば、А в которые двери нужно выходить?(どのドアから出るべきですか?)となる。ちなみにкоторыйをкто именно, кто из несколькоихという意味で使うのは廃語的用法である。чтоを使う用法では、他に、A или В, в зависимости от того, что меньше.(AかBか、どちらか小さい方)とか、ドストエフスキーの『Дневник писателя作家の日記』の中にもЧто лучше - мы или народ?(我々と民衆ではどちらが立派なのか?)とあり、人にも使えることが分かる。

Posted by ブーチャン at 2012年12月28日 10:21

Что быстрее, свет или звук?

今年もあと数日となりました。こちらのサイトを土日、祝日もなく更新を続けていただきありがとうございました(す)。こういう手軽に(熱心に更新していただくおかげなのですが)、正確に、真面目にロシア語を教えていただける場所は日本広しといえどもこのサイト以外皆無なので、本当に感謝しています。それにしても、『和文解釈入門』が一字一句残らず紙の本になることは無理なのでしょうか。ロシア語の後進にとってはもちろんですが、ロシア語の専門家にとっても貴重な財産となるものと確信します。在野でこういう人がいることは、まだまだ日本も捨てたものじゃないなと日本の底力を感じます。こういう実力のある人をもっと支えられる政府であって欲しいと切に思います。もちろん私自身も必要があれば自分のできる協力は惜しまないつもりですが、個人の力は弱いですからね。
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正解です。『和文露訳入門』については過賞だとおもいますが、ありがとうございます。毎日コメントを書くのは生きがいというか、自分の勉強になることなので、常連投稿者の皆様にはこちらから感謝する次第です。小説は別でしょうが、定期的にチェックする参考書には紙の方がよいのかもしれません。ただ、個人的には、7月末に出した『和文露訳入門』の誤植、力点のミス、力点をアポストロフィーから下線への変更、それと5カ月経ったので、その間に得た訂正や知見をその都度原稿に追加しているのですが、それがもう324ページと50ページ以上増えています。複合動詞、複合副詞句なども大幅に増えましたし、用語の名称の変更、いくつかの新項目もあります。例文や説明をより分かりやすくしたりもしていますが、常連投稿者のおかげもあって、それはほぼ毎日のことなので、増補改訂版を出すタイミングをどうすべきか、また売れない本を改訂する意味があるのかというのが悩みでもあります。何かより本質的な訂正や知見などがあれば、出すべきでしょうが、さしあたってはどうなるか分かりません。まあ新しい知見というのは7月末以降から現在までの本コーナーの本文に概ね書いておきましたので、丹念に読めば分かるとは思います。出し惜しみはしない主義ですから。温かいお言葉、本当にありがとうございます。

Posted by メイ at 2012年12月28日 11:56

Что идёт быстрее : луч и звук?
または
Что быстрее : луч и звук?
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惜しいですね。иだと両方ともになってしまうので、илиを使うべきです。しかし、出題のポイントはчтоなので、それはクリアしています。日本語の「~と~とでは」は、ロシア語では、「~か、はたまた~か」という発想になるのです。この点では英語に近いと思います。

Posted by 角丸 at 2012年12月28日 22:33

Что быстрее идёт(летит, бежит), свет или звук?  
定動詞だと思いました。движется?だったら気にしなくてよい?
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正解です。もっというと動詞を取って、形容詞の比較級だけの方が自然だと思います。もしどうしてもというなら、бежит以外の運動の動詞は定動詞を、後はпередаватьсяぐらいでしょうか。двигатьсяは走って、歩いて移動する、交通機関が移動する、多くの人や動物の移動というのが本義なので、この設問にはふさわしくないような気がします。こういうのは露露辞典を見れば分かります。

Posted by ゴ at 2012年12月29日 00:03
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