2012年12月24日
●和文解釈入門 第584回
ある語学校のロシア語通訳コースの案内を見ていたら、ロシア語の文法は難しいので、通訳を目指すのに文法にこだわる必要はない。当学校には優秀なロシア人をそろえ云々とある。どの外国語でも文法は難しいと言えば、難しい。文法を覚えなくていいのは、母国語を覚えるときの幼児だけである。要するに、文法を最小限にするということは、丸暗記を勧めていることになる。特に体の用法は難しそうに見えるが、二十歳前後からそれ以上の年配の学習者に、丸暗記だけでは続かない。続く人もいるがそれは例外で、そういう人は、そういう語学校に入らなくても、一人でこつこつ例文を収集し、それを暗記してものになるのである。文法や、特に体の用法が難しいというなら、それは教える方にも問題があるのである。文法や体の用法をよく理解していないから、教えられないという事になる。教わる方も、語学は暗記だと文法を軽視するという心構えだから、勉強に身が入らない。だから分からないという悪循環である。二十歳を超えた人に理屈が通らない理由がない。そういう文法は不要だという学習者の思い込みをなくすような、もっと実生活に即した、ロシア人との触れ合いに役立つ例文を教える側が用意する必要があるし、何よりも教える側が文法をよく理解し、それを教えるテクニックを身につけるよう日々研鑽するしかないと思う。
体の用法は基本である。これが分からないと会話での和文露訳は、暗記した文例だけの、応用の利かないものになる。それを語彙だけ暗記すればよいと、語彙集だけ暗記しようとする人は、骨格のない体に粘土を貼り付けるようなもので、全く意味はない。体の用法をマスターしてようやく次のステップ、語彙の習得、発声や聞き取りに進むべきなのだが、その辺を理解していないから、日本語でいえば、いつまでたっても外国人の話すテニヲハがよく分からない、時制もおかしいロシア語のままなのだ。
上級ロシア語は一部の翻訳者や通訳、ガイドの独占ではない。そういう自称ロシア語のトップにいると思っている人でも、ロシア語の会話などで体が使いこなせないのであれば、ロシア語から日本語、日本語からロシア語への理解が不十分であろうと思うし、それにかかわらず、日本語を外国として見るというアプローチも必要であろう。体の用法を究めることで、普通の学習者にとっても、プロの独占と思われていたロシア語の文や会話の深い味わい方を知っていただけたらと願っている。
設問)「彼女はもう彼らとは二度と会えないという事を知っていた」をロシア語にせよ。
Она знала, что она
больше не может
увидеться с ними.
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従属節の時制を時制を未来にして、не сможетでないとおかしいように思います。それとувидетьсяでもよいのですが、それだとアポイントを取って待ち合わせるという感じなり、顔を見るだけというような、偶然会うという意味がないということになります。私の答えは、Она знала, что больше их никогда не увидит.
相対時制の問題の復習。
Она знала, что больше не сможет увидеть их.
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正解です。
Она знала, что никогда больше не увидит их.
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正解です。
Она знала, что она больше не сможет встретиться с ними.
Она знала, что она больше не будет видеть их.
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二つとも微妙に違います。初めのは、встретитьсяはアポイントを取って(互いに示し合わせて)会うという意味ですから、少し意味が違うと思います。設問は見かける、見かける、偶然会うという会うも含めています。二つ目は決意表明で、彼らとは会わないと言っていることになります。
Она знала, что они больше не смогут видеть друг друга.
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体の用法も構文もいいのですが、お答えを和訳すると、「彼らはお互いにもう会うことができないということを彼女は知っていた」となり、設問とは違うと思います。彼らと彼女の関係が間接的なものに感じられます。
大変失礼いたしました。「彼らとは」を「彼らは」に読み違えていました。