2012年12月21日

●和文解釈入門 第581回

40年以上もロシア語を勉強しているので、短文であれば、1分か2分いただければ、ほぼ正確に体の使い分けを示せるという自信はあるが、実際の通訳では、体の使い分けに使える時間というのは、1秒にも満たないであろう。しかも短文だけの通訳というのはほとんどありえない。和文露訳入門に完了体と不完了体を時制や法に分けて書いた参考書などを読めば、どんな動詞も完了体と不完了体を使うチャンスが同じ50%ずつあると勘違いする人もいるだろう。そんなことはないのだ。参考書なので、例外も含めて、できるだけ広く用例を書いているだけである。10万語収録の露和辞典にある単語(動詞も含めて)を40年間で全て出会ったかというと、そういうことはない。1回だけ読んだというのを入れても8割ぐらいだし、通訳や翻訳で使う単語というのは、1万もないと思う。しかもその中でも使う頻度にかなり差が出る。

 通訳するときには時間がないので、確率ということに頼らざるを得ない。この2、3回命令法では完了体不定形を使う事が多いと書いたのはそのためである。不定法を使うなら、まず完了体ということにして、繰り返しや否定なら、例外だから、不完了体に代える訓練をする。他にも切迫とか動作の名指しとかあるが、それを考えている余裕はない。ただ動作の名指しというのは、不完了体が出やすい動詞идти, ехать, делатьなので、これはこれで優先的に使うようにする。時制においても過去と分かった瞬間、完了体を考える。アオリスト的用法が多いからだ。プロの通訳で、体の使い分けを説明できない人でも(する必要もないが)、その通訳が正しいのは、この訓練が自動的にほぼ完ぺきに出来ているからである。これは勘というよりは、長期にわたる体に覚え込ませるような非常に大変な、忍耐の要る学習法であり、誰でもできるわけではない。そこで、何度も言うが、和文露訳入門を手元において、そのたびごとに気になった用法を理解し、例文を暗記する方が大人の学習法だと思うわけである。別に和文露訳入門を買えと勧めているわけではない。自分で文法を究める方法はいくらでもあるし、いい参考書も探せばある。私のホームページにも参考書紹介のコーナーがあるから、それを一部参考にされてもよい。

 ガイドや通訳の仕事が減っている中、新規参入は難しくなっているのが現状である。昔なら先輩の通訳と一緒にという仕事も多かったが、今はいきなり一人前の仕事をこなすことを求められる。しかし、仕事の少ないときだから勉強できるわけで、私の勧める勉強法は、テレビやネット、本などで、気になった短文の述語部分だけを、特に動詞であれば、どのような体になるのかを中心に訳してみる練習をしてみることである。これなら前後の文脈がはっきりしているわけで、このコーナーの短文の露訳よりよっぽど簡単であろう。拙著の和文露訳入門を参考にしていただいてもよい。こういう練習の積み重ねによって、瞬間的に動詞が浮かぶようになってくる。通訳を頼まれた時点でどの分野かはあらかじめ分かる。それから語彙をチェックしても遅くはないが、基本動詞はそう簡単には行かないので、こういう勉強法を勧める次第である。ガイドにせよ、都内か京都観光かは事前に分かるわけで、いきなり日本全国の1か所の観光ガイドをお願いしますという事はまずないだろう。動詞の体の使い分けがある程度分かれば、後は語彙だけ覚えればよいという意味もお分かりだろう。プロの通訳やガイドになりたければ、使う頻度の高い、そして急ごしらえには理解できない動詞の体の用法をまずマスターすべきなのだ。動詞に限らず、基本語彙については、露露辞典を引く癖をつけることをお勧めする。オージェゴフの露露は評判が高いし、手頃なのだろうが、私は使ったことがない。これは用例が極端に少ないためである。しかし、そういう欠点があっても、他に選択肢がなければ、買わざるを得ないと思う。私は例文重視なので、アカデミー露露の最新版を使っているが、第19巻прессまでしか出ていないので、それ以外の単語はアカデミーの古い4巻本を使っている。4巻本の例文は岩波や研究社でよく見かけるので、ザルービンの露和の方が新鮮な例文に出会える可能性が多い。

設問)「3ヶ月に1回以上点検しなければなりません」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年12月21日 07:38
コメント

Необходимо проводить проверку чаще одного раза в три месяца.
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発想は正にロシア的ですが、こう言いませんし、言ったとしても、以上ではなく、超です。つまり未満と以下、以上と超の使い分けでできていないようです。これは技術通訳では必要なことで、法律や数学では、5以上では、5を含みますし、超は含みません。私の答えは、Необходимо производить проверку не реже (одного) раза в три месяца.
頻度や回数の場合、「以上」は не режеが一般的で、не менее は使用例ははるかに少なく、не меньшеはそれより少ない。
ちなみに日常的によく使われるより「少ない、より多いменьше, больше」は文体的にニュートラルで、менее, болееは書き言葉、мене, болеは廃語ないしは俗語である。露英物理学会話集Русско-английский разговорник для физиков, Л. А. Смирнова, Советская энциклопедия, 1968という会話集があって、技術関係の通訳のときには重宝しているが、その中に、「以上」≧をне меньше, больше или равноと訳している。「超」は>большеであり、以下はне больше, меньше или равно、未満はменьшеである。技術関係の通訳の時は、一応常識として覚えておいた方がよい。

Posted by コーリャ at 2012年12月21日 09:25

Необходимо проверять чаще, чем
один раз в три месяца.
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発想はロシア的ですが、こうは言いません。もうひとひねりすべきでした。

Posted by ブーチャン at 2012年12月21日 10:46

Надо проверять более один раз в трёх месяцев.
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肝心の体の用法は正しいので、瑣末な点についてコメントします。私が言う瑣末というのは、特に本質的ではないので5分もかからずに覚えられ、今後は間違うことはないという意味です。一つ目は、頻度や回数で以上はне режеを使うほうがよいということです。以上や以下、未満についても覚えるようにした方がよいと思います。二つ目は、比較級の場合、比較の対象があるときにはболееを例にとれば、более, чем + 名詞なら主格(副詞、文などはそのまま)、またはболее(形容詞比較級短語尾) + 生格となります。文法書をお持ちだと思いますので、城田先生の現代ロシア語文法(東洋書店)の旧版であれば、290ページに詳しい説明があります。文法書を持たずに、ロシア語のプロを目指すというなら、それは無謀です。宇多先生の「ロシア語文法便覧」もよい本ですから、どちらか、好みによって、城田先生のには練習問題があるので、そういうのが好きな人向けです。本質的なものに目を向ければ、こういうものは手元に文法書を置いておいて、一応一読し、気になった時点で、その項目を読み返すようにするのがよいと思います。
 最後は「~につき~回」というのは、 раз в + 対格(期間を示す語句)を使います。три раза в неделю(週に3回)となり、この句は時間を示す副詞句で、три разаはこのまま変化せず、対格のまま副詞句として用います。それと、неделяはна будущей неделе(来週)のように、наと結び付くのが普通ですが、「~につき」というときはвが来ますので、ご注意ください。

Posted by ヨタロウ at 2012年12月21日 10:49

Нужно проверять больше одного раза в три месяца.

定期的な反復 →するのが当然 →切迫感 に当てはまると考えて不完了体にしました。
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日常的にはこれでいいのですが、技術通訳では「以上」、「以下」、「未満」の使い分けができていないように思います。

Posted by メイ at 2012年12月21日 23:33

Это надо проверить не реже чем, через каждые три месяца.
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этоは不要です。не режеというのは、プロの通訳でも知らない人がいるくらいですから、これが使えるのはすごいと思います。しかし、肝心の体の用法は、このように回数が、しかも定期的となれば、不完了体の繰り返しに他なりません。考えすぎたのでしょうか。それとカンマの位置はчемの前です。

Posted by ゴ at 2012年12月22日 00:38

Проверку следует проводить больше одного раза в три месяца.
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日常的にはこれでよいのですが、以上、以下、未満の使い分けを覚えてください。5分も経たずに覚えられるでしょう。瑣末な点ですが、技術通訳をするときには、とくに技術翻訳などでは必要なミニ知識です。

Posted by hatomame at 2012年12月22日 03:52

ありがとうございました。技術通訳の基本ですね。まさに弱点でした。技術通訳と聞いただけで気が遠くなります。

Posted by メイ at 2012年12月22日 23:22
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