2012年11月30日
●和文解釈入門 第560回
小説などで、「これはどういうことだ?」という文があって、その後に、「ははーん、分かったぞ(なるほどね)」という独り言が続くときは、二つ目の文にはロシア語で、Понимаю!となるが、随分不思議だと思っていた。Понял!というなら、結果の現存だから、その場で理解したという事だからまだ分かる。不完了体のпониматьには「分かっている」という状態の動詞の意味があるが、前から分かっているなら、「これはどういうことだ?」と自問自答すること自体が非論理的である。そこで、これは相転移動詞(誤伝の動詞改め)的な用法だと思う。Понял!と完了体過去形の結果の現存の用法を使うと、その場で理由を知ったということになり、「俺としたことが、そんなことはとっくに分かっていたはずだ」というニュアンスが出ない。それで、「これはどういうことだ?」と考えてから、理解したが、その動作は終わっている、しかしたった今終了したのではないというニュアンスを伝えたいということではなかろうか?その証拠に、Вот это я понимаю!という慣用句は、誉めたり、感嘆したりする時に用い、「これこれ、これだよ!」という感じで、例えば、生まれて初めて海を見たときに、それが想像をはるかに超えていたというときなどに使うが、状態の意味ではないことは明らかだ。一つの体のペアの動詞にも、文脈によりいろいろな用法があるわけで、児童文学やアネクドートなどは文脈も分かりやすいので、そういう辞書に載っていないような用法を知る上で、また日常生活で使う和文露訳の語彙を知る上で非常に役に立つと思う。
設問)「私の犬は虫も殺さないの」をロシア語にせよ。
(1) Моя собака
сдержанна.
(2) Моя собака избегает даже
насекомых ( с невинным видом).
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(1)は控えめだということですが、これでは曖昧すぎます。(2)は避けるということですが、虫が怖くて避けるということも考えられますから、違うでしょう。私の答えは、Моя собака мухи не обидит.
例示的用法(和文露訳入門4-2-3参照)である。「虫も殺さぬ」というのは、「気が優しい」「温和な」ということで、普通は人に対して使い、慣用句では、комара (мухи) не обидит (зашибет) ктоとか、
Он же муравья не задавит.とか
воды не замутитというような表現がある。
Моя собака и мухи не обидит.
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正解です。
Моя собака даже черви убить не может.
文字通りにしました。
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お答えだと、「虫(昆虫ではなく、ミミズとか昆虫の幼虫のような外骨格のないもの)を殺すことができない」という文になって、違うでしょう。それとчервиは複数主格で使っているのでしょうね。それだと活動体ですからчервейと複数対格は生格と同形のはずですし、否定生格にしても生格がでてくるはずです。