2012年11月28日
●和文解釈入門 第558回
児童文学を読んでいるとよいのは、若者向けの週刊誌などと違って、新語、俗語、隠語や流行り言葉を使っておらず、編集者が吟味した正しいロシア語で表現されているということで、我々のようなロシア語の学習者も安心して読める。また会話表現に使えるものが多いと思われ、私のようなロシア語の会話用語彙収集家にとってはありがたい存在である。それでも、最近次のような表現を目にした。
Вот будет рассказов в Айове!(アイオワで話をするには十分なくらいだ)
なぜрассказовと複数生格になるのだろう?ミスタイプか?児童文学でもミスタイプはあるが、その数は一般の読みものよりも少ないような気がする。それはページの量が少ないものが多いのと、編集者も未来の世代のためだから、より一層校正に力を入れ、なおざりにはしないという事からかもしれない。考えた末、このбудетは、「もう十分だ、そのくらいにしとけ」というようなдостаточно, довольноの意味で用いられているのではないかという事である。それなら複数生格が来てもおかしくない。それが今のところの私の解釈である。
設問)「この点については、彼にはやりがいのある任務のように思われた」をロシア語にせよ。
Касательно этого
дела, как будто бы
это ему показалось
достойной делать
задачей.
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お答えについて4つ問題があります。一つはбудто とпоказалосьと同じような意味の語が二つあることで、畳語のようで、一つ削った方がよいと思います。二つ目はпоказалосьと完了体が来ていることです。これだと、「~という気がした」という意味になります。もう一つは、достойныйは不定形も取りますが、意味が「もし~するのなら、それには十分価値がある」という例示的用法のため、完了体が来ます。完了体が来るのは、設問が具体的な動作を示しているからという説明も可能です。делатьはидти, ехатьと同様、不定法でも不完了体が多用されるので、これでもよいとも思えます。最後ですが、быは仮定法で、現在の事柄を婉曲的に示すものですが、設問の時制は過去です。私の答えは、Ему в этом отношении представлялась благодарная задача.
やりがいのある仕事はстоящее дело, стоящая работаとも言える。
В этом ему показалось, что эту работу стоит выполнить.
どっちも完了体にしました。
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「~に関しては」はв отношении, по поводу , относительно,что касается + 生格を使い、テーマ的な働き(和文露訳入門9-10参照)を強調します。показалосьについては、和文露訳入門7-3にあるように、完了体と不完了体では意味的に受ける感じが随分違い、「~のような気がした」というものです。стоитьは例示的用法でよく使い、研究するなどの期間を考慮するのではない限り、お答えのように完了体が来るのが多いと思います。
Ему казалось, что в этом отношении стоит выполнять эту должность.
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должностьは部長の職などの職、肩がき、地位ということですから、広く考えれば正解ですが、任務という意味ではないと思います。