2012年11月13日

●和文解釈入門 第543回

(241) 「昭和東京ものがたり」、山本七平、読売新聞社、1990年
 山本七平(1921~91)の自伝的色彩の濃いエッセーで、大正末から昭和初期が描かれている。この時代は軍縮時代であり、大正自由主義教育の時代であったと著者は述べている。山本の父は内村鑑三の弟子であり、日露戦争にも応召したとはいえ、中産階級であり、子供からの質問についてはできるだけ答えよう、ないしは答えるだけの素養のある人であり、その点山本は恵まれていたと思われる。いくつか本書で教えられたことを列挙する。体罰の必要がないくらい先生というのは偉い存在であったとか、屏風は隙間風対策で子供の枕元に置くような小さなものやふすま代の大きなものまであったという。さらに昭和天皇の御大典のときゴム袋がトイレ用として飛ぶように売れたとか、ふのりが女性のシャンプー代わりだった。男の立ち小便の習慣は戦後しばらく続き、それが外国人から少なからず批判を浴びたという。それで今ではいたるところ日本にはトイレがあり、街路もロシア人からちり一つ落ちていないと誉められるのだから面白い。本書に当時の戯れ歌があるので紹介する。必ずしもお上に庶民がへいへいしていたわけではないことが分かる。

ダンダンがダンダンで、ダンと撃たれて、ダダンと転んで(団啄麿暗殺事件)
報告を受けた天皇は驚きのあまりよろめいて言った。朕は重心(重臣)を失った。(二・二六事件)
高橋邸に反乱軍が押し寄せたとき、婦人は驚いて着物を持って言った。これ着よ、これ着よ。(二・二六事件の高橋是清暗殺)

設問)「決まった、エメラルドの町を征服しに出かけよう」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年11月13日 06:46
コメント

Да ну ! Я поеду завоюю
изумрудный городок.
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да ну?には「まさか」という意味がありますが、決まったという意味はないように思います。相手国を攻めに戦争に行くという意味では、Иду на тебя!とは言いますが、その意味でпоедуとは言わないでしょう。これは馬か、車に乗ってゆくという意味です。Пойдём, завоюем!なら可能性があります。私の答えは、Решено - отправляюсь завоёвывть Изумрудный город.
アニメにもなったА. Волковのオズの魔法使いの翻案Волшебник Изумрудного городаシリーズの第2作Урфин Джюс и его деревянные солдатыからの出題。ピノキオはБуратиноであるように、ロシアとでは童話や子供向けの読み物の主人公の名が日本とは違っていることがある。このようなロシア人なら誰でも知っているような大衆文化というのも常識として知っておくとよい。最初のРешеноは被動形動詞過去短語尾の結果の現存で、отправляюсьは不完了体現在形の予定の用法、「出発する」というのは着手の意味なので不完了体の不定形が来る。

Posted by ブーチャン at 2012年11月13日 08:32

Я решился! Мы отправимся и завоюем город изумруда.
完了体未来を並べることにしました。文学的には…お許しを。
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少しぎこちない感じはしますが正解とします。решитьсяは決意するという意味ですし、順次的用法を使うことも理論的です。

Posted by ゴ at 2012年11月13日 22:15

(お題)
決まった、エメラルドの町を征服しに出かけよう
(コーシカ訳)
Хорошо. Давай отправляться в завоевание город изумруда.

開始ないし着手ということで不完了体が適するかと考えました。
句動詞(で合ってますでしょうか、動詞→動詞+名詞に変換した場合のことです)
の格支配は、動詞単独の時と同じ、と理解していますが
生格を取るべきでしょうか。またお教えください。

さて、正解は
なるほど、「決まった」は被動形動詞過去短語尾を使って結果の現存にするんですね。
確かにショスタコーヴィチの『反形式主義的ラヨーク』の最初のほうでも
決議を採るシーンがあり、Принятоと言っていたのを思い出しました。


「日本の心」カテゴリの足しになりそうなおはなしをひとつ。
NHKラジオ第2放送にて毎週木金の午前11:30~11:45にアンコールまいにちドイツ語の応用編が放送中です。
昨年に引き続いて「ドイツ語がみてきたNIPPON」と題して、日独修好通商条約以降の日独交渉をおもにドイツ側から見てゆく番組です。
今月はドイツを訪問した幕府の使節団について報道した新聞記事や君が代の成立背景、大日本帝国憲法成立にあたっての諮問に対する回答などなど、興味深い内容が目白押しです。
ドイツ語部分には翻訳が入るため、言葉が分からなくとも十分に楽しめるつくりになっています。戦前の日本についても少し触れており、さとうさんにとっても興味深いのではないかと思います。
テキストも売ってます。ぜひぜひ。

http://www.nhk.or.jp/gogaku/german/encore/
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ご配慮感謝します。ドイツ関係では「日本のこころ」第23回の「ハイネ世界周航日本の旅」、中井晶夫訳、雄松堂書店、1983年、「グレタ号日本通商記」、リュードルフ、中井赳訳、小西四朗校訂、雄松堂書店、1984年、 「オイレンブルク日本遠征記」(2巻)、中井晶夫訳、雄松堂出版、1969年、 「ドイツ公使の見た明治維新」、M・V・ブラント、原潔・永岡敦訳、新人物往来社、1987年、 「ベルツの日記」(2巻)、トク・ベルツ編、菅沼竜太郎訳、岩波文庫、1979年、(216) 「ドイツ歴史学者の天皇国家観」、ルートヴィッヒ・リース、原潔・永岡敦訳、新人物往来社、1988年などを読みました。

Posted by コーシカ at 2012年11月14日 20:05
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