2012年10月31日
●和文解釈入門 第530回
(235) *「日本談義集」、周作人、木山秀雄訳、東洋文庫、平凡社、2002年
本書は絶版となった「日本文化を語る」(周作人、木山秀雄訳、筑摩書房、1973年)の復刊。周作人(1885~1967年)は中国人で、中国近代精神の形成に力のあった人であり、一時帰国した魯迅と共に1906年から日本に留学した。東京に6年間住み、東京は第二の故郷だと述べている。本書は1919年から1940年までに発表されたものを集めたもの。中国人や朝鮮人は皆日本文化のことを下に見ているのかと思っていたら、周作人は例外のようである。周作人は、「西洋人の東洋観はとかくロマンチックであって、彼らの貶下も讃嘆もあまりあてにならない。いわば何かの熱帯植物を見て失望したり満足したりするようなもので、一向に確かな理解があっての話ではないのである。有名な小泉八雲ですらそのきらいなしとしない」と言い、西洋人(小泉八雲、モラエスなど)の親日ぶりは没理性に近いと酷評し、彼らが日本人のよさが敬神尊祖や忠君愛国にあるというのはおかしいと述べている。周作人は、日本の国民性の長所は、忠孝ではなく、人情細やかなるところにあると言い、仁恕(武士の情け)は忠孝などよりはるかに気高いものだと述べている。現代の日本のように、孝行とか忠孝という言葉は戦後忘れられてしまった時代には何とも思わないが、これは戦前発表されたものである。また中国と比べ、日本のよいもののうち、万葉集は詩経であり、古事記は史記と誉め、源氏物語は紅楼夢に匹敵するが、紅楼夢は清時代のもので、はるかに後代にできたのであるとし、浮世絵、俳諧、滑稽本は中国にないとしている。東洋にユーモアがないというが、滑稽本は文化文政のとき(1804~29)の間に外国の影響を受けずに成立したことも指摘している。日本は(中国人にとって)半分は異境だが、半分は古代なのだとあり、正座も唐代までそうだったし、刺身も昔中国にもあったし、何よりも中国の古書が日本で手に入ることに感激していたようである。中国の庶民の根底には儒教ではなく、道教であると述べたのは、日本でも神仏習合とはいっても、実態は現世ご利益の願掛けであり、ロシアでも戦前は聖母信仰や聖ニコラ信仰などこれも功利思考であるのと変わらないのは世界共通という事か。本書の訳はきびきびとした日本語であり、このような日本語の文を書けるよう、精進を心がけたいものだと考えた次第である。
設問)「行かなきゃ。すごく急いでるの」をロシア語にせよ。
Я пошла. Я очень
тороплюсь.
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実質的にはそういうことなんですが、厳密に言えば、「行かなくっちゃ」というのは、「行かねばならぬ、行く必要がある」ということで、「出かけます、行きます」というのとは違います。なぜこういう重箱の隅をつつくようなことを言うかというと、出題の意図と係わってくるからです。私の答えは、Надо ехать, я очень спешу.
「とても急ぐので失礼します」としても実質的な意味は同じだが、設問の趣旨は、「すごく急ぐので」とあるので、切迫感を示す不定法の基本的用法が使えるかどうかにある。これが不正解だと体の基本的用法が分かっていないことになる。その場合は和文露訳入門6-1-1参照。それと、идти/ехатьの方がпойти/поехатьよりも不定法では多く使われる(和文露訳入門6-1-6参照)。これは具体的な1回の動作においてもそうである。пойти/поехатьが1回の動作の意味で不定法で使われるとしたら、хотетьの後ぐらいかもしれない。
(お題)
行かなきゃ。すごく急いでるの。
(コーシカ訳)
Я должна уходить. Я очень спешу.
яが重なるのが気になりますが…
最初のуходитьは切迫を表す不完了体で、
次のспешитьは現在の状態を指す不完了体と考えました。
後者は「行かなきゃ」に続くので、具体的な動作を指す完了体ではおかしいとも感じます。
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正解です。二つ目のяを取ればよいと思いますし、надоやнужноを使えば、そういう問題は解決します。ロシア語は言葉の響きを大切にする言語だと思いますので、そういう点に気が向くようであれば上級者の証です。
Я пошла. Я очень спешу.
Мне пора идти.
Мне надо идти.
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Я пошла.以外は正解です。
Мне пора идти, очень тороплюсь.
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正解です。