2012年10月30日

●和文解釈入門 第529回

(234) 「フレップ・トリップ」(北原白秋、岩波文庫、2007年)
 北原白秋(1885~1942)が1925年に鉄道省主宰の樺太観光団に参加した顛末を書いたものである。特に最初の方は文体が非常に明るく感じられる。著者が「私の話法は現在格で進める。この方が楽だからである」と書いているのは、意識的に歴史的現在で書いていることを意味する。歴史的現在で書かれている小説、紀行文は数に限りがないが、文体を意識して書かれているのは類がないようである。豊原のロシア人街についても触れているのは興味深い。表題のフレップ・トリップは解説の山本太郎によればアカフサスグリкрасная смородинаとクロフサスグリчёрная сиородина、なしいはナナカマドрябинаであろうという。白秋はこれらでブドウ酒をつくるというが、山本はナナカマドでは作れないと書いている。それはその通りだが、ウラヂーミルВладимир近くのナナカマド (невежинская рябина) は糖度が高く、これで酒が作れるというのはロシアでは有名な話である。フサスグリの酒もあるので、北海道のハスカップのようなのかもしれない。

設問)「騒ぎはほんのささいなことからということは、よくあることだ」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年10月30日 07:36
コメント

(1) Часто бывает такая ситуация, что ссоры происходят от мелочей.

(2) Шум часто возникает по причине пустяков.
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(1)ссорыは口げんかとか口論、いがみ合いということですから、騒ぎの一部でしょうが、шумのほうがよいと思います。(2)のпо причинеについては、何度か書いたと思いますが、お役所言葉なので、会話で使うには場違いのように思います。私の答えは、Скандал, как это водится, происходят по самым малейшим поводам.
как это водится = бывает, случается, принято, является обыкновением

Posted by ブーチャン at 2012年10月30日 09:15

Бывает, что скандалы произойдут из-за пустяков.
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быватьのような多回体と完了体の例示的用法の組み合わせはないと思います。быватьの場合は、複数回あるということです。文法用語の規則的繰り返しと不規則的繰り返し(例示的用法)というのは、文字通りではなく、規則的繰り返しには、もちろん習慣(毎朝、毎年というような)も入りますが、何度も(何回も)起こっているという場合に使います。不規則的繰り返し(例示的用法)というのは、もしあったとしたらという、ゼロかもしれないしあるかもしれないというニュアンスです。

Posted by Ml at 2012年10月31日 05:35

Очеть часто бывает такая ситуация, когда инцидент возникает из-за маленькой детали.
時間切れアウトならすみません!
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気にすることはありません。過去の設問でも、私の回答とは違うとか、私の回答を見ないで自分の回答をトライされて結構です。それはそれで、コメントします。お答えの発想はいいのですが、маленькая детальは「ちょっとしたコツ」という意味では使えますが、くだらないことという意味にはならないと思います。деталь細部、詳細、部品という意味ですから、これはくだらないものの対極にある言葉だと思います。

Posted by ゴ at 2012年10月31日 07:44

雑談で恐縮です。
Смородинаに関連しロシア語の
言葉遊びを思い出しました。

На рынке покупатель
спрашивает
продавца: Почему эта
черная смородина
красная ?

Продавец отвечает:
Потому что она
зеленая.
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非常に面白い言葉遊びです。和訳してみると、
〔市場で買い物客が売り子に、「どうしてこのクロフサスグリは赤いんだ?」と尋ねました。
(すると)売り子は、「(まだ)青いからだよ」と答えましたとさ〕
初級者の方のためにオチを言うと、この小話は実際にあった会話かもしれませんが、зелёныйに、「未熟な」という意味もあるので、それをかけたものです。зелёный юнецは青二才という意味です。また、зелёныйには「緑色の」の他に、信号の色や、関係のある語としてзелень(青物)зеленщик(青果商、八百屋)から分かるように、日本語の青という意味も含まれています。一方、日本語の青いはロシア語では完全に対応する語はなく、文脈に応じてголубой (空色の)か、синий(紺色の)と訳します。シロスグリбелая смородинаというのもロシアにはあります。
こういう御趣味がおありになったとは!こういうのを初級で教えたら面白いと思います。справшивает, отвечаетは歴史的現在ですから、そこで教える方はつまづくのかもしれません。そこをクリアすればпочемуやпотому чтоも入っているし、学習者向けの優れた例文だと思います。歴史的現在も、この例文の場合は言いかえれば、спросил, ответилとなって、臨場感は失われますが、アオリスト的用法となります。

Posted by ブーチャン at 2012年10月31日 08:25
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