2012年10月07日
●和文解釈入門 第506回
日本で出ている文法書は、アカデミー版のロシア語文法(1980年、2巻本)を基にしていると思われる。文法は一つなのだが、今までの参考書は、文法書も含めて、ほぼ露文解釈用という観点に立っていて、和文露訳のために文法を教えるという観点が抜けていたのではないだろうか。だから、初級を終えて、ロシア語会話のために中級より上に自学自習しようと思っても、文法書も含めて、そのような参考書もないということになる。
通訳や翻訳者出身で大学で教えている先生もいるやに聞くが、文法中心で和文露訳を教えているという方は知らない。私見では、それを教えるためには、自分で万の単位で例文を持っていないと、とてもロシア人とは渡り合えないような気がする。だからロシア人の先生に和文露訳をまかせよということではない。肝心の日本語の文法を深く理解していないのではないかという危惧があるからだ。中級や上級となれば、必要な語彙は飛躍的に増える。それに対応するような例文が全く少ないような気がして、自分のコレクション(9万を超えた)から、役に立ちそうなもの短文をこのコーナーで紹介しているわけである。
設問)「恥も外聞もない宣伝はその目的を果たす(効果を上げる)のだ」をロシア語にせよ。
Нахальные
рекламы достигнут
своих целей.
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正解です。私の答えは、Беззастенчивая реклама делает своё дело.
Ужасно прямая реклама без всякого стыда часто имеет результаты.
9万ということはまだまだ続きますね!
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お答えは、意味は通じると思いますが、隔靴掻痒のような気がします。動詞の語結合では、получить, дать, показать результатыやдобиться, достигнуть, достичь рузельтатовとした方がいいかもしれません。
確かに語彙は9万項目あるのですが、使える例文というのはそれほど多いものではありません。「私は毎日学校に通う」という類なら別でしょうが、応用性のあるもので、一般的な会話に使えるものというのはそれほど多くはないのです。もともとこの語彙集は一般辞書に載っていないような、技術専門用語(造船、鉄鋼、機械、医学、スポーツなど)や通訳用の言い回しが中心なので、9万項目あるといっても、врождённая косорукость(弯手という医学の専門用語ですが、健康診断で使うような用語ではありません)などで、いざという時に医学関係の翻訳の仕事があってもいいようにというのが主旨です。これなどは研究社や岩波のでは内反手、外反手となっていて、厳密に言えば訳が違うと思います。一般向けの辞書は一般向けですから、訳はまあまあのレベルでいいのですが、医学でも技術でもお金を取る翻訳や通訳は、厳密さを要求されます。既存の辞書になければ、自分で作ればいいわけで、この40年間、そういう気持ちで作ってきたわけです。ですから私の語彙集で、一般向けに使えるのは、あまりありません。最近は意識して、そういうのを増やす(語彙に入れる)ようにしていますが、特に熱心というわけでもありません。ありふれたものは、小説の会話の部分、インターネットも玉石混交ですが、いいものは使えるものも少しはありますので、他人を頼らず、自分で収集しないと、結局のところ、責任を持つのは自分ですから。応用できそうな例文は、これまでの著書やこのコーナーで紹介しています。例文はたくさんあるのですが、使えそうなよい例文の残りはそれほど多くはありません。