2012年10月06日
●和文解釈入門 第505回
完了体過去形のアオリスト的用法(和文露訳入門2-2-1参照)については、第501回の回答でも触れたが、不完了体過去形は過去を具体的に示す語句(昨日、昨年、5年前、1961年など)とは相性が悪い。これは過去に限らないが、時間を示す語句というのは、全般的に場独立型であって、新規の事柄(レーマрема、和文露訳入門9-10参照)として出てくる場合が多いからだろうと思われる。だからどうしても不完了体過去形を過去を具体的に示す語句と一緒に使いたいというなら、そのような場を先に作ればよいことになる。
Он ведь уже был здесь – приезжал со мной после землетрясения.(だって彼はもうここに来ていたよ。私と一緒に地震の後に来たんだよ)
とすれば、二つ目の文では文の焦点は明らかに動詞にはなく、「私と一緒、ないしは地震の後〔これが過去を示す語句に相当する〕」にあるわけで、その証拠に述語の動詞がなくとも意味が通じる。一旦、Он ведь уже был здесьという場を作っておけば、その場に依存して不完了体過去形が使えることになる。普通は、このような人工的なやりかたではなく、質問に対する回答の形で不完了体を使う事が多い。質問自体が不完了体過去形を使うための場としての役割を果たしているということになる。また同じ語句(動詞も含めて)を繰り返すというのはロシア語としてくどい感じを与えるので、できるだけ同義で違う語句(この場合はбылに代わる動詞)、ないしは表現を用いるというのが、日本語と違うロシア語の鉄則である。そのためにбылの代わりに運動の動詞の不完了体過去形が使われているという事情もある。
- Когда в последний раз были в Саратове?(この前はいつサラートフにいらっしゃったのですか?)
- Приезжал в прошлом году на финал чемпионата.(昨年の選手権の決勝戦のときです〔に来ました〕
この場合もВ прошлом году.(昨年)とだけ答えても、ぶっきらぼうな感じはするが、質問に答えていることになる。新規の事柄として不完了体を使うということ自体が、おかしいことであって、不完了体は雰囲気に応じて、つまり場依存型なので、場独立型の完了体と違い、場がもともと存在しなければ、使いにくいということが理解されたと思う。
しかし、このようなややこしいことをせずに、過去を示す語句があれば、完了体過去形をまず使うと覚えればよい。それが基本的にはアオリスト的用法である。体の用法の参考書では、アオリスト的用法というと、順次的用法(和文露訳入門2-2-3参照)ばかり紹介していて、よりポピュラーなアオリスト的用法に触れていないのは、著者が和文露訳の経験があまりなく、露文解釈中心に参考書を書いたという事であろう。1980年のアカデミーのロシア語文法(2巻本)の第1巻633ページにアオリスト的用法аористическое употреблениеとして、Во Владивосток я приехал в начале июля 1943 года.(ウラジオストークに私は1943年7月に着いた)という文が載っている。これを基にして、第3回に出題したわけであり、勝手に文法用語を作っているわけではないので、念のため。
設問)「それを見込んで、専門家を呼んでおきました」をロシア語にせよ。
Имея это в виду,
я вызвал специалистов.
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意味は分かりますが、文法的に言うと少し変な感じがします。見込んでの動作と呼んだの動作が、お答えでは同時ということになります。設問は時系列的に言うと、予想を立ててから、呼んだわけで、明らかに順次的な用法です。そうであれば、完了体過去形を二つ続ける方が、自然のように思います。私の答えは、Мы это предвидели и пригласили специалистов.
それと、вызватьも呼び出すで、救急車を呼びだすなどと使いますが、先生が生徒を教室で呼ぶ、軍人が自分の部下などを、悪魔(霊)を呼び出すという使い方をするのが普通なので、通訳や専門家を頼むという意味での呼び出しの場合はпригласитьの方がよいと思います。
お久しぶりです。すごい!もう500回を越えてますね。たまに投稿しないと忘れ去られてしまいそうなので頑張ってトライさせていただきます。
При учете (с учетом) данного случая(обстоятельства) я вызвала специалиста.
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正解ですが、非常に硬い言い方で、会話ではこうは言わないでしょう。ブーチャンさんにも書きましたが、その専門家が自分の部下の場合なら可能だということです。
Я ожидал, что будет такая ситуация и обратился за помощью к специалисту.
前回は沢山ご指導いただきありがとうございました!
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意味は分かります。обратился以下など、丁寧な表現で好感が持てます。ожидатьは、чтоを使っての「予想する」という意味では、否定的な文脈で使われるのが多いようです。Я никак не ожидал того, что случилось.(起こったことを全く予想していなかった)。不定形とか名詞を補語にするのが自然ですし、もっというと、ожидатьのような不完了体ではなく、完了体の使える別の動詞を使った方が、順次的用法となって、もっとよくなると思います。
Предвидя это, я пригласил специалистов.
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正解ですが、個人的には、会話で副動詞を使うというのは、やめた方がよいと思います。会話で、一旦書き言葉にするのなら、皮肉に言うなら別ですが、他の言い方も全部書き言葉にということにせよということで、文体の統一が図れなくなると思います。