2012年09月07日
●電子書籍化の理由
電子書籍を4冊上梓して、近く第5弾「観光ロシア語」(これがロシア語関係で最後の手持ち原稿)を出版予定である。7月29日の発売から9月6日現在で34冊売れた。目標は25冊なのでよしとしたい。この25冊 = 10人(常連の投稿者5人くらい? + 常連の閲覧者5人くらい?) x 5点(電子書籍発売予定数)x 1/2(義理で買ってもらう必要はないが、本当に必要だと思う人が半分くらい購入してくれると考えて)であり、これでも分かるように、このコーナー「和文解釈入門」をよく見てくれる人に、教科書というか参考書を配布したいと考えたのが、電子書籍を出版しようとした三つの理由の第一の動機である。紙の書籍で出版しないのは、出版を引き受けてくれるところがないからだし、自費出版は最低1点あたり100万円前後かかる。そんな金はない。あったらもっとロシア語の本を買うのに回す。
このコーナーでは和文の単文を出題し、それを和文露訳に興味のある投稿者に回答してもらい、それに添削する形で今日に至っている。始めて何回かしてから、設問の回答や、投稿者の間違いを正すだけでは、似たような間違いを投稿者や閲覧者が繰り返す可能性があることに気がついた。出題のテーマは回毎に違うので、何か統一的な場で、和文露訳をする際の体の用法の使い分けについて、まとめて書いておく必要があると考えたわけである。それで、第10回、第21回、第30回、第100回と続け、最後は第300回にまとめて体の用法の使い分けを書いたのだが、だんだん書く内容や量が増えていき、そのまとめの中に第~回を参照と何度も書かざるを得なくなり、その参照の量も増えて行った。これでは読むほうもたまったものではない。
二つ目の理由だが、そのような参考書を、ワードやPDFなどファイルの形で興味ある読者に無料配布すればよいのだろうが、二つ問題がある。コスト的には文献に使った本代は何百万円にもなるだろうが、他にも本を書いたし、自分の趣味や生きがいでもあるから、それはいい。具体的にはPDF化したときに、しおり(小見出しから必要なページに飛んで行ける機能)を作ったが、これは専門の会社に頼んだので有料である。そうは言っても25部売れればペイする位の料金だから、著者の負担という事で無視してもよい。理由の一つは、このコーナー自体が参加者開放型で、だれでも匿名で気軽に参加できる形式なので、メールアドレスなど知らせる必要がないようになっているからである。こちらから個別に投稿者や、あるいは体の用法に興味があるが投稿をするほどではない人と連絡の取りようがない。もう一つは、「和文解釈入門 出会い」と入力してネットで調べれば分かるが、出会い系サイトらしいところに簡単に辿りつく。「和文解釈入門」というタイトルは、私が使ったのが最初の方だとは思うが、別に特許を取っているわけでないので、自由に使えばよいのだが、世の中ににはいろいろな人がいるわけで、無料で「和文露訳入門」を配布したら、そのファイルを書きかえられるだけならまだしも、変なウィルスでもつけられたりしたら、いろいろな人に迷惑をかけることになる。電子書籍なら、完全ではないにしろ、セキュリティーはあるわけで、少額とは言え、銀行振り込みなら、そのようないたずらをする人がわざわざ金を出してまで、また本名が分かるようなリスクを冒してまで、いたずらをするとは考えにくい。タダより高いものはないのである。
三つ目の理由は電子書籍そのものに興味があり、いろいろ電子書籍に関して本を読んだが、結局のところ自分で書いて見るしか分からないだろうという事に落ち着いた。今にして思えば、確かに出さないと分からないという事はいろいろあるものである。
今のところ、販売実績を見る限り数人の人、それも同じ人が2点、3点と買っているようなので、和文露訳入門を10人の人に販売するという所期の目的は果たされたと考えてよいように思う。中小の出版社の本の初版は2000部で、それが1~2年で売れれば、採算が取れると考えるらしい。私の本で一番売れたのは、「アネクドートに学ぶ実践ロシア語会話」と「ビジネスロシア語」で、それぞれ3000部ぐらいである。それでもビジネスと考えるなら、大手の出版社でも2万部位売れないと商売にはならないのではないかと思う。ロシア語の本は何万部どころか、何千部でも売れるものは今やないといってよい。ましてや、私の著書のように、中級やそれ以上の人を対象にしたものは尚更である。2010年は電子書籍元年と言われ、一時のデジカメのようにこれからも発展してゆくと思うが、私のように、売れないテーマの本を、実際に興味を持つ10人前後(残念ながら何十人とか、何百人ではない)の人に配布する一つの手段としても、電子書籍は今のところ使えると思う。
DL-MARKETで発売した大きな理由は、非常に応対がよくて、販売する本が無審査だったことである。大手だと、その本が売れるかどうかの審査が厳しいから、私の本などは、ロシア語関係であること、本の表紙などの体裁がまったくなっていない、ごく少数の関心を持つ人(それもたった10人)向けという本だから、まず門前払いを食らう可能性が高い。販売手数料の他に、高額の掲載料や売上保証料を取られるかもしれない。DL-MARKETだって、今後経営方針が変わり、もっとシビアになって、売れないものは、販売打ち切りにするということだってありうる。3ヶ月後、半年後には私の本は絶版になっていないとも限らない。しかし、ターゲットの10人が和文露訳入門を買ってくれたようなので、何度も言うが目標は果たされたので、その分、気は楽だ。
私の電子書籍は、語彙や体の用法などをまとめたものを、ロシア語の和文露訳に真剣に取り組みたいという人たち向けに配布する手段の一つなのである。これをあだ花兵法と呼んでもよい。この40年ロシア語を勉強して、自分が知り得た知識や、語彙が、他の誰にも知られずに無に帰するのは、まことに忍びないと最近強く考えるようになった。年を取ってきた証拠である。日本の人口一億三千万の中に、10人前後とはいえ、このコーナーに興味を持っていただける方がいらっしゃるのはまことに有難いことで、有料にしたのはまことに心苦しい限りだが、以上の理由なので何卒ご理解、ご寛恕願いたいと思う。chijikpijikさん、メイさんなどの紹介、お勧めもあり、電子書籍化に踏み切れたのは、ご両人のみならず、このコーナーをご覧の方すべてに感謝申し上げる次第です。