2012年09月26日
●和文解釈入門 第495回
前回の設問で質問が投稿者よりあり、その回答は他の方々にもご興味があるかと思い、ここに掲載する。
<質問>
「朝起きて無意識に電気をつける人がいます」の訳をしていて、朝起きるのも、電気をつけるのも、一般的、日常的な動作だから、と思って、
Есть люди, которые включают свет после того, как они встают утром.
としてしまいました。あとで日本語訳をみてみると、после того,как они встали
と完了体過去になっていたので、あぁ順序が伴ってくると日常的な行為で、過去じゃなくても完了形の過去を使うんだなぁと思ってみてたんですが、たとえば、「夜寝る前に、彼女はいつもミルクを飲む。」のような場合でも(перед сномのように名詞を使わずに従属節を使って表すと)Перед тем, как она легла спать, она всегда пьёт молоко.という感じでいいんでしょうか?
同じように順序を表して主に完了体と用いるперед темなどの場合もその従属節の中では完了体を使うんだろうな、と思ったんですが、書いてみて、「~する前に」という表現に過去を使うのがなんとなく違和感があるというかなんというか。でもそれ以外でどんな言い方があるんだろう?とこんがらがってきたので、質問させてもらいました。~したあと、~する前に・・・する、という場合、だいたい主節も従属節も完了体の場合が多い感じなので、辞書等で同じような例文を調べてもあまり載っていなくて。
<答>
これについては和文露訳入門9-2に書きましたが、不十分なような気がしますので、次のように説明を加えたいと思います。
ロシア語には日本語同様、二つの動作を記述するときに先に終了する動作(未来の時制なら未来完了、過去の時制なら大過去とか過去完了)を示す形式がないために、未来の時制においては完了体未来形ないしは完了体過去形を、過去の時制においては完了体過去形を、二つの動作のうち、先に終了する動作に使われることがあります。不完了体は、主節と従属節に共に不完了体が使われていれば、下記の文のように同時性を示します。不完了体過去形というのは過去の時制でしか使えないということを頭に入れておいてください。つまり完了体の未来形も過去形も時制の転用に使う場合があるということです。
Когда мы возвращались домой, шёл дождь.(帰宅の時は雨が降っていた)
二つの不完了体が並立して用いられれば(並立複文ならば)、先の動詞が時間的に先行する反復の動作を示します。
Вечером прихожу домой и ужинаю плотно.(夕方帰宅して、夕食はたっぷり食べます)
ですから、並立複文にすれば、不完了体現在形を二つ続けることで問題ないと思います。
Есть люди, которые встают утром и бессознательно включают свет.
従属複文を用いる場合は、未来の時制では時間的に先に動作が終了するものには、完了体未来形が用いられ、動作が次々と行われる順次的用法の場合は、主節にも従属節にも完了体未来形が使われますが、先に終了する動作を強調する場合には、完了体過去形が用いられる場合もあります。また過去の時制では時間的に先に動作が終了するものには、完了体過去形が用いられ、後に動作が終了するものには、文脈によって不完了体過去形や完了体過去形が用いられます。主節と従属節に共に完了体過去形が用いられる場合は、動作が次々と行われる順次的用法であって、従属節の完了体過去形が時間的に先に動作を終えることになります。同じ体が続く並立複文では、先行する不完了体過去形、ないしは完了体過去形が時間的に先行した動作を示します。
Если вы встретитесь (встретились だと強調のニュアンスがある) с ним, то вы узнаете(完了体未来形で力点はаにある)об этом.(彼に会えば、そのことについて分かりますよ)
После того как больной принял лекарство, он почувствовал себя лучше.(病人は薬を飲んだ後で、気分がよくなった)
После того, как сработает будильник в другой комнате, вам придется встать и выключить его.(違う部屋で目覚ましが鳴ったら、起きて、止めざるを得ない)<例示的用法>
Когда хлор улетучится, я наливаю раствор в банку. (塩素が蒸発したら、溶液を瓶に〔いつも〕注ぎます)<主節は反復の動作を示し、従属節は例示的用法>
перед тем (,) как + 不定形が一般的です。それゆえ、具体的な一回の動作には完了体を、反復の動作の時は不完了体不定形を使います。
Перед тем как отправиться в путь, он решил искупаться.(旅に出る前に入浴することにした)
Перед тем как ложиться спать, она всегда пьёт молоко.(寝る前には彼女はいつもミルクを飲む)
それ以外の例文は和文露訳入門9-2を参照下さい。和文露訳の改訂版が出ることになれば、上記の説明を書き加えたいと思います。
設問)「人ごみだと落ち着かないですか?」をロシア語にせよ。
Вы неспокойны в том
месте, где народ
толпится.
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正解ですが、もう少しよけいな単語は削ってもよいと思います。私の答えは、Возникает ли у вас чувство неловкости в толпе?
Вы чувствуете себя неуютно в многолюдных местах?
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少し硬い感じがしますが、正解です。
なるほど!!
詳しい説明ありがとうございます!
完了体の未来形も過去形も時制の転用、という形でその動作が実際の過去等でなくても使えるんですね!
Если вы встретились с ним, то вы узнаете об этом.
みたいなパターンを見るたびに毎回なんだかもやもやしていたので、すっきりしました^^
そして
Есть люди, которые встают утром и бессознательно включают свет.
のように不完了体を並列で続けてかいても、順次的な日常的動作をあらわすことができたのかぁ~~~なるほど!
と学ぶことがたくさんありました!!
ありがとうございます^^
ちなみに、
今日は最近日本にやってきた知り合いのロシア人とともに携帯の新規契約をしにいったのですが、(ある程度日本語は話せるけれども細かい契約は不安ということで)プランや契約期間の説明などで全くお役に立てず、
結局、ゆ~~~~っくり日本語で説明して分かってもらった、という感じでした。
非常に申し訳なかったと同時に、案外簡単なこともロシア語で伝えることができず、結構ショックで、もっとロシア語をしっかり勉強せねばという気になりました。(帰ってから一応もう一度じっくりロシア語の説明を考えては見たんですが)
こういう場面でロシア人の友達にある程度さっと説明できるくらいのロシア語力をつけられたらなぁ~と今日、強く思いました。
まず最近時制や態などの基礎の危うさを実感しているので、そういった点から頑張っていこうと思っています。
(とまぁ後半はただの私のつぶやきになってしまいました。)
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私も一見簡単に見える日本語らしい日本語の方が露訳するのが難しいと思います。「太陽光発電は10年後は広く使われる」というような時事ロシア語関係の文章の方が、携帯の申し込みよりは通訳が楽だろうと思います。時制の転用で分かりやすいのは、
Поехали! (Пошли!)という Let's go!などです。こういうのは丸暗記するのですが(私もそうです)、日本語にも、市場でよく聞く店主が商品を勧めるときの「買った、買った」、人を追い払う時の「行った、行った」(これらは日本語学者によれば過去の時制が由来ではなく、確述という用法らしいですが)などがあります。
В толпе ты неспокоен(а)?
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惜しいですね。неспокойна (男ならнеспокоен)です。