2012年09月06日

●和文解釈入門 第475回

日本語の時制は過去と非過去(現在、未来)が対立する。時制から見て日本語の動詞を状態動詞と非状態動詞に分けると、状態動詞は、「~ている」の方を取らずに現在の状態を表す動詞で、「いる、見える、思う」などであり、「今家にいる」、「明日もここにいる」のように、ル形で現在と未来を示す。非状態動詞というのは、「話す、行く、歌う」などの動きを表す動詞で、ル形が未来だけを示し、現在はテイル形を用いて示す。

 一方アスペクト(出来事が進行中か、継続中か、終了したかなど動きの局面に注目する文法形式)で、日本語の動詞を分類すると、動作動詞(継続動詞とも言う)、変化動詞(瞬間動詞・結果動詞とも言う)に分かれる。動作動詞は「電話で話している」のように、テイル形が進行の状態を示している動詞で、変化動詞は、「イスに座っている」のように、テイル形で結果の状態(現存)を表す動詞である。テイル形には、このほかに「学校に通っている」などの反復・習慣を示す用法や、「棒の先がとがっている」というような形容詞的用法、「その話は一度聞いている」というような経験を示す用法があり、「~した」も「歩いた」や「歩いて来た」のように、日本語では過去と現在完了の意味がある。これらをロシア語の時制やアスペクトなどに振り分ける必要が出て来る。ただ伝達型動詞はについては、「和文露訳入門」に挙げたように、さらなる別の工夫が要る。

 ロシア語の参考書などで、Завтра он прочитает эту книгу.の訳を「明日彼はこの本を読み終わるだろう」と「だろう」を入れて訳しているのを見るが、これは第472回に述べたような考え方からだということは理解できるが、「だろう」は国語辞典を引いても、「推測の意味」であるので、これを避ける工夫が必要である。主語が三人称だから、意志・欲求の「~う」は使えない。それに、このпрочитаетは未来の動作の確実性を意味している。だからそれに相当する日本語の動詞表現である「~る」を使えばよい。「読み終える」は動作動詞であり、ル形は未来だけを示すから、「明日彼はこの本を読み終える」とすれば正しい和訳という事になる。

設問)「最近6カ月の間に乗組員に病人が出ましたか?」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年09月06日 07:37
コメント

В последние 6 месяцев
появился больной из экипажа?
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設問は「病人が出ましたか?」ということで、聞いている方には、病人がゼロか、一人か、百人か不明なわけです。こういう場合には数えられる名詞(病人もそうです)では、単数ではなくて、複数形を使います。これは人の答えやこういう説明を読んでいるだけではだめで、аякаさんのように、実際に回答してみて、分かることです。非常に簡単なことなので、次から間違えないでしょう。間違うとしたら、鋼とか雨のような物質名詞の類が複数となる場合ですが、それは第300回の後ろの方とか、和文露訳入門の10-3を読めば分かると思います。私の答えは、Были ли у вас больные среди экипажа в течение последних шести месяцев?
 それと、設問のように動作の有無の確認(動作があったか、なかったか)に完了体過去形を使うことはありません。これは不完了体の領域です。和文露訳入門でいえば、2-1-1を参照ください。これは体の用法でも基本的な問題ですから、理解すれば、体の用法の完全マスターの第一歩です。
 この設問の回答として、「病人はいませんでした」という場合にはНе было больных.と複数生格になります。

Posted by аяка at 2012年09月06日 10:05

Кто-нибудь из членов экипажа болел в течение последних 6 месяцев?
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正解です。

Posted by Ml at 2012年09月07日 04:54
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