2012年08月15日
●和文解釈入門 第453回
初級者がこのコーナーをどう活用すべきか書いてみたい。初級者というのはロシア語を学ぶのだということで、どうしてもロシア語主体にならざるをえない。しかし、ロシア語会話をしたいのであれば、日本語からロシア語へというような視点も大切である。ここでいう初級者というのは、ロシア語を勉強して半年ぐらい、文法は一通り終えたぐらいで、ロシア文字は読めるという方を指す。ロシア語会話や和文露訳は初級者のうちから勉強した方が、ロシア人と会話しようという動機付けができて、ロシア語の実力が上がってゆくと考えるのは理の当然である。
そうはいっても初級者では語彙が不足しているために、和文露訳をするのは無理だと考えるかもしれない。それはその通りなのだが、それなら初級者はこのコーナーでは語彙のことは考えに入れずに、設問の日本語だけ見て、動詞が完了体か不完了体か、あるいは名詞が単数か、複数かだけ、あてずっぽうでよいから自分で答えをメモしておくのである。24時間後には答えが出るし、用法名もできるだけ書くようにしているので、第300回の本文や和文露訳入門を見てもらえば、体の使い分けの説明が詳しく載っているので参考になるはずだ。どこを見れば分からないのであれば、遠慮なく質問してくれれば回答する。これを毎日続けるだけで、体や単数・複数の使い分けの勘が養われて来る。回答例を暗記すれば語彙力もつくという具合である。今まで450回続けているのでアトランダムに、自分の都合のつく時間に1日1題やってみれば、ロシア語の会話力はついていって、中級に進むのも時間の問題だ。電子書籍の「ロシア人の疑問 – 日本編 -」だって、日本語の単文を見て、完了体と不完了体のどちらかであるかをチェックしてみるとか、単数・複数を調べてみるとか、そのような和文露訳の勉強という観点から使える参考書なので、初級者の方にとっても使い方一つで役に立つと思う。
このように日本語を語彙という枝葉ではなく、動詞の体の用法や時制といった根幹の方から見つめる方が初級の段階ではより重要であると思う。ロシア語に振り回されるのではなく、あくまでも和文を主体に据えるという意識を初級者の段階から意識的に見につけることが、ロシア語会話上達への道である。
設問)「(それは)エレベーターを降りた右手のほうにあります」をロシア語にせよ。
① После выхода из лифта, направо (это находится).
② Выидя из лифта, (это находится) направо.
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動名詞や副動詞を使うと、どうしても書き言葉のようで、会話では一般的だとは思えません。設問は二つの動作が前後して起きているわけです。降りると、存在するのですから、未来完了の用法ですが、(2)を平文に直せば、когда выйдетеとなります。そうなると、この時制は発話の時点から考えて、未来ですから、「存在する」が現在というのはおかしいことになります。もっとも真理(地球は太陽の周りをまわっているなどの)を示す時は、超時制ということで、現在の時制が使われますが、その建物が未来永劫その場所にあるのなら、超時制という解釈の余地は出てきますが、そういうことはないでしょう。となると、エレベーターを降りた後で、その人にとっては、それが出現するわけで、未来時制にする必要があります。私の答えは、Это будет справа, когда вы выйдете из лифта.
「降りた」は未来完了の意味、ないしは日本語文法でいう確定(確述)の用法かもしれない。エスカレーターを降りたならсойдёте с эскалатораである。
Это находится справа от выхода из лифта.
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意味は分かるでしょうが、作ったロシア語です。動きが全く感じられません。時制というのは発話の時制であって、絶対時制ではありません。エレベーターから降りるまでは、それは目の前にはないのとおなじことであり、降りた瞬間、目の前に出現するのです。少なくとも、設問の意味はそういうことです。