2012年08月09日

●和文解釈入門 第447回

(200) *「イザベラ・バードの日本紀行」(2巻)イザベラ・バード、時岡啓子訳、講談社学術文庫、2008年
 1878年の英国人女性イザベラ・バード(1831~1904、1881年結婚を機に姓をビショップと変えた)の人力車、馬、船による、横浜、東京、日光、新潟、山形、青森、函館、室蘭、苫小牧、神戸、京都、奈良、大阪、伊勢、津、大津を回った日本北方紀行。当時の東北の農村の悲惨さが客観的に描かれていて胸を打つ。本書は説明が簡にして要を得ているし、馬に草鞋を履かせるところの描写など総じて著者の観察眼が鋭いことをうかがわせる。この草鞋についてはケンぺルにも記述があり、幕末の写真集にも載っている。日本人について「最も醜くて最も感じのいい人々だ。それに最も手際のよくて器用だ」と日本人が貧弱な体と貧相であると書いてあるのには、当時の日本人の栄養状態が悪かったこともあるのだろう。著者が最良の伝道唱道者の一人と言われるほとキリスト教の敬虔な信徒のためか、日本人は不信心だとか、日本人がキリスト教に帰依すれば日本はもっとよくなるなど陳腐に思えるところもあるが、記述は冷静客観的で、アイヌに対する思いやりなど人柄がよく伝わってくる。ただ日本人の秩序好きは認めており、不信心な人たちがどうして礼儀正しいのか若干戸惑っている記述もある。

 金坂清則教授によれば、ガイドの伊藤鶴吉(1857~1913)は、神奈川県出身、後にシドモアのガイドもした。通訳の名人で、通弁の元勲と称された。ただ通弁はオランダ通詞が長い歴史を持っており、ガイドの元勲といったところか。彼はこのとき20歳(バードは18歳としている)で、酒は飲まず、未亡人の母に仕送りをしながらバードと行を共にした。途中宿の娘に恋したり、若者らしい挙動がバードの筆致から伝わってくる。伊藤はマリーズという植物学者のガイドを月7ドルでしていたが、バードが月12ドル出すということで、勝手にバードに乗り換えた。なかなかちゃっかりしている。結局バードの仕事の後マリーズと清国と台湾に1年半同行するということでこの件は決着したという。この伊藤について、頭の切れる語学の向上心の強い若者だが、宗教心は皆無で、したたかな面もあり、宿代をピンはねしようとする小ずるいところもあると書いているのは面白い。そうはいっても、この時代のガイドは料理人、洗濯人、お供、ガイドと通訳を一人で兼ねていたようで大変な仕事だったが、パイオニアとしての誇りと愛国心を持って外国人に接していたようである。彼は後に開誘社という外国人ガイド専業組合の発起人となった。ガイドや通訳必読の書。バードは1894年から3年余挑戦を訪れ、1905年に「朝鮮紀行」(講談社学術文庫、1998年)を上梓し、その中でウラジオストークにも立ち寄っている。他に「中国奥地紀行」(2巻、金坂清則訳、東洋文庫、2002年)や「イザベラ・バード極東の旅」(2巻、金坂清則編訳、東洋文庫、2005年)という日本を基地としての朝鮮、中国、沿海州の旅について補遺(上巻は写真集)の邦訳がある。

設問)ボクシングで「この選手は何勝をあげましたか?」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年08月09日 06:48
コメント

Сколько боев выиграл боксер?

(боев および боксер の е は「ィヨ」の発音。iPad では「ィヨ」が出せません)

これは、「立て続けに数回繰り返された動作は一括化して完了体で表すことができる」に当てはまらないでしょうか。
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正解です。その通りで、私の答えもСколько боёв выиграл этот спортсмен?
Сколько у него побед (поражений)?〔彼は何勝(何敗)ですか?〕という表現もある。
 これが一括化かどうかですが、もとの表現はвыиграть бой 1勝を挙げる(1回勝つ)で、これが6勝するならвыиграть 6 боёвということで、無理に一括化と考える必要はありません。ボクシング以外の試合なら、выиграть встречу (матч, партию)が使え、それに数詞を組み合わせればよいことになります。вы-という接頭辞は、この動詞の場合、成果の達成を意味しますから、その意味だと思います。вы-のついた動詞で、動作の一括化に含まれるものは知りません。しかし、私が間違っている可能性もあります。一括化というのは、разとの組み合わせが多いので、そういう用例がいくつか集まれば可能だと思います。
ヤンデックスで見る限り、выиграть несколько разも千例弱あるので、一括化と考えてもよいかなという気がします。いずれにせよ、学者ではないので、выиграть несколько разが実用で使えるかどうかという方が、一括化かどうかよりも私には大事です。そういう意味で、こういう考える機会を与えていただいたことに感謝します。

P.S.
自分の語彙集をチェックしましたら、Залпом выпил несколько стаканов вина.(酒をコップ何杯か一気飲みした)という文を見つけました。これは動作の一括化と言っていよいと思います。вы-という接頭辞のついた動詞でも一括化で使えるということが分かりますが、設問は必ずしも連続して~勝したということではないので、一括化とは違うと思います。

Posted by メイ at 2012年08月09日 22:32
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