2012年08月06日
●和文解釈入門 第444回
<訂正とお詫び>
電子書籍「和文露訳入門」19ページ下から9行目<完了体は客観的な動作や状態を、完了体は主観的なそれを示す>は、<不完了体は客観的な動作や状態を、完了体は主観的なそれを示す>に訂正願います。このタイプミスはホームページの著者の正誤表でも訂正済みです。このようなミスをするとは誠にお恥ずかしい限りで、言葉もありません。他にミスがないことを祈りますが、あるかもしれませんので、まとめていつか改訂版を出すことも考えざるをえないでしょう。
アクーニンの探偵小説ファンドーリンシリーズに、ドルゴルーコフ公という実在のモスクワ市長(実際には警視庁長官と市長を兼任したような職)が出て来る。公は1877年に起こったハートのジャック団Шайка червонных валетовによる詐欺事件の被害者でもある。公の家を空家として、一味の一人で、公の甥でもあるヴォリデマールが英国人に10万ルーブルで売り払ってしまったのだ。結局、公が関わっていると言うのでこの事件は揉み消されたが、こういう事件を調べていると、文献によって公の名字がドルゴルーキーだったりドルゴルーコフだったりする。公の御先祖は、モスクワ開闢で有名なドルゴルーキー(文字通りは長い手、1130年代キエフとペレヤスラーヴリ奪取のために戦い、広大な地域を股にかけて活躍したことから長い手と称された)とは関係ない、15世紀のオボレンスキー公の流れをくむ公が御先祖で、腕が長かったのかどうかも知らない。
「ロシア古文観賞ハンドブック」(中沢敦夫、群像社)を読んでいたら、昔は、名字を生格のまま表記したとある。つまりДмитрий Алексеевич Долгоруково(ドルゴルーキーのドミートリー・アレクセーヴィチ)と表記されていたのが、最後のоが抜け落ちたのだろう。ДолгоруковоはДолгорукийの生格Долгорукогоと音では同じだからだ。なぜこういうことを書いたかと言うと、公の名字を和訳するとき、ドルゴルーキーとすべきか、ドルゴルーコフとすべきか、どちらなのだろうと長いこと(10年くらい)考えていたからである。どちらでもいいが、どちらかに統一すべきというのが私の前々からの結論であり、今になってようやく、どちらかというと、ドルゴルーキーのほうがいいかなという気がしてきた。
設問)「あ客様宛てに手紙が来ています」をロシア語にせよ。
Вам прислали письмо.
「宛てに」がちょっとひっかかりましたが、ここは体の用法を学ぶ場所と考えてこの答にします。簡単に "Вам письмо" と言ってしまいそうです。
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正解です。私の答えは、На ваше имя пришло письмо.
典型的な結果の現存の用法。「(お客様に)手紙はありません」ならВам писем нет.と複数生格を使う。