2012年07月14日
●和文解釈入門 第421回
前回の設問の「(条件を)飲む」というのは「受け入れる(OKする)」ということだが、一般的に完了体過去形を使うと、結果の現存ということで、「たった今OKしました」という感じを受ける。かといって、不完了体現在形を使うと、過程(OKしつつある)、状態(〔昔から〕OKしている)ということになり、設問とは違う。このようなときには、発話が始まって、発話が終わると同時に動作が終わる動詞が用いられるわけであり、それを伝達動詞(動作遂行の動詞改め)と呼ぶ。日本語でも「ライセンス契約の条件を受け入れます」というのは、「(とっくの昔に)受け入れている」とは違うということが了解されるはずだ。これまでの体の用法の参考書で、現在時制では予定の用法ぐらいしか触れておらず、現在時制については当然分かるとしてか目次にない参考書もある。
20年ほど前に「ビジネスレター入門」を上梓した際に、СообщаемとСообщимの違いについて、深く考えるところがあり、この動詞の類語(厳密ない意味での伝達に関わる動詞)には、現在形で、状態でも、結果の現存でもない用法があることに気がついていた。この2年ほどシノニムの研究をする上でАпресян先生たちが、この動詞について書かれているのを読み、納得した次第である。露文解釈ではこの動詞について、特に知る必要はないのかもしれないが、ビジネスレター、特にメールなどでは、сообщать/сообщитьを不完了体現在形で使うのか、完了体未来形をにするのか、他の動詞はどうするのか、その違いを知ることは重要である。そうでなければ、ビジネスレターの文頭でよく使われる表現、「~を連絡申し上げます」はどう訳すというのだろう。理屈も分からず、みな丸暗記にすればよいというのではあるまいし、日本語の時制に従って、ロシア語も同じ時制にすればよいというのではないことはお分かりだろう。
設問)「日本では大安売りはいつごろですか?」をロシア語にせよ。
В каком сезоне
в Японии происходит
распродажа по
удешевленной цене ?
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в каком сезонеというのは、ネットでの使用例を見る限り、テレビドラマなどのシーズン、このエピソードはどのシーズンで放映されたというニュアンスで使われるのではないかと思います。またраспродажа = реализация какого-либо товара по сниженным ценамですから、お答えのпо以下は冗語です。происходитは繰り返しにも、過程にも使える重宝な動詞ですが、この場合は繰り返しが明らかですから、случаться, быватьの方が、繰り返しということがはっきりします。これらの動詞は過程では使えないのですから。私の答えは、Когда бывают распродажи в Японии?
繰り返し起こるようなもの、夏休みなどはКогда бывают летние каникулы у студентов?(学生の夏休みはいつごろですか?)とこのような表現を使う。
Когда вообще проводятся дешевые распродажи в Японии?
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正解ですが、дешёвыеは取った方がよいと思います。ソ連時代に出た露露辞典では、распродажаは売り尽くしというような訳しかありませんが、これは国の体制自体が、資本主義的概念を否定していたからです。ソ連崩壊後のこの単語の用例から判断するに、また、ネットの辞書の定義を見る限り、単なる売りつくしではなく、値引きしての、つまり資本主義社会におけるセールと同義だと判断せざるをえません。そうなると、安い大安売り(安いセールという言い方は日本語では可能でしょうが)というのは、避けるべきではないかというのが私の考えです。
Когда бывают распродажи в Японии?
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正解です。