2012年07月13日
●和文解釈入門 第420回
日本ではロシア文学はそれなりの数のファンがいるが、ロシア語を勉強する人は少数派である。しかも、和文露訳に興味を持って真剣に勉強しようとする人は、その中の少数派である。その中で体の用法が和文露訳の根幹だとして、勉強する人は、過去も現在も、そして多分、未来も少数派中の少数派である。しかし、露文解釈をするにせよ、和文露訳をするにせよ、正しくロシア語を理解したいという、この一見単純な欲求を満たすには体の理解を前提にするしかないと思う。その証拠に、動詞のある文を言おうと思えば、必ずどちらかの体を使わざるを得ないではないか。
設問)「当社はライセンス契約の条件を飲みます」をロシア語にせよ。
Наша фирма готова
пойти вам навстречу
и принять условия
лицензионного
договора.
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お答えは、「弊社は貴社に歩み寄って、ライセンス契約の条件を受諾する用意があります」となり、正解にしてもいいのですが、もって回った外交的な使い方で、実質的には受諾しているとはいえ、厳密に言えば、受諾していないことになります。お答えにある如何にニュアンス的に正解に近づけるかという熱意は強く感じます。私の答えは、Мы принимаем условия лицензионного соглашения.
принимать = соглашаться ということで「受け入れる」という意味である。приниматьはこの意味では伝達動詞(動作遂行動詞改め)なので、不完了体現在形である。なお、соглашатьсяは繰り返しや否定の意味以外は、不完了体現在形では使われず、согласныと形容詞短語尾の現在形を用いる。この動詞はсогласитьсяという完了体での使用が多い。
1) Мы принимаем условия лицензии.
2) Мы принимаем указанные в лицензионном договоре условия.
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2)は正解ですが、1)はライセンスであって、ライセンス契約ではありません。условия лицензионного договора (соглашения)とすべきだと思います。
Условия лицензионного соглашения нами приняты.
「条件をのみます」と言った時点から動作が始まっているので動作遂行型動詞かなと思ったのですが、第300回に戻って確認したところ含まれていないようなのでこちらにしました。
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誠に申し訳ありません。приниматьを入れるのを忘れてしまったのです。принятыにすると、その時点ないしはそれ以前に条件を受諾したという意味になります。伝達動詞(動作遂行動詞改め)の用法はご理解されているので、そうういう方が増えてくれることを望みます。日本文の時制が現在だから、ロシア語も現在の時制にしておくというので、和文露訳が通るなら、それでいいのですが、そうでないことはこれまでのこのコーナーの設問でお分かりと思います。
第370回、第345回の本文もかなり訂正が出てきており、第300回についてはもはや原形をとどめておりません。現在「和文露訳入門」に、力点を打つという(今回はアポストロフィーを使っています)著者にとっては最も馬鹿らしい作業を日がなしております。現在は忙しい時代なので、初級者や中級者にとっても役に立つのかもしれないと思いやっています。力点を打たなければ、売れ行きが悪いどころかゼロとなりませんから。同時に推敲を重ね、用語も変えて、電子書籍での出版を目指しております。