2012年07月06日
●和文解釈入門 第413回
ロシア語の通訳やガイドになりたいのであれば、ロシア語を習得するのは当然なことながら、日本語についても一つの外国語として客観的に理解しようという姿勢が大切である。前に紹介したウナギ文なども、表層構造では理解しても、深層構造をロシア人に伝えるような工夫をしないと結局私がウナギとなって、理解されないことになる。文脈に依存する関係が低ければ、表層的に訳せばよいが、日本語のように文脈に依存する程度が高い語学(高文脈言語という)は、何を言わんとしているかその深層まで理解しないと和文露訳が非常に難しいということになる。
一方、英語は多民族向けの言語で低文脈言語であり、主語を省略できないなどその例である。ところが日本語では、強調するなど必要な時に、人称が出てくるという、人称省略というよりは、必要な時に人称が顕現するという非常に進んだ言語である。これは日本にいる外国人の数が1.5%ぐらいであり、すべて日本語で通じるということが背景にある。今やインターネットの時代で、民族間の考え方の違いが少なくなる傾向にある。ということは言語も高文脈化をたどっているわけで、日本語はその最先端を走っていると言えないこともない。
漢字も習得が難しいのは確かだが、書くのに必要なのはせいぜい2000字程度のことであり、会意文字や形声文字などの組み合わせ文字がほとんどで、少数である象形文字や指示文字を覚えれば、後はその応用でありそれほど困難とはいえない。日本語は漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字と4つの文字を使うため、読んですぐ内容が分かるビジュアル言語である。この点も時代にマッチした言語であると言える。戦後すぐ、日本語そのものをよく理解していない文人たちが、国語をフランス語にせよとか、文字のローマ字化を唱えたのは、敗戦後の劣等感そのものであり、我々はロシア語などの外国語を通して、日本語の正しい意義や価値を理解する必要がある。
設問)「ふくよか(ぽっちゃり系)なのにもかかわらず、彼女は軽やかに、そして優雅に動いた」をロシア語にせよ。
Несмотря на пухлую
фигуру, она легко и
изящно двинулась.
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正解です。私の答えは、Несмотря на полноту, она двигалась легко и изящно.
太っているという形容詞の類語のニュアンスについては第31回で述べた。полныйに悪いニュアンスはない。пухлыйは赤ん坊によくつく形容詞で、ふっくら、むっちりという感じか。
設問はエカチェリーナ1世(ピョートル1世の妃)のダンスの際の描写である。
Она легко и изящно двигалась, несмотря на свою полноту.
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正解です。
Она продвигалась легкой и элегантной поступями, хотя была пухлой.
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поступь女性のエレガントな歩きぶりを指す言葉ですが、アカデミー版の露露の用例を見る限り、単数で使われます。легко и элегантноとしたほうがよかったと思いますし、こうすればダンスでも使えます。
Хотя она пышная, двигалась легко и элегантно.
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惜しいですね。она была пышнойとしないと、時制が合わなくなります。勘ぐれば、今はむっちりしているが、昔は軽やかにエレガントに動いたと取れないこともありません。