2012年06月30日
●和文解釈入門 第407回
「おかけください」を露訳するときに、必ず、Садитесь. Присаживайтесь.(少しの間座れというニュアンス) Подсаживайтесь.(回りにとか、近くに座れというニュアンス)と不完了体命令形で言わなければならないのだろうか?子供向けの本に、「ヴルンゲリ船長の冒険Приключения капитана Вругнеля, А. Некрасов」というのがあり、邦訳もあるそうだから、ご存知の方もいるかもしれない。児童書というのは、会話文も多く、会話の和文露訳をマスターしたい人には精読して、いろいろな表現を収集するには絶好である。ヴルンゲリ船長はヨットで世界一周をしたという豪のものだが、今や航海学校で教えている身の上。生徒からは航海などしたことがないのではないかと疑いの声も聞かれる始末。あるとき風邪をひいて学校を休んだ時に、成績簿を取りに級長が船長の家を訪ねる。部屋の中に色々ある航海の記念品を見て、その生徒が、А вы разве плавали?(本当に航海をなさったことがあるのですか?〔典型的な動作の有無の確認、名指しの用法の経験〕)と言うと、憤慨した船長は長話をしようとして、生徒が立ったままであるのに気付き、Да вы присядьте ...と声をかける。この訳は「まあまあ座ってください」とか、「おやおや〔気がつきませんで〕、座ってください」でもよいが、要するに、船長としては、急に相手が立ちっぱなしだという事に気がついて、それまでとは違う動作である、場独立型の完了多命令形を用いたというわけである。このように相手も座るのが当然とは思っていないだろうと話し手が見なす(相手が本当のところどう思っているかは分からないし、それを考慮しない)ときに、完了体命令形は使われる。
課長が部下を席に呼んで話を聞くときは、部下は立ったまま話をするのが普通である。ところが、課長の方で話が長くとなる思えば、Сядь.(まあ座れよ)と完了体命令形が出てくる。部下が座ることを予想していないということを課長は知っているからである。
同様に、混んだ電車で取引先のお客さんと立っているときに、空いた席を見つけたらその人に、上記同様Сядьте.というはずだ。このように、「お座りなさい」はСадитесь.と馬鹿の一つ覚えのようにしていると、生きたロシア語が永久に分からないことになる。それに対処するには、場面転換と状況把握が分かりやすい、また会話の文も多い児童文学の精読というのも一つの方法だと思う。
設問)「(いくつかの)問題の話し合いの方に移りましょうか。そのためにお見えになったのでしょうから」をロシア語にせよ。
(1) Итак, давайте
приступим к
обсуждению ряда
вопросов, так как
вы приехали сюда с
этой целью.
(2) Итак, позвольте
приступить к делу,
так как вы приехали
сюда, чтобы обсудить
ряд вопросов.
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これでもいいようにみえますが、設問は目的を示しており、お答えは理由と目的の組み合わせを示しています。その点をすっきりさせた方がよいと思います。また二つの文があって、共通項があるときには、関係代名詞や関係副詞を使うのが自然です。私の答えは、
Давайте приступим к обсуждению вопросов, из-за которых вы приехали сюда.
このиз-заは悪い原因を示すのではなく、目的を示す。もちろんдляを使ってもよい。この他に使えるのは、
Для этого я и приехал.(そのために参ったのです)
Разрешите сразу приступить к обуждению вопроса, ради которого я приехал сюда.(すぐに本件の話し合いに入りらせてください。そのために参ったのですから)
Мы здесь для того, чтобы обсудить эти вопросы.(これらの問題を話し合うためにここに参りました)
Я приехад сюда, чтобы обсудить возможность обучения наших специалистов в СССР.(我が国の専門家がソ連で研修を受ける可能性について話し合うためにここに来たのです)
Итак, приступаем к обсуждению вопросов? Ведь вы для этого приехали.
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итакとあるので、新たな事態の生起であることは明らかです。このように新たな話題を提起する(場面や話題の切り替えの)ときは、Приступимと完了体を使うべきです。итакがなければ、またその場の雰囲気から、その問題に移るのが当然であるような雰囲気であれば、場依存型として不完了体も使えると思います。ただприступитьという動詞は、よく場面の切り替えに使いますから、完了体での使用が多いように思います。それとお答えも理由と目的を使っています。通訳するときはこのような訳になることは、時間の関係上やむを得ないとは思いますが、目的だけで作るべきだと思います。ведьはない方がよいと思います。理由を示しているということのほかに、口語的ですから、なれなれしさを感じます。交渉では使わないと思います。
Переидёмте на беседу о вопросах. Кажется, сегодня для этого вы к нам приехали.
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惜しいですね。話題を変えるという意味ではперейти к + 与格です。если больше нет вопросов, то мы перейдём к вопросу ...(もしご質問がなければ、~という問題に移ります)などと使います。このためにдля этогоというのは、для вопросов かдля обсуждания вопросовということです。このように共通項があれば、関係代名詞を使えるはずです。беседаというのは、座談会、長い時間の親密な話し合い、政治的話し合いに使うのが普通です。討論、打ち合わせ、論議はобсуждениеとするのが普通です。
Давайте приступим(перейдем) к обсуждению вопросов, из-за которых вы приехали сюда.
こういう問題ばかりだと助かります。『ビジネスロシア語実践会話・応用編』117pに載っています。ここでは которых は вопросов を受けているようですが、обсуждению を受けて из-за которого とすると間違いなのでしょうか。先行詞はなるべく直前のほうがいいのでしょうか。
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正解です。これもすっかり忘れていました。討議のためにきたのか、その問題のために来たのかと考えると、ディベートの大会でない限り、その問題のために来たと考えるのが自然です。討議しなくても、自然現象や第三者のおかげで問題がなくなる(解決する)ということもあり得ます。地震のおかげでプロジェクトがなくなったなどという例を見れば分かります。
分かりやすさの問題であって、先行詞はできるだけ直前のほうが分かりやすいだろうということです。
Давайте переидём к обсуждению о некоторых вопросах. Вы же наверняка для этого приехали.
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正解です。ただнекоторыхと不定形容詞を入れない方が自然だと思います。双方にとってその問題は特定であることは明らかです。
ご参考に、из-за + 生格が悪い原因ではなく、目的で使える例を挙げておきます。
выйти замуж из-за денег(金のために嫁に行く)
Я всю жизнь работал из-за денег.(一生金のために働いた)