2012年06月26日
●和文解釈入門 第403回
「日本語」(金田一春彦、岩波新書、1988年、2巻)の中に、英語で表せない日本語の表現というのが出てきた。二つあって、一つは、「レーガンは何代目のアメリカの大統領ですか?」である。これは、「リンカーンは15代目の大統領である。レーガンはいかが?」となるとある。ロシア語では表現できないのだろうか?何代目かというのは何番目かということであり、これは第300回で出題してある。これを使って、Который Рэйган по счёту президент США?となるはずだ。
もう一つは「今日はどこどこへ行きましたか?」である。英語では「どこに?Where?」としか、つまり単数でしか表現できないということらしい。これもロシア語では、По каким местам вы ходили?でよさそうに思うがどうだろうか?ただсегодняという時間を示す副詞と不完了体過去形をつけるのはどうかなという気もする。かといって対応する完了体はないし、この文脈で完了体過去形が使えるとも思えない。
一方日本語には関係代名詞がないので不便なこともあり、その例として、I have nothing with which I eat the meal.を挙げている。これなどは、「ご飯を食べたいが箸もない」とでも言い換えるしかないのだろう。ロシア語なら、У меня нет ничего, которым я ем пищу.とでもなるのかもしれないが、何か人工的な気がする。
「私がルーヴルで見ていたく感激した記憶がまだなまなましいあの名画が、今度はるばる海を越えて上野へやってくる」というような関係代名詞が二重に使われる文は、英語に訳そうとするとうまくいかないということも書いている。関係代名詞も万能ではないらしい。和文自体がくどい感じなので、好きな文章ではないし、通訳するとしたら、二つぐらいに文を分けるとは思うが、一応直訳すればこうなる。Из-за далёкой границы идёт на выставку в Уэно шедевр живописи, который в Лувре на меня произвела ещё неизгладимое впечатление.
設問)「おはきの靴のメーカーはどこのですか?」をロシア語にせよ。
Каков изготовитель
обуви, которую вы
надеваете ?
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これだと、その答えは「アメリカの」とか、「悪い」とか、「世界的な」というようなものになります。設問はメーカー名を聞いているわけです。私の答えは、Кто изготовитель ваших ботинок?
Какой марки(Какого производителя) туфли вы носите?
いま現在はいている靴のメーカーを具体的に聞いている状態を想定したため、メーカーが単数になっています。一般的に聞く場合は、туфли よりもобуви のほうがいいでしょうか。
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обувьは総称語で、短靴の中でтуфлиは婦人靴や紳士靴でひもで締めないものを指します。ひもで締めるものはполуботинкиで、ботинкиは足首まであるものです。設問では実際の靴を見て言っているわけで、それに応じて表現を変えるか総称名詞を使えばよいと思います。
これも靴のモデルをいっているようですから違います。