2012年06月14日

●和文解釈入門 第391回

私はロシア語を学び始めて40年になるが、このレベルになるまでかなり遠回りの勉強をしてきたなと今になって思う。文法を一通りやってから、和露辞典を片手に和文を露訳しても、作った文がロシア人から意味が分からないとか、意味はともかくロシア語ではこうは言わないとよく言われた。これは高校時代に英語でも同じ目に遭ってきたので、それではいけないと思い、句動詞や前置詞句の丸暗記をし、慣用句、諺、その上仕事柄、技術ロシア語(船舶用語、鉄鋼用語、プラント用語、工具関係、原料用語)などを勉強した。後悔はしていないが、勉強の1/3はひたすら暗記に明け暮れたと言ってよい。少しでも和文露訳に使える短文(由緒の正しい、つまりロシア語の著作から抜き出した短文)を理屈抜きで丸暗記するのである。これは狭い分野なら効果があるが、概して効率が悪い。それに丸暗記といういうのはまともな大人がすることではないと常々考えていた。その中でもっと文法を中心に据えて、暗記する量の軽減化を図れないかと考えたのが、体の用法をマスターすることだったわけである。これは間違っていないと今でも思っている。私の経験と系統的に集めた例文によってできたのが、和文露訳における体の用法の目安である第300回の表である。第300回、第345回、370回の本文に書かれたものをまとめたものが完成したが、A4で130ページ近くになってしまった。これを読むと、確かに第300回の本文は分かりにくいなという感じはする。まあそうは言っても、ポイントは変わらない。例文をいくつか入れ替えたし、その説明を具体的に詳しくしたと言うだけである。

 類義語の使い分けについては第14回に書いた本を読むのがベストだが、基本的には露露辞典の熟読に尽きる。それ以外の参考書については私のホームページの「ロシア語ガイド・通訳・翻訳で使える辞書・参考書」の最初の方に書いておいたので参照願う。それと自分なりの和露の語彙集(できるだけロシア語の例文を入れ、それにきちんとした和訳をする癖をつければそれが露文和訳の練習になる)をエクセルで作ることである。歳をとれば頭で覚えていることには限りがあるし、その語彙集があれば、いつも見直せるので安心である。私の語彙集は8万9千項目に近い。これが今や私の宝である。

設問)「もし他に何か問題が起これば、お電話下さい」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年06月14日 08:41
コメント

Звоните мне, пожалуйста, если у вас возникают какие-либо другие проблемы.
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これだと百点満点の50点ですね。着手の用法についてはわかりかかっているということでしょうか。問題はвозникаютです。このような不完了体現在形というのは、規則的繰り返しを示します。ところが設問は、「もし何かほかに問題が起これば」ということで、「起こるかもしれないし、起こらないかもしれない」、つまり、文法的にはこれを不規則な繰り返しといいます。このような場合には例示的用法を使うべきです。それと、これまでのご回答を見る限り、問題をпроблемаとだけ訳しているようですが、проблемаというのはвопросに比べて、より複雑な、研究を要するものに使われるということを覚えておいてください。私の答えは、Если возникнут ещё какие-нибудь вопросы, звоните.
自分がガイドするときに、客に対して別れ際によくこういう言い方をする。不完了体命令形の勧誘、というか期待ゼロの消極的な促しという用法である。「メモをお願いします」と同様、動作が遂行されるかどうかには話し手が特に関心がない(どちらでもよいという)状況で使われる。ただし従属文は例示的用法である。
ひょっとして主文の命令形も完了体の例示的用法にすべきではないかと考える人もいるかもしれないが、ラスードヴァ先生は命令法には例示的用法がないと書かれている。ただ磯谷先生はその「演習ロシア語動詞の体」の中で、「諺、格言のほかに、具体的動作を指示する掲示、注意書、取扱説明書などでは(例示的用法は)よく用いられる」と書かれているが、いずれにせよ会話では使わないということであろう。
例示的用法が会話で使えないと思うのは、例示的用法というのは、「何か~したら、~する」ということで、起こるかどうか分からないが、起こったらその動作は遂行されるという事である。ところが、マニュアルのように、指示通りにしてもらわないと機械が壊れる、というような他の選択肢がないような場合は、動作は遂行してもらわなければ困るが、会話においては、話し手の聞き手に対する動作の提示は、その遂行について聞き手の判断に任せることが多く、動作に対する期待度はゼロ、つまり、どちらでもよいという、消極的ニュアンスを取ることが多い。これは動作を聞き手に強制するということは、日常生活では目下の者に対してはともかく、一般的に礼を失すると考えるからであろう。そのような場合には、消極的な、聞き手の判断に任せるという、促しの意味の不完了体命令形を使うのが自然ということになる。それと、もともと例示的用法というのは、用いられる時制に関わらず、形式的に完了体未来形を取ることになっており、その形を命令形にするのにも心理的に抵抗があるのかもしれない。
完了体命令形を使うと、(そのうちに電話をください)Позвоните мне как-нибудь.というように、心中はともかく、口の上だけでも期待のニュアンスが出る。しかしこの文でもкак-нибудь = когда-нибудь, в недалёком будущемを使う事で、実際上は聞き手に電話をいつしなさいとという強制的な感じはないことになる。このように副詞の組み合わせで、完了体命令形を使う事もできるという事になる。как-нибудьがなければ、Звоните.と不完了体の促しの用法を使うのが自然である。

Posted by ブーチャン at 2012年06月14日 09:09

Если у вас появятся еще какие-нибудь проблемы, пожалуйста, позвоните.
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従属文の方はいいのですが、主文を命令形にすると、動作がポンポンとなされて、福島原発のときのどこかの国の首相の言葉みたいですね。

Posted by Ml at 2012年06月14日 19:28

① Если возникнут еще проблемы, позвоните мне.
② Если возникли еще проблемы, то позвоните мне.
③ Возникли еще проблемы. Позвоните мне.

①は完了体の順次的用法、②はロシア語には時制の一致がないので、起こった順序に焦点を当てたい時は相対時制を使う。③もやはり相対自制だが、こちらは если を省いて、しかも動作の行われる順番に文章を二つ(従属文と主文)に分けているので文脈がないとわかりづらいが口語では使われている。と記憶しているのですが……。
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3)はこういう言い方はしないでしょう。文字通り「他に何か問題が起こったんだ。電話してください」としか取りようがないでしょう。2)にしても、例示的用法は完了体未来形という形式のみを取ると考えるべきです。確かに日本語と同様、例えば、(もし何人かのスケート選手が同じ距離で同タイムを出したなら、各人がその距離の優勝者と見なされる)Если несксколько конькобежцев показали одинаковое лучшее время на одной дистанции, каждый из них считается победителем на этой дистанции. という文がありますが、これは相対時制であって、例示的用法ではありません。話し手には不規則に起こるというような認識はなく、動作の順序だけが問題なので、こういう言い方をしているのです。
 それよりも着手の意味がよく分かっていないようです。今回の設問も、動作するかどうかを聞き手に任せる、消極的な不完了体命令形の例です。「メモのご用意を」と同じ例です。

Posted by メイ at 2012年06月14日 23:54
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