2012年06月02日
●和文解釈入門 第379回
意味が形式を決定する、つまり意味やニュアンスが体の用法を決めるわけだから、話し手(通訳、ガイド)に、新しい情報を提示するのだという意識があれば、完了体未来形を使うだろうし、動作が予定の行動であるという認識なら、使える動詞は限られているが予定の意味の不完了体現在形を使うだろう。また単に動作がこれから起こるかどうか知りたいという疑問文や、回りの雰囲気に合わせて、ということなら不完了体未来形を使うという事になる。
これらは簡単なようだが、ロシア語の学習者は露文解釈の勉強から入るのが普通だから、所与のものである露文に慣れてしまっていて、会話でも和露辞典などで語彙を選択するぐらいはするが、会話だから瞬時に体を選べと言われても、できないことが多い。ロシア語のプロというような人でも、長年の経験からくる確率の信奉者で、命令形なら一応、完了体にしておこうとかとなどということになる。怖いことにその確率はできる人ほど高い。90~95%というような人もいる。しかし、覚えているのはロシア人が使ったという、間違いのない表現ばかりだから、文脈によっては不適切なものも当然出てくるし、体の用法の本質が分かっていないのだから、いつになってもこの場合にはこの体をということが断言できないし、外人ロシア語の要素が残る。またロシア人を前にしてロシア語を話すことにはやや萎縮してしまう事にもなる。ロシア人と日頃接触がある人なら、ロシア人の話す表現も吸収できる機会が多いだろうが、そうはいかないロシア語学習者の方がはるかに多いはずだ。このコーナーの設問のポイントを理解し、例文を暗記すれば、徐々にでも自分でどの体を使うべきか、慣れれば瞬時に判断することができるようになる。用法に疑問が出れば、第300回なり、第345回なり、第370回の本文を読むとよい。少しは助けになるだろう。
しかし私自身が体の用法を間違えないという事ではない。会話では瞬時にどちらの体か決めなければならないので、間違う事も往々にしてある。ただ自分で体の用法の規範を持っているので、間違いはすぐ分かるし、ロシア人に聞くこともない。手遅れは手遅れだが、次回は間違えないようにとの反省の材料にはなる。
設問)「私ってあなたが思ってるようなそんな(軽薄な)女じゃなくてよ」をロシア語にせよ。
Ты пойми, я же не такая легкомышленная
женщина, как ты
думаешь.
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легкомысленнаяのタイプミス。これでもいいのですが、легкомысленная женщинаを取った方がロシア語らしいと思いますし、設問にも忠実です。設問でカッコをつけたのは、悪い意味ですよということを伝えたかっただけで、その訳までは求めていなかったのです。私のは、Я совсем не та, за кого ты меня принимаешь!
Я не такая (легкомысленная) женщина, как вы думаете.
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正解です。個人的には、若い女性が使うのであれば、женщинаを取った方がよいかと思います。женщинаは女性という意味なので、「女」というニュアンスを伝えるには、イントネーションに工夫が要ります。俗語ならбабаを使えばいいのですが、これも普通の女性は使えないでしょう。となると、Нет человека, нет проблемы!(人がいなくなれば、その分だけ問題もなくなる)とスターリンも言ったとされています。これは極端ですが、語学なら、こういう発想も必要です。
Я не такая легкомысленная как вы предствляете.
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正解です。会話では関係ないですが、厳密に言えばлегкомысленнаяとкакの間にカンマが要ります。какойとした方が文法的には厳密ですが、そこまで考える必要はないのかもしれません。ついでに、не таという表現を覚えましょう。характер не тот(そういう性格とは違う)、Это не та запись.(録音が違う)、Не та скорость(速度が違う)、Федот, а не тот.(佐藤)は(佐藤)でもその(佐藤)が違う。