2012年05月31日
●和文解釈入門 第377回
「ドイツ公使の見た明治維新」、M・V・ブラント、原潔・永岡敦訳、新人物往来社、1987年
1863~1875年まで日本に滞在したブラント(1835~1920年)の手記。文章が理詰めであり、紛争に巻き込まれるのを恐れて幕府にも諸藩にも中立を通した。大阪城を逃げ出した後、自害もしなかったことなどから徳川慶喜を好感の持てない人物と書き、大久保利通を高く評価している。堺事件、これは1868年フランス水兵殺害に関わったとされる土佐藩士20名が切腹を命じられ、11名が切腹したところで中止となった事件だが、これには一人が腸を掴みだすなど凄惨を究めたためとも、暗くなってきて立会いの外国人が襲われる可能性があったためとか、切腹したものが英雄視されるのを嫌ったなどの説がある。後に助かった9名のうち1名が割腹した。その知見などからかなりの事情通だったことがうかがわれる。堺事件については森鴎外の「堺事件」(1914年刊)の資料の読み方を批判して、大岡昇平が「堺港攘夷始末」(中央公論社、1989年)を書いている。ブラント1865年および1867年蝦夷地に旅しているのが特筆され、その中で箱館(現在の函館で、私の故郷でもある)は当時人口25,000人で住民は不潔だと書いている。1868~74年の日本の出来事に対し当時の外国人の書いた類書にはない記載も散見され、興味深い。彼は後に中国公使も勤めた親中派であり、日本を嫌っていたようであり、三国干渉のときの立役者の一人でもある。
「幕末外交談」、田辺太一、坂田精一訳・校注、東洋文庫、平凡社、1966年
田辺太一(1831~1915)は外国奉行支配となりパリ万博において、薩摩藩出品をめぐってモンブランとやりあった。幕府側から見た幕末の外交交渉の内情(幕府や諸藩藩主の)について述べた得がたい書。洋銀の為替レートについての説明は秀逸である。また注も詳しくて非常に良い。黒船の来航で幕府側が決して周章狼狽していたわけではなく、ただ指導層が目まぐるしく変わって決断力に欠ける憾みがあったということのようである。
「モンブランの日本見聞記」、C・モンブラン、森本英夫訳、新人物往来社、1987
本書には3人のフランス人と1人のイタリア人の日本見聞記が都合4編収められていて、モンブランは1867年のパリ万国博覧会の出店をめぐり幕府と薩摩藩との間でひと悶着あったが、この時の薩摩藩の代理人を務めたので有名である。1861~62年来日。他にデュパン(1861年訪日)、ボヌタン(1886年訪日)、カヴァリヨン(1891年訪日、彼はイタリア人)で幕末明治の日本についての印象記を読むことができる。
設問)「患者の目が変だ(何かおかしい)」をロシア語にせよ。
(1) У больного глаза
что-то не то.
(2) Глаза больного
что-то ненормальные.
(3) У больного глаза
что-то сомнительные.
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(1)は「違う」という意味ですが、Это не та запись.(それは違う録音だ)という風に使います。目が違うというのは、義眼なら分かりますが、それならне теでしょう。(2)は目が異常だというのは、もともとなのか、そうでないのかが不明です。(3)は「疑わしい目をしている」は信用できないとか真偽のほどは疑わしいということですから、違います。私の答えは、У больного что-то с глазами. で、Что с вами (случилось)? の応用です。
Что-то странное с глазами пациента.
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正解です。ただстранноеは抜いたほうが自然です。
С глазами у больного что-то случилось.
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完璧な正解です。
Глаза у пациента кажется что-то странно.
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お答えでは主語と述語が一致していません。Глазаが主語なら動詞はкажутсяになるべきですし、кажетсяが挿入語なら、前後にカンマを入れるべきです。странноもそれによって、странными, странныеとなるはずです。しかし、お答えは状態を言っているので、同じ状態で結果の現存のような、何か動作があって、今このような状態になったというふうにしないと設問と合わなくなります。これは理屈ですが、こういう理屈を覚えなくとも、Что с вами (случилось)? (どうしたのですか?、あなたの身に何が起こったのですか?)という文だけを覚える(おぼえていらっしゃるでしょうが)のではなく、このような文を応用できるかを、常に考えておくことが必要です。
У пациента с глазами происходит что-то необычное.
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お答えは過程(現在進行形)示しているわけで、例えば、目に赤い出血の点が現れて広がってゆくとか、あり得ないとは言いませんが、現実的ではありません。происходитと необычноеを取るべきです。
それと、投稿者のみなさんの多くは、患者というとпациентと訳してきますが、医者が治療している患者という意味では正解ですが、硬い感じがします。больнойの方が広く使えると思いますので、自動的に患者と言えばпациент一本やりというのはどうかなと思います。いろいろ使い分けないと、ロシア語らしくなくなります。