2012年05月29日

●和文解釈入門 第375回

日本語の敬語はロシア語の体と似ている。どちらも外国人には理解が難しい。それでこの頃敬語を勉強している。その中で気がついたのだが、「声をおかけください」と「お声をおかけください」とでは、どちらが敬語として正しのだろう。ある企業では前者が規範という指導していると聞く。自分なりに双方の理屈を考えてみた。もともとこの動詞は「声をかける」(知らせる)という意味の熟語であることが、二重敬語の問題と相まって問題をややこしくしている。「敬語」(菊池康人、講談社学術文庫)によれば、尊敬語と尊敬語のように同じ種類の敬語が続くのを二重敬語として、過剰使用ということから避けよということである。ゆえに、「お読まれになる」や「お読みになられる」は、「読まれる」と「お読みになる」の二つの尊敬語が使われているからいけないということになる。一方「お荷物をお預けになる」では、「荷物」の尊敬語「お荷物」と「預ける」の尊敬語「お預けになる」が、それぞれ別々に尊敬語になっており、それは正しい用法であると書かれている。

 しかし、「声をかける」と「荷物を預ける」は同じではない。前者は熟語だが、後者は補語を変えることができ、「鍵を預ける」と言える。そのため「声をかける」を「お(ご)~くださる」という謙譲語Ⅰの命令形に直すと、「お声をかけてください」か、「声をおかけ〔になって〕ください」にしかならないという理屈になる。そのため一つ「お」を取らなければならないが、動詞の方は構文なので外せないから、名詞の方の「声」から取ったということなのだろう。ちなみに、最近は敬語を尊敬語、謙譲語、丁寧語の3つにわけるのではなく、謙譲語を二つに分け、丁寧語から美化語を分けて5つにするとしている。謙譲語Ⅰというのは「申す(普通は丁寧語のついた「申します」)のように1人称を絶対的に低めるが、謙譲語Ⅱは「申し上げる」のように1人称を相対的に低め、補語を高めるものである。
 
 一方「お声」にはの尊敬語(意味上の主語を尊敬する)と謙譲語Ⅰ(受け手尊敬)の意味があるが、この場合は動作の向かう先や者受け取り手を高めるものという謙譲語Ⅰの機能であろう。それゆえ、動詞が謙譲語Ⅰの「おかけ〔になって〕ください」となっているが、「荷物をお預けになる」が二重敬語ではないという理屈で、日本語としておかしくないことになる。ただ明らかな熟語を普通の補語 + 動詞とする見方自 体には大いに問題があるといえる。
最初の方は、敬語の作り方から見て理論的に正しいが、発話の最初に出てくる「声」が相手の「声」であることを考えると、「お声」としないと十分敬意が伝わらないのではないかという気もする。

設問)「常習的に規律を乱したり、常に不成績であれば、その研修生は帰国してもらいます」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年05月29日 06:05
コメント

Тот иностранный практикант, кто не соблюдает дисциплину как обычное явление и
всегда получает неблагоприятные результаты, вынужден возвратиться на родину.
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3つほど問題があります。вынужденというのは具体的な場合に使われるわけで、帰国せざるを得なかったという状況がすでに発生しているわけです。ところが設問はそういうふうになっていません。使うならвынуждатьсяと繰り返しの意味の現在形にすべきです。3つ目は帰国せざるをえないというのは自発的に帰国を判断するという意味で、「帰国してもらう」という訳を考えた結果だと思いますが、少し違うと思います。かといって帰国させるというのは研修生を派遣したところが言うべきもので、受け入れ側が言うべきものではありません。「常習的に」の訳もお答えでは、「よくあること、ありふれたこと、ありふれた現象」という意味になり、設問とは違います。私の答えは、В случае систематического нарушения дисциплины или постоянной неуспеваемости стажёр будет откомандирован в свою страну.
откомандирован = отозванで、отзывать/отозватьはリコール(召喚)するという意味でも使う。систематический = регулярный, постоянныйです。

Posted by ブーチャン at 2012年05月29日 07:07

В случаях повторных нарушений правил или постоянной недостаточной
успеваемости, практикант будет отправлен на родину.
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ほぼ正解なのですが、規律が規則になっているということと、отправлен на родинуでは「祖国に派遣される」ですから悪い意味はありません。ところが規律違反だから帰ってもらうというのは悪い意味です。それと個人的な見解ですが、родинаは祖国、故郷などのいい意味で使うのが普通で、こういう場合は別の単語に置き換えたほうがよいのではないかと思います。

Posted by メイ at 2012年05月29日 21:24

Если стажер регулярно нарушает правила или не успевает учиться, просим его уехать из страны.
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規律が規則になっているということと、если以下にбудетを入れないと、時制的におかしいと思います。述部は繰り返し(ないしは総称時、一般的な事柄)で、主部は具体的な事例を示す文というのは整合性がありません。それとお答えは国外退去ということであって、帰国という意味にはならないでしょう。успевать по математике(数学が得意だ)という語結合はありますが、不定形は取らないと思います。

Posted by Ml at 2012年05月30日 01:12

Стажёров, кто постоянно нарушают правила и получают плохие оценки, попросим уехать домой.

和文の主要な動詞は”もらいます”と捉え、попросимと完了体を用い、その他の動詞は動詞の名指しと捉え不完了体を使いました。
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非常によく考え抜かれたお答えだと思います。難を言えば規律が規則となっていることと、時制の問題です。お答えは、「今常習的に違反をしている人がいます。だからその人たちは帰国してください」という風に理解できます。しかもпросимではなく、попросимを使っているのは、この違いをよく理解されているようです。第40回の本文に書いたように、проситьの1人称は、попросим (попорошу)というのは警官などが使う言葉で、お願いではなく、丁寧な命令です。意味的には正しいのですが、民間人である工場関係者がこの動詞を使うのは適切かどうか疑問です。権威的な強すぎる感じがします。ただ、この点は勉強の成果が感じられます。будут нарушать дисциплину и получатьとすれば、「今後」という意味が出ます。こういう指示事項というのは、相手国に来た直後に、「もしこれから何か悪いことをしたら、かえってもらいます」というのが普通で、何回も規律違反をしているので、帰国してもらうというのは、罰を与えるのは当然でも、それがいきなり帰国となればやはり事前告知違反というように受け取られる可能性が多いと思います。あともう少しでした。発想はよいと思います。

Posted by asuka at 2012年05月30日 01:23
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