2012年05月28日
●和文解釈入門 第374回
体の本質を理解したからと言って、実際の会話での和文露訳において、正しい体を使ってロシア語が話せるわけではない。反射的にロシア語が口をついて出る練習が不可欠である。体の用法の中でも相性の悪いというか、不得意なものが当然あるはずである。本コーナーの項目にある短文をできるだけ多く暗記して、いつでも口をついて出るようにすることが必要である。体の用法を理解した上での暗記は反射神経を鍛えることにもなる。そのために用例はできるだけ短く、応用力のある豊富なものを配した。例文は日常会話、医療ロシア語、観光ロシア語、技術ロシア語、スポーツロシア語、ビジネスロシア語から広く渉猟し、実戦でも十分役に立つものばかりであると自負している。
ロシア語で話すというのと、会話で和文露訳をする(通訳する)というのを同じだと考える人もいるかもしれない。ガイドと通訳の違いである。名所を案内するときにガイドはロシア語で説明するわけだが、日本語の説明内容がそのままのロシア語では変なロシア語になるなと思えば、ロシアの習慣やロシア語にできるだけ違和感のないように変更する。そのロシア語を和訳したとすれば、日本語としておかしいということもありうる。通訳でも言っていることそのまま通訳すれば、表面的には正しくとも、言わんのすることとは違うという場合には、言わんとする本質に合わせて訳を変えるか、説明を加える。その他に通訳は露文和訳と和文露訳を交互にするが、ガイドは自分の頭の中での和文露訳がほとんどであるという違いがある。
この通訳とガイドの違いというのを理解せずに、ロシア語が話せれば通訳もガイドもできるというのは考え違いである。両者とも内容の本質の正確さを目指すのだが、できるだけ余計な説明とかは少なくして、純粋に表面上の訳が、言わんとすることにできるだけ近づけるように努力する必要がある。それを究めるためには体の用法や類語に対する理解、日本の文化、通訳する相手に対する理解が欠かせない。
設問)「助けが必要であればお声をおかけください」をロシア語にせよ。
(1) Позовите меня, если вам нужна будет моя помощь.
(2) Обратитесь ко мне, когда вам понадобится моя помощь.
-----------------------------------------
正解ですが、最初のは時間的制約がなく、2番目の方が順次的用法で、必要ならすぐという感じが出ます。私の答えは、Просим обращаться к нам, если Вам потребуется помощь (содействие).
если以下は完了体未来形の例示的用法である。またобращатьсяが不完了体なのは、不定法なので繰り返しを示す意味である。Вамと大文字になっているのは、ビジネスメールやビジネスレターにおいて相手に対する敬意を示している。
Если нужна помощь, обращайтесь.
-----------------------------------
正解です。ただ意味が形式を決定するわけで、不完了体というのは繰り返しですから、お答えは一般的には世の中こういうものだという感じで、平板なトーンです。完了体を使うと生き生きした感じが出ます。
① Если у вас будет нужна помощь, обращайтесь.
② Если вам понадобится помощь, обращайтесь.
今回もまた試行錯誤です。洋服売り場などでの売り子の発した会話のつもりです。①は一般的な含みのない言い方、②はおそらく完了体の例示的用法ではないかと考えました。売り子の期待を込めた発話のつもりでの回答です。最近は売り子があれこれ説明しながらうるさく付きまとうのを嫌う傾向にあるようなのでむしろ①の方が適切かもしれません。
--------------------------------------
2番目のは正解ですが、最初のは時制がおかしくないでしょうか?前提の部分が未来で、主部が現在形(繰り返し)となっています。будетを取るか、主部を完了体未来形に代えれば正解です。
Когда вам что-нибудь помочь, попросите меня.
----------------------------------------
когда + 不定形だと、「いつ~すべきか」という意味で、仮定の意味にはなりません。ただ完了体を使い、例示的及び順次的意味を出そうとしたことは評価できます。もうひと手間かけて、述部を節にすれば正解でしたのに、惜しいところです。しかし、こういう発想が大事で、ロシア語を話す場合、具体的な人(ロシア人)に使うわけですから、例示的用法を使うのだという考え方が大事だと思います。それにもまして重要なのは、何を言いたいかによって、体は変わる可能性があります。それを決めるのは話し手なのであり、その武器(体)の用途を十分理解することが必要です。