2012年05月26日

●和文解釈入門 第372回

*「後は昔の記他」(林董回顧録)、由比正臣校注、東洋文庫、平凡社、1970年
 林董(1850~1913)は1866年の幕府の英国留学生で後、外交官。明治の条約改正についても詳しい。伊藤博文や陸奥宗光系統の人なので、山県有朋系統の青木周造自伝や陸奥宗光の蹇蹇録なども参考にする必要がある。佐倉の木内宗五郎は幕府に直訴して子供ともども磔になったが、長子(12歳)のみ男で、残りは女子(8歳、6歳、4歳)だったが、当時は女子は死刑にできなかったので、わざわざ男子として処刑したなどと書いてあり、佐倉の堀田家には宗五が祟ったという言い伝えもあるという。1860年の生麦事件については殺されたリチャードソンより数分前に島津公の行列で下馬したヴァンリード(ジョセフ・ヒコの旧友)という米国書記官には何事もなかったが、日本人を中国人と同様と見て不遜だったリチャードソンは下馬せず、それで奈良原喜左衛門の初太刀を浴び、久木村利休により深傷を負い、死亡したという。ポンぺもリチャードソンの伯父から彼が傲慢だったために報いを受けたのだという話をオランダでの汽車の中で聞き、同じようなことを書いている。1864年のボールドウィン中佐・バード中尉の暗殺についても下手人は清水清次(晒し首の写真が残っている)ではなく、本当は彼は別件の強盗強姦事件で死罪となるべきところ、武士として潔く死ねと因果を含められたからとも聞く。
大津事件の背景についても書いてあり、明治までは英国の皇族が訪日しても歓待したが、小松川殿下訪英の際はつれなくあしらわれ、それでコンノート卿が訪日した時にあまり歓迎しなかった。それでニコライ皇太子が来日の折は、駐日ロシア公使夫人が、身分の関係でロシア宮廷には拝謁できなかったので、手柄を立てて拝謁できるようにするため、熱心に歓待を、夫を通じて勧めた。それで、英国側が、皇太子は日本占領の下見に来たなどと流言を流したために、それが新聞にも取り上げられ、それを津田が信じたことによるという。大津事件については小説形式で書いた吉村昭の「ニコライ遭難」がよい。林の兄は松本順(時に良順)で、姉ふさは山内作左衛門(幕末のロシア留学生)に、妹多津は榎本武揚(幕末のオランダ留学生、後外務大臣)、妹貞は赤松則良(幕末のオランダ留学生)に嫁いだ。父は順天堂塾の創始者であり、義父は順天堂病院を創立した。

「アメリカ彦蔵自伝」(2巻)、中川努・山口修訳、東洋文庫、平凡社、1964年
 初出は1895年。ジョセフ・ヒコ(1837~1897)。1850年江戸の帰りに遭難。救助されサンフランシスコへ。人柄のせいかいろいろな人に親切にされ、アメリカの学校で2年ほど学ぶ。1854年受洗、1857年アメリカに帰化。1859年帰国。神奈川領事の通訳を1860年までと1862~63年勤め、その後はビジネスを始める。下関戦争のときはアメリカのワイオミング号に乗船していた。その実見談は面白い。上巻は自分の経験談が中心で面白いが、下巻では風聞や当時の新聞に載っていた記事が多い。ただ校注が詳しいのでそれはそれで勉強になる。当時の政治状況をアメリカ人側から語っているのも興味深いが、当時の日本について当たり前のことは日本人なので、触れられていないのは残念である。ヒコは3人の米国大統領と会っている。ピアース、ブキャナン、そしてリンカーンである。リンカーンと会った唯一の日本人と言える。主家のために、あるいは家系を守るために責めを負って腹を切ることを、英語で当時happy dispach「有難きおいとま」と名付けたという。これは日本語にないと書いているが(オールコックも同様に書いている)、要は詰め腹であり、もう少し詳しく言えば商腹(あきないばら)である。

設問)「どちらの目の見え方がよくないですか?」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年05月26日 06:10
コメント

Который из обоих глаз имеет слабое (плохое) зрение ?
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どちらがいいか悪いかと聞いていのですから、比較級を使わないいけないと思います。私の答えは、Каким глазом вы видите хуже?

Posted by ブーチャン at 2012年05月26日 06:58

Какой глаз у вас видит хуже?
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正解です。

Posted by Ml at 2012年05月26日 20:58

① Какой из глаз хуже видит?
② Каким глазом хуже видите?
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正解なのですが、日本語では人称の暗示性というのがあり、特に指示がなければ、会話では、この場合あなたに聞いていると考えるのが普通です。2番目の方が主語は二人称であることが分かるのでよいと思います。最初の文のような言い方はロシア語ではあまり言わないと思います。

Posted by メイ at 2012年05月26日 23:29
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