2012年05月22日
●和文解釈入門 第368回
書くこともなくなったので、1年前に日本の心というコーナーでガイドが読んだ方がよいと思われる本について書いたが、その続きを時々は書いて見たい。
「幕末出島未公開文書(ドンケル=クルチウス覚え書)」、フォス美弥子編訳、新人物往来社、1992年
1852年から59年まで日本に滞在した、最後のオランダ商館長であり、初代オランダ理事官ドンケル・クルチウス(1813~79)の未公開文書。大通詞西吉兵衛の死の様子、プゥチャーチン来航など当時長崎奉行に外国人応接の助言をしていたドンケル・クルチウスが本国に送った覚え書きの翻訳である。下田村でのロシア人一行と日本人の触れ合いから、「ロシア人は概してアメリカ人よりも日本人の気質に合っているようだ。ロシア人は礼儀正しく、陽気であり、アメリカ人は横柄である」と書き、プゥチャーチンは漆器を熱望しているとも書いている。Opper-banjoostは大検使または検使のことだとある。クルチウスは踏み絵を止めさせた。また幕末に駐在していた欧米の外交官は為替差益でかなり儲けたが、そういうことに外交官として関わらなかったのはこのクルチウスとプロイセンのブラントだけだったという。非常に清廉潔白な人柄のようである。
「オランダ領事の幕末維新」、A・ボードウァン、フォス美弥子訳、新人物往来社、1987年
1859年から1874年まで滞日したオランダ貿易会社代表兼領事アルベルト・ボードウァン(1829~1890)の私信105通を紹介したもの。兄のアントニウス・ボードウァン(1820~1890)も1862年から71年まで滞日、ポンぺの後任でもある有名な医者で、上野公園設立を実現させたので有名である。弟である彼は「女の着物は膝のあたりで細身にするように重ねるので、歩きにくそうです。内またで歩くので身のこなしが優雅には見えません。私は彼女たちを美しいとは思いません。たいていはかなり色白で、両頬に紅をはいています」とあり、ポンぺとは違う日本女性観を持っている。彼は一生独身だった。ポンぺについても「かなりお金を蓄えたようです」とか、シーボルトについても「老獪な古狐」と評するなど私信ならではの味わいがある。
*「ポンぺ日本滞在見聞記」、ポンぺ・ファン・メールデルフォルト、沼田次郎・荒瀬進共訳、雄松堂出版、1968年
1857年から1862年まで滞日したオランダ海軍軍医ポンぺ(1829~1908)の日本見聞記。帰国後榎本武揚などオランダ留学生の面倒もみた。本書の前半はペリー来航前後と帰国直後までの日本の政治的出来事について述べ、後半で長崎医学校(1857年創立)や1861年に設立した日本最初の西洋式病院に触れていて、政治、貿易などはドンケル・クルチウスが書いていいような内容である。本書執筆の動機にオールコックやハリスなどの幕末における日本開国に果たしたオランダの役割の無視があったと思われる。スイス、ポルトガル、デンマークなどの日本との通商条約についてもオランダは陰日向によく支援していることは確かである。病院関係は松本順(時に良順)がよく手伝ったという。日本には胸部疾患が多く、これは着物がまえをはだけているからだろうとか、心臓病が多いのは強い酒の飲み過ぎ、熱い風呂に入ること、放蕩のせいであると書いている。生活習慣(運動不足や寄生虫)による眼病のせいで盲人も多いとも書いている。売春禁止の提言をしているのは当時としては目新しい。ただ貧乏が売春の原因であると指摘しているが、禁止してそれでどうするのかというのは書いていないが、このようにあげつらうのは多くを求めすぎるのかもしれない。コレラ対策、死体解剖実習など日本における医学上の功績は大きい。ただポンぺの遠出の範囲は鹿児島をカッテンディーケと共に訪れたのを除けば出島のみで、その実際の日本見聞の範囲は狭いということを理解しておく必要がある。岩倉具視の米欧使節がオランダを訪れたときにライデンを案内した。
設問)「その費用は貴社負担となります」をロシア語にせよ。
Эти расходы должны
быть за ваш счет.
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「なります」は受け止め方によって義務ととらえることもできますが、会話でдолженを使う場合は注意が必要です。かなり強い言い方なので、実際に相手が何かをする義務があったととしても、喧嘩をするつもりなら別ですが、できるだけ使わなくてもよいならば使わないようにするのが普通です。私の答えは、3つあって、いずれも可能です。
Расходы будут отнесены на ваш счёт.
Расходы будут за ваш счёт.
Расходы будете нести вы.
нестиも運動の動詞だが、上の例は機能動詞であり、文の中心的な役割を果たしているのは貴社であり、その次に重要な語はрасходыであって、動詞ではないことは明らかである。それで不完了体命令形が来ている。運動の動詞の場合いきなり不完了体未来形は使いにくいが、絶対来ないわけではない。例えば、
(普通列車でお行きになるのですね)Вы будете ехать в обычном пассажирском поезде.
普通列車に文の中心的意味が来ているから不完了体未来形が使われている。
「費用を負担する」は他にも、брать на себя расходыがあり、完了体を使う必要があればвзять на себя расходы, понести расходыがある。
Расходы несёт ваша компания.
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語彙も構文も正しいのですが、時制が違います。お答えを和訳すると、「費用を払うのは(いつも)貴社です」と繰り返しの意味にいしか取れません。нестиにも予定という意味があるかもしれませんが、負担するという意味は、運動の動詞というよりは機能動詞です。仮に予定の意味があるにせよ、未来だということを示す文脈がないと、現在の時制であれば繰り返しの意味で理解するのが普通です。それと「~負担となります」というのは、日本語では今現在の時点というよりは、一瞬後かもしれないとは言え、具体的な未来の1回ないしは未来の繰り返しです。そうなると未来時制を使うことになります。ちなみに「~ことになります」というのは、そう決まっているということで、「~すること」という命令(義務)の尊敬語です。
Расходы будут за ваш счет.
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正解です。нестиを使って不完了体未来形にできれば、この用法のマスターということでもっとよかったのですが。