2012年05月16日
●和文解釈入門 第362回
不完了体未来形についてよく理解している人が少ないようなので、念のため、会話における和文露訳で不完了体未来形を使う基準を書いておく。
・論理的アクセントが動詞にないことだが、動詞は動作の有無の確認(名のみの存在と考えてもよい)のみの役割は果たす。
・動作の有無の確認する場合(特に疑問文では分かりやすいし、出やすい)、これは論理的アクセントを示すような補語がない場合の見分け方でもある。
・使おうと思う動詞が瞬間動詞ではないこと。つまりニュアンス的にある程度は過程の意味を持つ動詞は不完了体未来形が使える。瞬間動詞 (разбить など)は、論理的アクセントが来る動詞だからという考え方もできる。瞬間動詞や、他の動詞でも完了を強調する場合は、論理的アクセントが来るのだから、その場合は完了体未来形を用いる。
・機能動詞は名詞や名詞句との組み合わせなので、動詞そのものは動作(する)という意味だけで、動詞句の意味は名詞ないしは名詞句が担っているので、完了を強調するのではない限り、未来では不完了体として使われることが多い。機能動詞は不定法では具体的1回行為なら完了体不定形との結びつきが多く、繰り返しなら不完了体との組み合わせが多い。
・予定の意味の不完了体現在形を使うのは、運動の動詞など不完了体未来形では使うのに制限がある動詞とか、近接未来で、動作が起こるのが当然という場合に使われることが多い。そうでない場合は不完了体未来形か、文脈によって完了体未来形を使う。これは未来の意味の副詞がないときや、前後が予定の意味の文脈でない場合に、不完了体現在形を使うと繰り返しの意味と判断されるのが普通で、意味に曖昧さが出るからだと思われる。
本来は使われる動詞が動作の有無の確認の場合は不完了体未来形を使うという事なのだが、(予備品をご注文なさいますか?)Вы будете заказывать запасный части? のような疑問文でなければ、平叙文では特に動作の有無の確認なのか、そうでないのかが分かりにくい。動作の有無の確認というのは動詞が叙情的ニュアンスを持たないということで、文中の動詞に論理的アクセントが来ずに、補語や主語に来るということになる。論理的アクセントがどこにくるかを見た方がどの体を用いるべきかが分かりやすいので、不完了体未来形を使うのは、動詞に論理的アクセントがないときと目印にしたわけである。要は「文の中の動詞に論理的アクセントが来なければ不完了体未来形を使う」という一点に尽きる。この点をよく理解してほしい。過去の時制における刺身のつまのような用法と同じ考え方である。
設問)「みぞおちに不快感(特に食後胃もたれや胃が張った感じ)がありますか?」をロシア語にせよ。
У вас есть какие-то дурные симптомы под ложечкой, особенно желудок плохо переваривает или расширяется
после едой ?
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不快感とあるのですから、симптомы(症状)ではありません。едойはедыのタイプミス。расширяетсяは膨らむという意味ですが、それだけでは悪い意味はありません。плохоがかかっているというなら、膨らみ方が悪いとしか取れません。私の答えは、У вас есть неприятные ощущения в подложечной области (чувство тяжести и переполнения желудка особенно после еды)?
У вас есть ощущение тяжести в подложечной области?
(особенно ощущения тяжести, вздутия живота после еды )
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大体いいのですが、漠然と有無を聞いているわけで、ощущения (чувства)と複数になります。不快感は不快な感じですから、ощущение тяжести(重たい感じ)だけではありません。вздутиеも膨張ということですが、胃が膨らむこと自体は自然のことですから、過剰なという感じを持たせる必要があります。同じ文でощущение тяжестиを二度繰り返すのはよくありません。
Под ложечкой остаётся неприятность, особенно после еды?
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発想は悪くないと思います。一応医者と患者の会話を想定していますから、意味上の主語を明示した方が丁寧な感じが出ます。неприятностьは不快なこと、不快な出来事、ということで、複数形で不快な言葉(言辞)という意味があります。不快感という意味も含まれるとは思いますが、不快なもの(ガンや腫瘍)という意味にも取れます。設問には不快感とあるのですから、それを明確にすべきです。それと胃もたれや胃が張った感じが訳されていません。
不完了体未来形がなかなか理解できないでいる一人です。説明を読んだ直後は理解できたつもりになっているのですが、いざ自分で使う時になると、予定の意味なのか、意向の提示なのか、近接未来で不完了体現在が使えるのかどうかなどで頭の中が混乱してしまいます。しかも、何度かここで質問しようかと思ったのですが、自分の理解できない部分を質問にまとめることさえできませんでした。こんな状態では、会話で使う以前ですね。何度も何度も頁をさいてご説明してくださっているさとうさんには何とも不肖の弟子です。
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現実的で簡単な見分け方としては、
1) 運動の動詞には不完了体現在形の予定の用法を使う。
2) 動作の遂行を強く意味するなら、完了体未来形を使う。
3) 論理的重点が動詞でない場合(主語や補語にある場合)不完了体未来形を使う。機能動詞では原則的に不完了体未来形を使う。
4) 意向(~するつもりである)で不完了体未来形を使うことを考えない。どうしても意向を使いたいなら、собираться + 完了体(繰り返しや動作の名指しなら不完了体)を使う。なぜそういうことを書くかというと、「~します」と「~するつもりです」の区別が、日本語でもつきにくいということがあります。「~します}というのは自発的な「~するつもりである」ということが多く、そうであれば、周りの雰囲気を読まないわけですから、完了体未来形が来ます。
意向の提示については誤解を招くようなことを書いて申し訳なく思っております。ただこれはこれまでの体の用法の参考書に書かれていることです。これを強調することは、不完了体の本質とは相容れないものだという考えが強くなってきました。不完了体未来形で「~するつもりである」と訳せるものは、周りの雰囲気に沿ってという状況があるわけです。
わかりやすいまとめをありがとうございました。こうしてまとめていただいたものを見ると、自分でも使いこなせそうな気になるから不思議です。
1)ですが、運動の動詞であれ345回で教えていただいたようなその他の動詞であれ、予定で使う時には未来が特定できる言葉と共に使うか、その場の雰囲気が予定(あるいは未来の着手)以外に考えられない場合(ドアを何度もノックされて Иду, иду と答える場合など) にしか使えないということですね。実践では1)か3)かで迷う場合もありそうですが今ちょっと例は思いつきません。それにしてもやっぱりこのあたりはかなり難しい分野ですね。出来の悪い生徒ですが、ラスードヴァ先生のことばに少しだけホッとさせられます。
Взаимные отношения глаголов настоящего и будущего времени несовершенного вида и будущего совершенного вообще очень сложны.
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後は運動の動詞では、когда, еслиとの結びつきのときに不完了体未来形が出ます。