2012年05月14日

●和文解釈入門 第360回

体の用法の違いについては、日常(不完了体)か、非日常(完了体)か、動詞に論理的アクセントが来なければ(動詞が従なら)不完了体、来るなら(動詞が主なら)完了体とか、流れのままなら(回りの雰囲気を読むなら)不完了体で、新しい事態が起こるなら完了体とか、客観的なら不完了体、主観的なら完了体であるなどと書いたが、その使い方を間違えると、その文を聞いた人は、程度の差こそあれ、違和感を感じる。単なる文体上の差に留まるのもあれば、理解の許容範囲を超えるものもある。そのため、作家によってはわざと体を入れ替えて、粗雑な人柄を表したり、ユーモラスな表現として工夫したりする手だてとすることもある。

 「敬語」(菊池康人、講談社学術文庫、1997年)の中に、敬語をわざと間違えて使う事により、文体的意味を変えている例が挙げられている。「とんでもないことをしてくれた」や「先輩がせっかくいらっしゃったんだ、酒ぐらいふるまえ」などである。日本語には体というものはないが、ひょうきんさ出したり、深刻さを和らげたりなどという、文体の差を変える一つの手段として敬語が使えるわけである。外国人が日本語を話す時に敬語を間違っても意味が通じる限り、特に咎めだてをすることはしない。しかし変な日本語だなという感じはつきまとうし、外国人でも敬語をうまく使えば、かなり日本語ができるという人だという印象を抱くことになる。

 体の用法もそれと同じではないだろうか。長年ロシア語に携わっていても、言葉というのは基本的意味が通じればよいのだと、体の用法に無頓着な人もけっこういるようだが、日本語の敬語に置き換えてみれば、そういう考え方は間違いであることが分かる。そういう人たちは、語彙も多く、体の用法の参考書を一読するだけで、体の用法をマスターすることができるのだろうから、その手間を惜しむというのは、誠に残念な話である。

設問)「設備の通関をするのは貴社ですよ」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年05月14日 07:32
コメント

Мы напоминаем, что Ваша фирма должна заниматься таможенным
оформлением оборудования.

Процедура таможенного оформления оборудования будет произведена вашей фирмой оборудования.
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最初のはビジネスレターではнапоминатьを使う督促構文というもので、レベルの高いものです。設問の強調構文を理解されており、それをдолжна + 不完了体(切迫と未来における繰り返しの組み合わせ)で示しており、正解は正解です。ただこういう高度のテクニックを使わざるを得ないというのは、体の用法の基本的な意味や本質の理解がまだ十分ではないのではないかと思います。それとお答えは「通関の手続きをする」ですが、厳密に言えば「通関する(通関の手続きをして貨物を受け取る」とは少し違います。
 二つ目のはоборудованияが二つありますが、最後のは消し忘れでしょう。具体的1回行為を示しています。これは間違いではないのですが、ご理解の通り、貴社が強調された文です。動作の完了(未来における結果の存続)を強調したものではありません。こういう文に完了体を使うのは、ロシア語としては正しくとも、設問の文意をとらえたものとは言えません。
 私の答えは、Таможенную очистку оборудования будете проводить вы.
 文の論理的アクセントがвыに来ているので、不完了体未来形を使う。さらにвыを文末におくことで強調している。動詞は機能動詞なのでますますその感じが強い。動詞がないと文として使えないので、動作をするということだけで、意味としての機能を果たしているのは名詞句であることに注意。動作の完了を強調するのでない限り、不完了体として用いられることが多い。設問は未来における1回の動作にも、未来での繰り返しにも使えるようになっている。

Posted by ブーチャン at 2012年05月14日 07:53

Это ваша компания проводит таможенную очистку оборудования.

この話が出る前に、すでにどちらが通関手続きをするかが問題になっているのではと考えて現在形の予定の用法を使いました。(スーツケースと共に追い出されそうな夫婦の会話のアネクドートを思い出しました)
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強調構文としてэтоを使っているのですし、未来ということも理解されています。しかし、ロシア語だけみると、非常に紛らわしい文です。未来を示す語句がない限り、現在時制の繰り返しと考えるのが普通です。設問は未来における単一の行為か、未来における繰り返しです。ご回答を予定の意味と取るのはこれだけでは無理です。例えばЯ обедаю.(いつも昼食を食べる)だけを見て、予定の意味に取れというのは無理というものです。Я обедаю через час.というような文言がないと、予定の意味には取れないと思います。こういう交渉ごとで曖昧な表現は禁物です。
 そうはいっても感覚的か理詰めかは知りませんが、不完了体を選択したというのは、体の用法が身についていることが分かります。上記については、理解するのは大したことではありません。ただ不完了体未来形は非常に理解が難しいし、交渉事ではよく使います。これをマスターすることが、体の用法の極意につながりますから、頑張ってください。

Posted by メイ at 2012年05月14日 23:02

Таможенным оформлением оборудования занимается ваша компания.
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貴社を最後において強調していますから、設問が強調構文であることはご理解されています。メイさんと同様заниматьсяを予定の意味で使ったのでしょうが、同じくこれだけでは、現在時制の繰り返しとしかとれません。
 日本語の「する、します」は動詞や助動詞として用いられた場合毎日とかいつもという副詞がつかなければ、未来の動作として理解するのが普通だと思います。「通関するよ、通関します」と言えば、これから通関するという意味だと思います。

Posted by Anonymous at 2012年05月15日 00:20

ご無沙汰しております。
本文の敬語の間違い?が気になって久々に投稿させていただきます:

(お題)
設備の通関をするのは貴社ですよ
Таможенную очистку оборудования производите Вы.
・通関(手続き)
「~する」произвестиと相性の良さそうなочисткаを充てました。
・設備
оборудование…は集合名詞で単複の使い分けがない?のでしょうか
いずれにしても発話者にも聞き手の双方に
同じ"あの"設備!と具体的に念頭にあると思われますので
単数が適すると考えました。
・動詞производить
文の重点が「貴社」にあること
通関手続きの分担に関する取り決めを思い起こさせるような言い方であることから見て
不完了体現在形による予定の用法が当てはまるのではないか、と考えました。

さて
本文の
「先輩がいらっしゃったんだから酒でも…」
は先輩ご本人の発言でしょうから意味もわかるのですが
「とんでもないことをしてくれた」はどう崩れているのでしょうか。
とんでもないことを「やらかす」か何か被害を思わせる述語が来るべきところへ
「してくれる」と恩に切るような言葉が入っている、という違和感でしょうか。
これが気になって気になって…
でもこれだけコメントするのも失礼ですから久々に参加させていただきました。
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設問のご理解はその通りです。оборудованиеは技術関係で具体的にいろいろな設備を想定する場合は複数になりますが、それは例外のようなもので普通は単数形で表します。ご回答はメイさんと同じ間違いで、これでは現在時制の繰り返しと取られるのが普通です。予定という用法は現在時制の過程から派生したものと思われますし、形状的にも現在時制の繰り返しと同じです。しかし、繰り返しのの方が不完了体としてより本質に近い用法だということはご理解されるでしょう。派生的な予定の意味をはっきり打ち出すには、前後の文脈や、何か未来を示す副詞が必要です。これがないと繰り返しの意味に取るのが普通です。
 不完了体未来形は体の用法でも一番難しいものです。これがマスターできないといつもでたってもロシア人から、日本語でいえば正しい敬語が使えない外人ということになります。不完了体の本質については理解されているわけですから、あともう少し、この最後のヤマを越えるようひと頑張り願います。通訳やガイドでもこの不完了体未来形を自在に使える人は、私の知る限りあまりいないように思います。ロシア人にロシア語がうまいと思われるかどうかの分かれ目だと思いますから頑張ってください。
 「とんでもないことをしてくれた」というのは「とんでもないことをした」というべきところに敬語の「くれる」という恩恵の授受という表現をつけて皮肉っていることになります。
 最後に、производитьが予定で使えるかですが、私の収集にはありませんが、使えるような気はします。ただ個人的にはそういう用例がない限り使うつもりはありません。使えても近接未来だとは思いますが。

Posted by コーシカ at 2012年05月15日 01:41

Это Вы будете заниматься таможенным оформлением оборудования.
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正解です。よかった。だれも正解しないので、私のこれまでの不完了体未来形の解説に重大な欠陥があるのかなと非常に不安に思っておりました。他の方が予定の意味で理解されているというのは、不完了体は不完了体ですから救いは救いです。いずれにせよ、第300回の表の未来時制は大幅に書き換える必要がありそうです。

Posted by Ml at 2012年05月15日 03:47

お返事ありがとうございます。
敬語の崩れの謎もすっきりしました。

300回の表を見直しながら、なぜбытьが要るのかを自分なりにまとめてみました:
・文の重点は「貴社が」通関する、にある
・よって動詞の役割は軽く、不完了体が適する
・通関手続き自体は未来の事柄
・しかし文中には未来を特定する要素がなく、不完了体現在による未来を表すには不十分
 (現在における繰り返しと取られてしまう)
・よってбытьの未来形を用いる
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その通りです。次回の本文に私なりにまとめましたので参照ください。いずれにせよ第300回の表の未来時制は大幅に改訂予定です。

Posted by コーシカ at 2012年05月16日 01:57
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