2012年05月13日

●和文解釈入門 第359回

通訳やロシア語で会話をする際に、瞬間的に完了体か不完了体かを決めなければ、正確な和文露訳ができないことは前に述べた。その目安として、日常(不完了体)か、非日常(完了体)か、動詞に論理的アクセントが来なければ(動詞が従なら)不完了体、来るなら(動詞が主なら)完了体とか、流れのままなら(回りの雰囲気を読むなら)不完了体で、新しい事態が起こるなら完了体とか、客観的なら不完了体、主観的なら完了体とか、それらの組み合わせとか、自分なりにいろいろな指標が考えられる。体の本質は一つでも、それを多面的に表現できるということでもある。

 最近通訳してみて思うのだが、通訳する瞬間にどちらの体を使えばいいかはだいたい分かる。そのときに上記の目印が頭に浮かぶのかと言われれば、多分浮かんでいないと思う。なにせ40年ロシア語をやっているので、覚えている例文もかなりの量である。だからそれらの文例のおかげで、自分なりにどちらかの体を選択していると思う。体の選択がほぼ自動的になってきていて、ロシア人に限りなく近づいてきているのである。これは私だけではなく、他の通訳の人も同じだろう。例文を多く覚えることと、恥を多くかくことでみんな会話ができるようになって来るのである。

 このように、会話をマスターする上で役に立つ伝統的な例文丸暗記法にも大きな欠点が二つある。一つは習得に時間がかかるということである。10年、20年、30年、40年と完全を目指すならきりがないことになる。二つ目は、体の用法を決める拠り所(例えば第300回の表)がないので、100%完全に体の用法を習得できたどうかがいつになっても分からないということである。多くの例文を覚えるにつれて、似たような文で完了体と不完了体を両方使う例文がいくつも出てくるのである。同義だと決めつけるならそれはたやすい。しかし、それではロシア人からは直されることもある。直されてもなぜ直されるのかその根拠が分からないから、次にも同じようなミスをする可能性がある。

 恥をかけばその前後の文脈も覚えているが、普通は例文だけを暗記するので、前後の文脈はとっくの昔に忘れてしまっているし、例文第一だから、前後の文脈まで頭においておく余裕はない。結局肝心なところはロシア人に聞かないと分からないことになるし、そのロシア人の文脈の解釈もいろいろで、ロシア語の体の用法の研究家ならともかく、その文が正しいかどうかは言えても、ロシア語上級者にどのように体を区別しているのかを教えることができないのである。

 そこで、40年かけて諸先生の体の用法の参考書を基に自分なりに体の用法についてまとめたものが第300回の表である。完全なものではないので、投稿者からのフィードバックを参考にして、ほぼ毎日手を入れている。自分が体の用法について何か疑問が起こった時の拠り所となっている。

 話は戻るが、体の本質を理解してから語彙を覚えた方が、むやみに例文を暗記するよりは会話の上達が早いと思う。これは体の本質(体の仕組み)を体系的に理解しないで、ただ「こういう体の使い方は間違いである」というような個別的な知識を寄せ集めても役に立たないし、応用力も身につかないからである。しかし、それを自分では実証できない。上に書いたように過去の例文が無意識のうちに顔を出すのだ。結果オーライという事で自分についてはいいのだが、若い学習者のみなさん(ロシア語をやっている人はほとんど私より若いだろうから)に、是非このような体の本質を先に理解するという学習法をやってみてほしいものである。私が死ぬまでに、この方法が効果があったと言ってくれる人が一人でも出てくれば、嬉しい限りである。中級者以上の方は私と同様この方法の効果を実証できないとはいえ、効果はすぐ表れると思うし、なによりもロシア人に頼らずともどちらの体を使えばいいかが判断できるようになるのである。

設問)「2012年2月15日付貴信拝受。(その中で)発電機の故障につきご連絡いただき、また故障した発電機の不具合を速やかになくすようにとのご要求がなされております」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年05月13日 08:22
コメント

Настоящем мы подтверждаем получение Вашего письма, в котором Вы извещаете нас о
неисправности генератора и Вы
требуете немедленно отремонтировать вышедший из строя генератор.
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惜しい。日付が抜けているのと、凡ミス(Настоящимが正しい)がなければ正解です。Настоящимは Настоящим письмомが省略されたもので、「茲(ここ)に」という意味です。私が最初の駐在の時に、Станкоимпорт(工作機械輸入公団、ソ連時代の貿易公団の一つで、商社機能を果たしていた)の人から個人的にビジネスレターの添削指導をつけてもらっていたことがあります。そのときに、公団内部のビジネスレター教本には、無駄な表現はできるだけ省けとあり、そのやり玉に挙げられていたのが、Настоящимで、こういう冗長な表現をなくせという指導を受けました。しかし、今でもこういうレターやメールを見ることはありますから、本人の考え方次第です。извещатьは硬い表現です。またизвещать, уведомлять はистинность информации(情報の正しさ)を強調しますので、間違った情報と一緒に使うのは違和感があり、その点сообщатьの方が広く用いられます。
 私の回答は、Мы получили Ваше письмо от 15 февраля 2012 года, в котором Вы сообщаете о выходе из строя генератора и требуете, чтобы мы немедленно устранили дефекты, вызвавшие выход генератора из строя.
ビジネスメール(レター)からの出題。完了体の結果の現存と動作遂行動詞の組み合わせを使ったビジネスメールで一般的な書き出しの部分である。Мы подтверждаем получение Вашей почты (Вашего письма)〔貴メール(レター)の受け取りを確認します、確かに受け取りました〕で始めても同義である。拝受とあるから、いい知らせならС благодарностью получили Вашу почту (Ваше письмо)とかС радостью подтверждаем получение Вашей почты (Вашего письма)としてもよいのだが、設問のように悪い知らせなら、特に有難がる必要はないわけである。こういう形式的な文言は、もっと省略して、В своей почте (своём письме) от 15 февраля 2012 года Вы пишете о выходе...や、Своей почтой (Своим письмом) от 15 февраля 2012 года Вы пишете о выходе...とする方法もある。

Posted by ブーチャン at 2012年05月13日 09:54

Мы получили Ваше письмо от 15.02.12, в котором Вы сообщаете о
неисправности генераторов и требуется немедленное устранение
дефектов испорченных генераторов.
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ほぼ正解です。требуетсяを требуетеにしないと主語が不明です。ただそういうのは重箱の隅をつつくようなもので、ここまで書ければビジネスレターについては卒業みたいなものです。推測するに、ビジネスでは相手を直接の動作主にするのは失礼という意識があるのかもしれませんが、ことクレームとなると、相手の責任を明確にして損害賠償をするということですから、主語を明確にする必要があります。それと同じ文で片方の動詞の主語がвыで、残りの主語が無人称文だと要求しているの別の会社ということになり、設問と意味が食い違うことになります。

Posted by メイ at 2012年05月14日 00:27

Пятнадцатое февраля двухтысячи двенадцатого года получил сообщение от вас о неисправности электронного генератора, в котором тревуете скорее выяснить его неисправность.
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ご回答を読むと、ビジネスメールを一生懸命作ったのだというひたむきさは感じます。こういう努力が上達する秘訣です。ビジネスレター(メール)には約束事がいくつかあるので、ご回答に基づいてその間違いについてコメントします。
1) 2012年2月15日付
2012年2月15日に発信した(メールやレター)という意味で、ロシア語ではот(英語ではofやdated) + 生格を使います。ご回答のような受け取りの日ではありません。無論レターの日付自体は主格で書きます。
почта (письмо) от пятнадцатого февраля две тысячи двенадцатого годаとなります。2012年の2千年の部分は個数詞の主格がそのまま来て、それ以降が順序数詞として格変化します。
2) электронныйというのは「電子の」という意味です。発電機はгенераторで、электронныйとは結び付きません。
3) выяснитьは「明らかにする」、つまり原因を究明するということですから、故障を直す、前の段階です。
4) требуетеのスペルミス
5) Выはビジネスメールでは文中でも、その変化形も含めて、敬意の念から大文字で始めます。

ビジネスロシア語の入門書については、私が書いた「ビジネスロシア語」(東洋書店)があります。図書館でおいてるところもあるでしょうから、ご一読ください。ビジネスロシア語の約束事といっても、日本語と同じで、拝啓 Уважаемые господа、敬具С уважениемを使うなど1ページに要約できます。ビジネス関係に進むなら必要ですが、大事なのはそういう約束事というよりは、メールやレターの中味です。

Posted by asuka at 2012年05月14日 02:07
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