2012年04月28日

●和文解釈入門 第344回

体の用法を勉強するときに、入門編として読んだ方がよいのは、「ロシア語の体の用法」(原求作、水声社、1996年)である。著者が体の用法を十分消化して、自分の言葉で説明が分かりやすく難解な体の用法を説明しているからである。難を言えば、現在時制の説明があまりないのと、露文解釈用の説明であり、会話における和文露訳に使うには、これでは理解しにくいところも出てくる。結局最後にたどりつくのは、「ロシア語動詞 体の用法」(ラスードヴァ著、磯谷孝訳編、吾妻書房、1975年)なのだが、訳が非常に良いとは言え、日本人学習者向けに書かれた本ではないために、会話における和文露訳用に活用する上では読みこなすのが大変である。訳者の意識の重点も露文解釈であり、これを会話における和文露訳に活用するにはひと工夫も二工夫も要る。磯谷先生のこの本にある序文や、「演習ロシア語動詞の体」(磯谷孝編著、吾妻書房、1977年)もその理解には大いに助けになるとはいえ、十分ではない。

 一般の学習者の手に入る体の用法の参考書はそれほど多くはない。体の研究の現状を知る上で大いに参考になるのは、「ロシア語のアスペクト」(林田理恵、南雲フェニックス社、2007年)である。第6章の特殊疑問文におけるアスペクト的意味と機能が特によい。ただ全般的に説明が結果の現存に比重が置かれているようで、動作の名指しについてが弱いという感じを受けるのと、使われている例文には通俗小説の会話文も用いられて、それなりに工夫されていることは認めるが、小説の会話文というのは、一般のロシア人が使うありふれた会話とは違う。例えば、「~をご注文なさいますか?」などというレストラン、駅などで使う会話についての例もないし、その分析もない。そのため標準ロシア語という観点から見れば、それでよいのだろうが、通訳やガイドといったプロのみならず、ロシア語でロシア人と日常的に会話する人に、どういった体を使うべきなのかという具体的な示唆に乏しいという事は言える。

 無論、そういう趣旨の博士論文ではないことは認めるにせよ、ロシア語を会話で使うために、どんな初心者だって、どの体を使うべきか、決めなければならず、それを従来のような文例の丸暗記に求めるのは非科学的である。日常的な会話のみならず、ビジネスにおける交渉の場でもКак будет осуществляться оплата поставок оборудования?(設備納入の支払はどのようになされるのですか?)というような完了体未来形ではなく、不完了体未来形で使われることがあるわけで(この場合はкакに論理的アクセントがあるから、完了体未来形は来ないと思う)、我々通訳にはこういうロシア語を耳で聞いて日本語に訳すという比較的単純な作業もあるが、自分でのこの日本語からロシア語にするときにどの体を選ぶかを通訳をするときに常に選択をしなければならないというのも日常の現実である。

 本書の62ページにグラヴィンスカヤ先生の説として完了体と不完了体の体の対立という観点から動詞の分類を4つ挙げて解説しており、皆様にも役に立つと思うので、自分風に咀嚼して、簡単に書いておく。

1) 限界達成型
надевать/надетьなどで、完了体は限界点(服を着てしまう)という動作の終了があり、不完了体はその限界点への過程を示す。возникать/возникнуть, входить/войти, выздоравливать/выздороветь, высыхать/высохнуть, переставать/перестать, подходить, подойти, строить/построитьなど。
2) 非限界型
限界のない状態変化や働きかけの動詞、限界のない過程を示すと考えてもよい。увеличивать/увеличить, улучшаться/улучшитьсяなど。
3) 意識的働きかけの動詞
結果は完了体においては瞬時に達成されるが、不完了体においては結果達成への努力・試みを示す。ловить/поймать, решить/решатьなど。
4) 状態、位置、関係、感情の動詞
a) 不完了体はある状態にあるという状態の意味を、完了体においてはある状態に入るという動作を示す。болеть/заболеть, волноваться/взволноваться, заниматься/ханяться, обижаться/обидеться, обнимать/обнятьなど。
b) 不完了体はある状態にあるという状態の意味を、完了体はある状態に入り、一定期間その状態や関係にあり、その状態、関係であることを止める。благодарить/поблагодарить, говорить/сказать, касаться/коснуться, отвечать/ответить, просить/попросить, трогать/тронутьなどである。

 不完了体から上記のリストを見れば1)~3)は過程の動詞の類別であり、4)は状態の動詞ということになる。しかし、4)-b)の不完了体については状態の動詞ではないと思われる。проситьにせよ、動作が始まって、動作が終了するわけだから、「ある状態にある」ということではなく、これは動作遂行型の動詞のはずだ。例として、Студент отвечает на экзамене белстяще.(その生徒は試験でとてもよく答えている)とあるが、繰り返しでない以上、動作に「答えている」という状態はあり得ない。答える動作を開始して終了するのだが、それが「見事に答えている」ということなはずだ。касаться/трогатьсяはこの説明と合うが、それ以外の動詞は動作遂行型の動詞だと思われる。多分グラヴィンスカヤ先生もそういう意味で、4)を二つに分けているのだと思われる。

設問)「外科手術をしなくとも治療上効果はある」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年04月28日 08:26
コメント

Ожидаются
определенные
лечебные эффекты
без хирургической
операции.
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определёныеは取れば正解です。私の答えは、Показано проведение консервативного лечения.
「適応である(治療効果がある)показано = рекомендовать, счесть полезным」は医学用語で「禁忌である(治療上有害である)противопоказано = вредно для кого-лиго с медицинской точки зрения」の反意語である。適応症と禁忌はпоказания и противопоказанияといい、Это является противопоказанием к проведению ГБО.(高圧酸素療法は〔治療上〕不可)となる。
 консервативное лечение = лечение, осуществляемое без хирургического вмешательстваということで、「切らずに治す」ということで、温存は温存でも、部分的ではなく、完全にそのままという内科的治療のことである。

Posted by ブーチャン at 2012年04月28日 09:40

Без хирургического лечения имеется лечебное действо.
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действоというのは古代劇を指し、действиеという意味もありますが、その意味では廃語です。それとこれでは一般的に効果があるという感じですが、現実的には、この場合はとか、この治療はと考えるのが普通です。

Posted by asuka at 2012年04月28日 22:09

Лечение без хирургической операции также эффективно.
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正解ですが、一般的にこうだという印象を受けます。

Posted by メイ at 2012年04月28日 23:13

1) Можно эффективно лечить без хирургического вмешательства.
2) При лечении эффект достигается без применения хирургического вмешательства.
よろしくお願いいたします。
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2)は作った感じがします。1)は正解です。しかし、これも一般的にはという感じがします。

Posted by 雪のかけら at 2012年04月29日 00:01

Без хирургических операций можно надеяться на определенные результаты в лечении.

Posted by Ml at 2012年04月29日 00:15
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