2012年04月05日

●和文解釈入門 第321回

露文解釈だけをやっていると、露文の中で正しい体が出てきているわけだから、そこの書いてある体の使い分けを勉強するという事はあっても、自主的に使い方を学ぶ練習にはならない。そこで「予約する」の類語を第79回で紹介したが、それを使って、完了体と不完了体の使い分けについて復習してみよう。ホテルのフロントと客とのやり取りである。
「(部屋の)予約をした佐藤です」
「いつご予約なさいましたか?」
 最初の文は結果の現存であり、かつ予約するという動詞をこのシチュエーションでは初めて使うわけだから完了体の過去形を使い、Сато, я забронировал номер.となる。無論、動詞を使わずにУ меня броня.という言い方もできる。これに対してフロントは予約はいつですかと聞いているのだが、予約という事は分かっており、極端に言えば「いつ?」だけでもいいのだが、客商売の手前礼儀を考えるとそうはいかない。それでКогда вы бронировали?と不完了体過去形のの刺身のつまのような用法を使う事になる。

 似たような文例で、
「佐藤ですが」
「ご予約でしょうか?」
この「ご予約でしょうか?」は頭の中で、「ご予約にいらっしゃったのですか?」か「ご予約なさいましたか?」と変換し、どちらか選択する必要がある。前者なら、予約するという新規の行為だから、Вы желаете забронировать номер?と完了体不定形を使い、後者であれば、予約の有無を聞いているわけだから、不完了体過去形を使ってВы бронировали?となる。普通は後者であろう。

設問)「社長が自ら出迎えに来られなかったことをお詫び申しております」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年04月05日 07:12
コメント

Директор компании извиняется, что он не смог встречать вас.
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もちろんдиректорにも社長の意味がありますが、重役、理事長という意味もあるので、最近はпрезидентの方が多いような気がします。相対時制もく理解されていて特に問題はないのですが、不可能を示す時には完了体不定型形встретитьを用いるべきです。不完了体が来るとしたら、能力などですが、そのほかにはработать, спать対応の完了体がない動詞と考えてよいと思います。私の答えは、Президент извиняется, что вас лично не встертил.

Posted by asuka at 2012年04月05日 20:34

Президент просит (у вас) прощения за то, что он сам не мог встретить вас.
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正解です。

Posted by メイ at 2012年04月05日 23:32

ご無沙汰しております。
久々の参加になってしまいました…

(お題)
社長が自ら出迎えに来られなかったことをお詫び申しております
Наш директор извинился за то, что он сам не смог встречать Вас.

извинитьсяは具体的な内容ですし、結果の存続と考えて完了体過去を
смочьも具体的かつ結果の存続で完了体過去
встречатьは迎えに来るという行為自体が不可能だったと考えて不完了体不定形を
それぞれ使いました。
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извинилсяだと許しを乞うたと行為が終わっていることになります。この場合は動作遂行型の動詞で、「~であるということに許しを乞う」ということで発話の瞬間から動作が始まって、動作の遂行に向かっているということになります。ただ最新版のアカデミーの露露によれば、извиняться + 造格 + перед + 人の造格は廃用ですから使わない方がよいと思います。
 встречатьはasukaさんと同じミスです。不可能と分かっているのなら完了体を使うべきです。
 смогを使えば結果の現存ですから、社長が電話か何かでお詫びしているという感じですし、могならある程度時間をおいてお詫びしているという感じがします。

Posted by コーシカ at 2012年04月05日 23:58

いつも楽しく拝見させていただいております。とても勉強になります。頭の中でもやもやしていたり、あいまいにしていたことをきちんと言葉にして説明してくださるので、とてもためになります。ありがとうございます。恥ずかしながら今回私も参加させていただければと思います。
Директор нашей компании просил извиниться за то, что не смог встретить вас лично.
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わざわざ投稿いただきありがとうございます。少しでもお役にたてば幸いです。просилと不完了体過去形にしてしまうと、頼んだことがある(そういう事実があった)という意味で、現在の時制とは関係のないことになります。Пошу прощения (извинения).というのは、Простите. (Извините.)より強い意味のお詫びの言葉ですし、語結合的にもизвиниться(文法的に間違いだと言っているわけではありません)を使うより安定している(聞いている方に違和感が少ない)と思います。それ以外は問題ありません。
 проситьという動詞は1人称では動作遂行型で主として使われますが、この場合3人称ですが、その用法です。従来動作遂行型の動詞については、文法では取り上げられていませんでしたが、最近のНовый объяснительный словарь синонимов русского языка(3巻本)などを見ますと、その説明がなされており、露文解釈には特に必要がないものですが、和文露訳では、完了体過去形の結果の現存と、動作遂行型の不完了体現在形の使い分けができるようにならないと、ロシア語が作れないことになります。詳しくは第300回の当該事項を参照してほしいのですが、違いは、日本語でも感じられます。「社長は~ということをお詫びしている」といえば、今も社長は頭を下げている(本当のところは知りませんが)という感じで、もっというとその動作は状態の動詞と違い、終わりに向かっているという感じであり、詫びたならその動作は終わっているという感じです。完全に日本語と対応するかどうかは今のところ分かりませんが、伝える、命令するなどでは対応すると思います。両方の用法はかなり近いと思いますが、そのニュアンスの違いはあるわけで、それを感じ取れるかどうか、そうでなければ、会話集の表現の丸暗記を続けるということになります。

Posted by 雪のかけら at 2012年04月06日 03:04

Президент нашей компании просит извинения за то, что он не смог сам приехать встретить вас.
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正解です。私の回答より丁寧で、よい文だと思います。ただ個人的にはвас встретитьとしたほうが、強調感が出ると思いますし、встретитьだけで「出迎える」という意味ですから、приехатьがなくてもよいかなという気もします。

Posted by Ml at 2012年04月06日 05:44

Мы приносим вам
извинение за то, что
сам президент не смог прийти за вами.
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設問はお詫びしているのは社長です。それとприйти за вамиだと歩いて、空港などに出迎えて、そのままどこかに一緒に行くという意味になります。この世の中歩いて移動するとは考えにくいということと、出迎えだけというのもあり得ます(特に社長の場合は空港だけで挨拶して、失礼するということもあり得ます)。そうなるとвстретитьのほうがよいということになります。

Posted by ブーチャン at 2012年04月06日 05:57

丁寧に解説いただき、誠にありがとうございます。とても勉強になります。
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お答えで節に過去形が来て、主文にも過去形がきているというのは、英語の時制の一致と勘違いされているのかもしれません。ロシア語は日本語同様時制の一致はありません。そのため相対時制という考え方の理解は簡単なはずです。これも第300回の後ろの方にありますから、ご一読ください。

Posted by 雪のかけら at 2012年04月06日 10:23

何度もすいません。
前述のпросилですが、お詫びを私に託したという意味で、
просил (меня) извинитьсяと考えるのは、はずれていますでしょうか。
感覚的で申し訳ないのですが、たしかこのような表現を耳にしたような気がするのですが。
ネットで検索しても同様の表現も多少あるようですし(ネットにも間違いがいっぱい
ありますが)。間違っていたらごめんなさい。
もし、社長さんが(あなたに)謝るというということでしたら、проститьと
прощения (извинения)のほうが語結合が強いと思います。
私の中でもすっきりしない部分があり、恥ずかしいです。すいません。
でも、こうやって考えることはとてもよい勉強になると思います。
感覚に頼らず、きちんと頭で納得できるようにすることの大切さをさとうさまのブログや著書を
拝見させていただいて、いつも痛感しております。
私の弱点であり、これからの克服すべき課題です。
このブログを読ませていただいて、「考える」という良い機会をいただけて感謝しております。
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просилというのは、「頼んだ」という意味で、結果の現存(存続)、つまりその動作の頼んだということが、現在に反映されていません。厳密に言えば、現在に反映されているかどうかが分からないということになります。ロシア語でпросил извинитьсяという表現が間違いという意味ではなく、「謝るように頼んだことがある」と、動作の名指しの意味の日本語(経験と呼んでもいいですが、過去にそういう事実があったという意味)で理解するのが普通です。今誤っている(謝るよう頼んでいる)のであれば、現在形を用いるべきですが、完了体過去形なら「お詫びするように頼む」という動作が終わったということで、結果の現存ですから実質的にはあまり意味に変わりがないことになります。しかし設問はお願いするという動作がすでに終わっていたのではなく、この発話が始まって、終了するとともに、お願いするという動作は機能し始めて、遂行されるのです。それが動作遂行型動詞の特徴です。

Posted by 雪のかけら at 2012年04月06日 11:15

その後、調べていて、
Он просил передать вам свои извинения, что не смог встретить вас.
という表現が見つかりました。文法的にこれはどうでしょうか。
もし前述のような私の論理でいくと、このようにはっきりと書かなければ不十分だったのかも
しれません。この件でお騒がせしており、すいません。
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こちらも勉強になりますから、こちらこそ感謝申し上げます。この文は「彼は出迎えできなかったので、お詫びの言葉をお伝えするように頼んだ」という文ですが、頼んだという事実が過去にあったという意味しかありません。無論過去といってもいろいろですが、現在と結び付ける要素については考慮されていないのです。つまり現在と関係があるかもしれないし、ないかもしれない。確率的に言えば、ない確率が高いという感じです。たった今頼んでも、1年前に頼んでも使える文です。そういうことがあったということだけで。過去がいつかということを問題にしない文と言えます。完了体過去形なら過去の1点を、実際発話に現れるかは別にして、意識します。
 上の文を設問に使うべきでないというのは、100%間違いだからということではありません。たった今伝えたという意味にもなりえます。その場合は正解です。しかしたった今か、1年前か、1週間前か、動作を示す不完了体過去形は過去というだけで、過去の1点を特定しないのです(читатьなど語義にある程度期間の長さを想定しているものは別です)。たった今という意味が含まれているにしろ、特定できない以上、また設問は明らかに現在ですから、現在時制でないために訳としては誤解を招くので、避けたほうがよいということです。無論この文の前に、たった今彼と話したというような文言があれば別でしょうが。
 不完了体過去形には動作が過去に1回以上行われたという前提があります。しかもその回数を特定しないのです。1回かもしれないし、2回かも、10回かもしれないのです。とのかく動作が1回ないしはそれ以上起こったということだけなので、1回だけと分かっているときには、刺身のつまのような用法でないと使いにくいということはあります。

Posted by 雪のかけら at 2012年04月06日 11:27

明解な解説をありがとうございました。よく分かりました。
300回のさとう先生の「動作遂行型の動詞」の不完了体現在形の記事も、もう一度読ませていただきました。ありがとうございます。

社長が「просит извинения [извиниться] 」という場合は、社長がそれを発話した時点から「お願いしたこと」が有効になり、現在にも反映されているということですね。
完了体過去「попросил」であれは「結果の存続」ですので、上記の不完了体現在と実質的に同じ意味になるということですね。
また、不完了体過去は「事実の名指し」であり、頼んだという事実があったことだけを伝えるだけで、頼んだという結果(あるいは結果への関心)は現在とは結びついていないということですね。
それゆえ、この設問のような文章の場合は、訳として誤解を招くため、避けた方がよいというアドバイス分かりました。気をつけたいと思います。

原求作先生の『ロシア語の体の用法』でも、『「事実の名指し」の対抗勢力としての、完了体の「結果の存続」』と名付けられ、次のような例が出てますね。(自分用にメモ)
Я уже заполнил анкету. Она находится у дежурного. アンケートは書いたよ。(だから、その結果として)係がもってるよ。
Я уже заполнял анкету. Зачем же еще раз? アンケートは書いた。(書くという動作はやったけど、その結果は知らない)。どうしてもう一度書かなければならないの?

不完了過去については、『その動作が「完結したかどうか」に関心があるわけでは特になく、「そういう動作があったかなあかったか」ということだけに関心があるときは、不完了体を使うことがある』とされています。
例)Встречали ли вы ранее потерпевшую Хацуко?  あなたは被害者のハツ子に、それまでに会ったことがありますか?

以上より、今回の回答例のニュアンスについて考えてみると・・・。
А) Он попросил передать вам извинения .あるいは、Он просит... であれば、
彼が私に託した侘びの言葉(結果)が、いまここに私を通して、あなたの前にちゃんと残っている。それゆえ責任感がある・・・改まった、きちんとした感じがあるでしょうか。「お詫びの言葉を確かにお伝えいたします」という感じですか。

一方、Б) Он просил передать вам извинения [извиниться] . の場合は、
「謝った」という事実に重点が置かれ、「社長がくれぐれも謝ってくれって言ってましたよ」という感じでしょうか。
反面、その結果(=責任)については強調されていない感じでしょうか。失礼なニュアンスはあるのでしょうか? 

原先生の本には、『「事実の名指し」の意味は、継続を前提としない動作において、もっとも生き生きとあらわれる』ともありますね。社長が頼んだ(просил передать)という行為は確かに継続しない、しかし、それは私に対してのお願いであり、謝ること(извиниться)は私がきちんとする、と考えることはできるでしょうか。

また、『文の重点が、動作そのものよりも、文の別の成分に置かれている時、不完了体の「事実の名指し」の意味はでてきやすくなる』ともあります。この文の場合、「просил」よりも、「передать вам извинения 」に重点が置かれている、それゆえ「失礼ではない」とみなすことはできるでしょうか。

どうしてこんなに頭を悩ませているかとというと、日常ロシア語に接していてБ)のような表現をよく耳にするからなんです。Ведь он просил...(彼に頼まれたことだし・・・)なんて言い方、ロシア人はよくしているように思います。А)のほうがきちんとしていて正式な感じはするのですが、Б)のほうが生き生きした感じがするのは私の思い違いでしょうか。

最近ロシアでも「きちんとしたロシア語を話さない人が増えている」という批判がよくなされていますが、完了体、不完了体の使われ方も変わってきているのでしょうか。特に「事実の名指し」としての不完了体過去の表現によく出会います。若い人に多いかもしれません。お店でも会社でも、フレンドリーな対応をする人が多いロシアの思考がここに反映されていると見るのは考えすぎでしょうか。

さとう先生は、「体の用法が分かったつもりでいても、実際に使ってみて正しくどちらの体を使うのか分からなければ、それは理解したことにはならない。」とお書きになっていましたが、全くその通りだと思います。未熟な私には痛い言葉ですが、これからもっと精進したいと思います。
長々とすいません。あらためて、このような機会をいただけましたこと、感謝しております。
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礼儀に外れているかどうかは、完了体だからとか、不完了体だからではなく、その場面で完了体を使うほうが一般的なのに不完了体を使ってしまうとか、その逆の場合です。просилについてこだわっているようですが、その文だけ単独に存在するということは現実にはあり得ません。通常は前後の文脈というのがあります。社長からお詫び申し上げてくれという話があった後でпросилを使えば、刺身のつまという、つまり動作自体には重点を置かない用法です。体の用法は大切なのは前後の文の流れをよく理解するということです。新規の事項であれば完了体未来形が出てくるとは言えますし、その場の空気を読むような場面では不完了体が出てきます。設問自体が短文なので、その点がうまく理解できないかもしれませんが、それは自主的にロシア文学(現代文学で会話の多いものがよいと思います)を多読することで、そのニュアンスが分かってくると思います。
 日本人でも敬語の使い分けがいい加減な人がいるように、ロシア人でもロシア語がおかしいという人はいます。完了体・不完了体の使い分けは学校でも教えるようですが、口語でよく使う表現を間違えるロシア人はいないと思います。

Posted by 雪のかけら at 2012年04月07日 09:15

すいません。訂正です。
「просил」よりも、「передать вам извинения 」に重点が置かれている、それゆえ「失礼ではない」とみなすことはできるでしょうか。→ 「просил」(私に頼む)ことよりも、「извиниться」(あなたに謝る)ことに重点が置かれている。
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失礼かどうかということとは関係ないと思いますが、просилに意味の重点がないことは確かです。この場合不完了体現在形を用いるのは動作が終わっていない(発話の終了とともに動作が遂行される)わけで、不完了体過去形は動作がすでに終わっている(頼んだことが現在まで残っているかどうかは分からない)という違いです。完了体過去形は文脈によりますが、アオリストか結果の存続(現存)で、発話直後なら結果の現存の可能性が高くなり、その場合でも動作は終わって、頼んだという結果は残っているということになります。

Posted by 雪のかけら at 2012年04月07日 09:22

ご説明いただき誠にありがとうございました。体の用法を解釈する際は前後の文の流れに注意するようにします。

このことについてロシア人がどのように感じるか気になったので、二人のロシア人(語学通のインテリ)に回答例を見せて聞いてみましたところ、二人から同じような答えが返ってきました。
「просит」を使った例は正式にお詫びするときに。「попросил」の例は、宣言するような感じ。アナウンサーがニュースで報道するようなイメージ。「просил」は自然な口語表現。特に発話者(この場合社長)と謝られる側(あなた)がすでに知り合いである場合に使われるとのことでした。さらに、ビジネスの場や政府の要人による公式な表明などの場合には、「просит」よりもさらに正式な謝罪「приносит извинения」が使われるとのことでした。

以上ご参考までに。いろいろとお騒がせしました。長くロシア語とかかわっていても、まだまだ知らないことばかりで、自らの能力のつたなさに毎日くじけそうです。それでも継続は力と信じ、これからも勉強を続けていければと思います。
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上記のような説明は私にとっても、他の投稿者にとっても大いに参考になるでしょう。すでに上級クラスですから、あとは理論的にご自分が納得されるだけのことですから、思い込みを捨てれば、あっという間に体の用法の本質(奥義)について会得されると思います。

Posted by 雪のかけら at 2012年04月09日 19:40
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