2012年03月31日
●和文解釈入門 第316回
自分が会話集を書いているくせになんだが、会話集の悪いところは、その性格上感情的な表現を省かざるを得ないことである。トゥマールキンさんの会話集Речевой этикет и обороты диалогической речи , П. С. Тумаркин Восток – Запад, 2008の様な例外もあるが、基本的に観光、医療などの専門分野であれば、感情表現は設定上難しい。そのため過去時制はともかく、完了体未来形の用法がよく分からないということにもなるし、平叙文なら不完了体現在形を、命令形と言えば完了体となりがちである。露文解釈でロシア文学をたくさん読んでいたとしても、それは和文解釈にとっては受け身の勉強でしかない。自ら意識的に体の用法を選択するという癖をつけるのは、自分がそのような状況に追い込まれでもしない限りなかなか難しいものである。
設問)「アポイント(面談)は明日になった」をロシア語にせよ。
Беседа назначена на
завтра.
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正解です。ただ営業などの仕事でのアポイントはвстречаでよいと思います。беседаは内輪の話か、政治的な会談というような感じがします。私の答えは、Встречу назначили на завтра.
Встреча перенесена на завтра.
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必ずしも間違いではありませんが、これだと面談が明日へ延期になったという意味になります。被動形動詞過去短語尾の結果の現存の用法をマスターしたようで結構なことです。これが今回の設問のねらい(ないしは完了体過去形の)ですから、合格と言えるでしょう。いつも書いているように語彙は後でどうにでもなります。
Встреча назначена на завтра.
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正解です。
Встреча назначена на завтра.
それから、ちょっとだけお聞きしたいことがあるんですが、(関係のない質問ですみません!)
ロシア語会話集で
「インターネットの買い物にはまっています。」
という文がでてきて、
Я пристрастился к покупкам по интернету.
となっていたんですが、これは、過去のあるときにはまった→今も引き続きはまっている、ということで完了体過去ということですよね?
この場合увлекатьсяのように、現在形で、я пристращаюсь к ~とできるのでしょうか?(研究社の露和辞典のこの単語の不完了体のところに<旧>と書かれていたんですが、現在はあまり使われないのでしょうか?
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正解です。ご質問については、最初の文は結果の現存ということで、ご理解の通りです。残念ながら最新版のアカデミー版露露辞典が17巻までしか発売されておらず、これがподлечьまでなので、現在のロシア語専門家の見解は分かりませんが、4巻本の露露辞典にはпристращатьсяは載っていませんし、個人的にも聞いたことがないので使えないと考えたほうがよいと思います。岩波にも記載がありません。
回答ありがとうございます^^
状態をあらわすこともできるのか?と思えるような瞬間動作の動詞の場合、ときどき現在形で使ってよいのか、結果の存続で使うのかが分からなくなってしまったりします。難しいですね。
それから、またしても質問させて頂きたいことがあるのですが・・・(回答はお暇なときでかまいませんので)
確か不完了体現在を使うときというのは、確実にこれから行われるであろう動作のときですよね?
たとえば、思いつく例として、
вы выходите?(地下鉄などで、降りますか?というとき。確実にこれから行われるであろう動作。)
вы уезжаете из этой комнаты?
(部屋から出ていくときにそこに居る人から、出る準備をしている人に向かって聞くとき。)
などがあるんですが、
つい最近、
確実に近い未来に、ある人が自分のところに来ると分かっているという条件つきで(例えばその日に会う約束をしていた友人との会話などで)、「何分後に来る?」
という場合、
確実に分かっている近い未来ということだから、
Через сколько времени ты приходишь?
と言えるのか?とある人に質問したところ、
придёшь?にしないと
この文はおかしい、と言われました。
これは、もしかして、уехать выехатьなどは今現在地点からの出発をあらわしている?動詞だから現在の延長をあらわしやすく、приехатьは遠くから自分の地点への動き、ということで現在自分の地点からの直接の延長にならないということでしょうか?(確実に知っている例が少ないのであまり分からないのですが)
運動の動詞でも未来を表す不完了体現在の使用ができる動詞とできない動詞というのがあるんでしょうか?
以前の和文解釈で説明されておられたのかもしれませんが、たくさんありすぎて全部読むことができず・・・
もしこの点、または近い事項に関して説明されていた回があれば第何回にあったか教えて頂ければ嬉しいです^^
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不完了体現在形の予定の用法は、おっしゃるような「確実にこれから行われるであろう動作」なのですが、そういう理解だと完了体未来形との区別ができなくなります。予定の用法というのは自分がそう思いこむというよりは、スケジュールなどでそうなっていると考えたほうが分かりやすいと思います。極端に言えば自分の意志を念頭に置かない動作とも言えます。不完了体はKY(この場合は「空気読めてない」という意味ではなく、「空気を読む」という意味)動作だと書きましたが、主体は主語ではなく、周りの状況です。完了体の場合はそうではありません。新規の動作を完了体が示すというのもKYとは無関係だからです。
確実であるこれから起こる動作は、主語が確実だと思っていて、それが周りの状況とは無関係なら、完了体未来形を使います。そういう意味で、この場合はその「ある人」のпридёшьが正解です。
この場合もう一つ厄介な動詞が絡んでいます。それはпри-という接頭辞のついた運動の動詞(運動の動詞であって、すべてのпри-という接頭辞のつく動詞ではありません)であるприходитьです。при-という接頭辞のつく運動の動詞は過程を示すことができません。語義が到着であるため、動作の一般化か繰り返しの意味にしかならないのです。不完了体現在形の予定の意味は、過程に意味から発展したと私は考えています。これはロシア語と同じ語族の英語でも、He is leaving tomorrow.と予定の意味で使えることから推測できます。ですからприходитьを予定の意味で使うのは、心理的に抵抗があると推測されるわけです。ところが、Verbs of motionという参考書の中で、Muravyova先生は何箇所か、特に184ページにはприходит, уходит, выходит = собирается прийти, уйти, выйтиと書かれています。そうなるとприходитьも予定の意味で使えることになります。ただガイドをして新幹線などでロシア人観光客からКогда мы прибываетм в Киото?(いつ京都に到着しますか?)と聞かれることはあっても、これにприезжаемは聞いたことがありません。прибыватьは運動の動詞ではなく、やや硬い表現(上品と言い換えてもいいですが)ですが、不完了体で予定を示します。
「何分後に来る?」というのは、明らかに周りの状況とかスケジュール(出張に行く、汽車が来るなどはそうです)とは無関係であり、来る人が自発的に到着の時間を決めているわけですから、その「ある人」のおっしゃる通り、完了体未来形でないとおかしいことになります。
全ての不完了体動詞が予定の意味で使えるわけではないということはすでに書きましたが、бытьの未来形 + 不完了体不定形の場合も、KY的なニュアンスが出てきます。Что вы будете пить?(何をお飲みになりますか)だって、レストランや招かれた家などでそういう表現が当然出てくるだろうというときに使う場合に使われます。この答えで、ビールを飲みます)はЯ выпью пива.(пиваと部分生格が来ていることに注意。сок やкока-колуは瓶をイメージするせいか対格が来る。чаю, чайку, кофейкуと部分生格専用の生格がある名詞もある)と完了体未来形が出てくるのはビールという新しい情報が入ってくるからです。ただ対応する完了体がなければ、KY的でない場合でも不完了体を使わざるを得ないということになります。
完了体未来形が使われるのは、予定というものを初めから考慮しない場合で、これはわざと予定を無視するということではありません。予定というものがそもそも念頭にないのです。これらの用法については第300回のa), b), e)を参照下さい。
設問)「読書力をつけるには精読と多読のどちらが大切だと思いますか?」をロシア語にせよ。
非常に良い質問なので、他の皆さんのために、次回の本文に載せたいと思います。