2012年03月10日
●和文解釈入門 第295回
種村季弘の「書物漫遊記」に高校時代ドイツ語の先生をしていた阿部賀降元横浜国大教授の話が出てくる。阿部先生は当時大学院生で、高校生だった種村にこう語ったという。「会話というものは、君、素人のど自慢のようなもので、あれは特殊な、別種の才能の問題です。まあできるに越したことはないが」と言い、続けて、「カントを読みなさい。ニーチェは、君たちにはまだ早い」とある。これを聞いてなるほどと思った。露文解釈と会話(の和文露訳)は別物だというのは私もそう思うからである。両方同じぐらいのレベルでやろうとすると何十年もかかるか、虻蜂取らずになる可能性が高いと思う。しかし世間ではロシア語が出来るというと、露文解釈も和文露訳もどちらも等しくできると思っているようで、その期待を裏切らないようにするというのは大変な努力と時間がかかる。
だから会話の方がやさしくて、露文解釈の方が難しいということにもならないし、その逆でもない。片方の格が上というのでもない。ここのところをよく理解しておかないとロシア語の学習の本質を誤ることになる。両方の勉強の方法は全く違くのだと割り切った方がよいのかもしれない。
設問)「リレーのコースはどこを通っているのですか?」をロシア語にせよ。
Где проходят дорожки
эстафетных бегов ?
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リレーのコースは一つではないでしょうか?私の答えは、冬季オリンピック用のものです。Где проходит трасса эстафетной гонки?
Где расположена трасса эстафетной гонки?なら(リレーのコースはどこにあるのですか?)となる。
Где проходит маршрут эстафеты?
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маршрутはルート、航路、行路、路線ということで、交通機関、旅行関係以外で、特に競技のコースで用いられる例は知りません。маршрутは通過地点が具体的ではっきりとしていますが、競技のコースは便宜的に何キロ地点という目印はつけますが、後はせいぜい林を通ってとか、この道沿いぐるっとという感じでしょう。
По какому маршруту проходит эстафетный бег?
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маршрутがスポーツ関係で用いられる例を知りません。
По какому маршруту идёт эстафетная гонка?
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маршрутは比ゆ的に言うのでなければ使えないと思います。あるいは自動車のラリーでアフリカ全土を回るというような場合は使えるかもしれません。
Где идёт дорожка эстафеты?
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正解です。「この道はどこへ通じているのか?」はКуда идёт эта дорога?とするが、どこを通っているかならГдеが使える。答えはЛесом.でもПо лесу.でもよいが、前者ならまっすぐ突き切ってというような直線的連続的ニュアンスが出る。
(お題)
リレーのコースはどこを通っているのですか
Куда пройдет курс эстафетного бега?
кудаに重点があるのと、状態を表すのとで不完了体現在を充てております。
さて、正解は
проходит...
そうか、同じところを何周もしたり、重複区間もありえますものね。
>どこを通っているかならГдеが使える
そうなんですか!
кудаは方向、гдеは点、と乱暴に覚えておるので
そんな使い方ができるとは知りませんでした。