2012年02月03日
●和文解釈入門 第259回
設問が難しいと考えて投稿を控える人もいるようだ。いわゆるやさしいと称する問題を作るのもそれほど簡単なことではない。例えば、「赤い花が咲いている」を出題したとする。答えはКрасные цветы цветут.だから、投稿する人数も増えるかもしれない。しかし、この日本語を見れば分かるが、日常会話でこのような文を使うだろうか?ロシア人と話していて、こう言いたければ、目の前の赤い花を指でさせばよい。目の前にこういう花がなくて、いきなりこのような文を言えば気違いと思われるだろう。初心者向けのロシア語作文には基本的な語彙を使う事、不完了体現在形を使うことなどの制約もありそうだが、そうなると出題しようとする日本語の文はまずます現実とかけ離れて行き、人工的な文とならざるを得ない。しかもほとんど実用にならないものである。このような初心者向けの文で少しでも実用性のありそうなものは露文解釈の教科書や参考書にすでにある。
これまではロシア語作文というと、ある程度文法(それを中級文法と言いたければそれでもよいが)を終えた後は基本的に丸暗記する以外に道はなかったように思う。二十歳を越えたいい大人に対して、丸暗記しか残されていないというのはおかしい話で、自分で丸暗記のみの道を選ぶというなら別だが、普通は他にやりかたがあるのではないかと思うはずだ。ロシア語で会話したいなら、会話用に全てを丸暗記するのではなく、文法の助けを借りてその暗記の負担を少しでも減らすべきだというのが私のロシア語学習法の基本的な考え方である。だから設問は実戦で使え、かつ応用力があるものをできるだけ出題するようにして、難問とかひっかけるような問題を意識的に出すつもりはない。第257回の設問も時制的には不完了体現在形であり、反復という用法で分かりやすいものだが、ガイドをしていれば絶対に覚えておかなければならない語結合である。ロシア人と温泉に同行した時、薬、食べ物など広く使えるだろうと思い、出題している。
全ての出題が個々の投稿者にとって必要なものだとは思わないし、特定の個人に対してではないので、的を絞った出題が出来ないのは事実ではある。これによって自分のロシア語の具体的な弱点を見つけ、今後の勉強の方向性を見定め、それに資するものがあればよいと思う。出題については、成功しているかどうかは別にして、出題の意図というのはある。これがなくして、ただ興味本位に出題するとするなら、あるいはそういうものがなくなったのなら出題を続ける意味はない。
設問)「狼に出くわせば人命にかかわる」をロシア語にせよ。
「狼に出くわせば人命にかかわる」
На волков натыкаются- жизнь человека смертельна.
こういう設問には、仮定法を使うべきなのでしょうか。
かなり恥ずかしい露訳ですが、いざ投稿!
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仮定法というのは「もし(男である)私が女だったら」というように、現実ではないことを仮定するときに使います。ニホンオオカミは絶滅が確認されていますから、そういう意味では仮定法です。ただ一般にオオカミということになると、数は減っているようですが、まだ生息していますから、条件法(если, когдаを使う)でよいと思いますし、使わなくても表現できます。
体の用法で考えると、例示的用法を使います。これは仮定法と違い、「もし~が起こったとしても」をесли, когдаの意味を完了体が担っていると考えてもよいと思います。Наткнуться на волка - это опасно для жизни человека.それとсмертельныйは致命的ということですが、死をもたらすのは具体的な傷とか牙の原因です。となるとこの形容詞жизньが主語なるのはおかしいように思います。
私の答えは、Встреча с волком опасна для жизни человека.
Встреча с волком опасна для жизни человека.
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正解です。