2012年01月22日
●和文解釈入門 第247回
ロシアでも新兵いじめдедовщинаというのが未だにあるが、日本の軍隊生活でもあったことが第二次世界大戦までは色々な書物に描かれている。この淵源について、「雑兵物語」(パロル舎、2006年)を現代語訳した「かもよしひさ」氏によれば、1883年頃までに徴兵制度が日本で確立し、幕末時代牢内警備をしていた与力や同心、牢内を知るならず者たちが内務班の下士官や古年次兵として牢内の伝統を伝えたからではないかと述べており、卓見である。ちなみにこの雑兵物語の著者は色々な説があり、高崎城主松平信興(のぶおき)〔1620~91〕が有力視されている。本書は1846年刊行で、戦国時代の雑兵(ぞうひょう)の実戦的心得が具体的に書かれている。
徳川時代は戦争というものが島原の乱以降なかったわけだから、黒船来航時にはこの本は非常に重宝されたものである。残酷な話で恐縮だが、例えば戦功の証として敵の首の代わりに鼻を切るときは、上唇も一緒に切り取るべしとある。これはサドマゾの世界ではなく、もっと現実的でドライな話であり、鼻だけだと女かもしれない、つまり髭のある男であることをはっきりさせ、戦後の論功行賞に与るためであると同書にはある。本書とは関係ないが、朝鮮出兵の後で京都などに作られた耳塚、鼻塚なども、戦場から重い首を持ってくるわけにもいかないからということで、戦功の証として耳や鼻を塩漬けにして持ってきたものを供養したものだという。
設問)「頭を打ったときに気を失ったのですか?」をロシア語にせよ。
Вы потеряли сознание
когда ударились
головой?
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正解です。私の答えは、Вы потеряли сознание при ударе головой?
典型的なアオリストの用法である。結果の現存なら気絶しながら回答するという奇怪な話になってしまう。(怪我をした瞬間気を失ったのですか?)ならВы потерялии сознание в момент получения травмы?であり、(意識を失ったから倒れたのですか?)はВы упали, потому что потеряли сознане?となり、いずれも動作は過去の明確な一点を示している。
Вы потеряли сознание, когда вас ударили по голове?
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構文は正しいのですが、これだと「頭を殴られたときに気を失ったのですか?」になります。ударитьとударитьсяの違いをチェックください。人に殴られるとドアに頭をぶつけるの違いです。
Сознание потеряно из- за удара по голове?
主語を明確にしない文ではこの方がよいのではと推測し、判断しました。
しかし次の訳も考えました。
Вы потеряли сознание из-за удара по голове?
原因である”頭を打ったときに”を訳す時
нанесение を加えるべきか悩みました。
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非常に分析的に自分の答えを解説しているので、こちらも助かりますし、後でご自分の回答を整理するときに役立つと思います。さて1番目の答えは、だれが気を失ったのかが分からないというのが問題です。そういう意味で2番目が設問に沿っています。しかしお答えは、「頭を打ったせいで気を失った」となり、気絶や失神の原因を述べており、設問と違います。設問は「~のときに」です。こういうときにпри + 前置格が使えます。ただこれは硬い表現なので、会話ではかろうじて医師があらたまったときに使うぐらいなので、когдаを完璧に使えるようにするのが先決です。そのうえでприを使うのは自由です。
動作の順次性が主文と従属節でも表すことができます。
(家に帰ると、すぐ寝た)Когда я пришёл домой, я сразу лёг спать.
このように完了体過去形が動作の順次性を表すのに対して、不完了体は動作の同時性を表します。(私が手紙を書いていた時に、彼女は夕食の用意をしていた)Когда я писал письмо, она готовила ужин.
удар自体が動名詞として使えるので、特にнанесениеを加える必要がありません。英語の動名詞は-ingですが、ロシア語では、動作由来の名詞と置き換えて考える必要があります。
頭を打ったときに気を失ったのですか
1) Потерял(а) ли Вы сознание, когда Вы ударился(...лась) головой?
2) Вы ударился(...лась) головой и потерял(а) сознание?
おっ、例示的用法か(1の方…はそれなんか?)
と思いましたが、ちょっと心配なので
誤解のなさそうな順次的用法も(2の方です)添えておきます。
「頭を打つ」も「気を失う」も長期間継続したり習慣化したりする動作ではないので
動詞はいずれも完了体を使っております。
>新兵いじめ
日本陸軍のそれはプロイセンに教えを乞うたことに起因する、
と聞いたことがあります。
戦後の武装解除から警察予備隊を経て新たに編成された現陸上自衛隊は
米軍の指導を受けたので新兵いじめもなくなった
…と喧伝されておるようですが、
米軍も特に海兵隊にはそれはそれは恐ろしい新兵いじめがある、とも聞きます
(『フルメタルジャケット』の描写などかわいいものだそうです)。
徹底した罵倒を通じて個々の人格を破壊し、
どんな非情な任務でもこなせる兵士に造りかえるのが目的なのだとか。
それはさておき
日本陸軍伝統の新兵いじめは消えたのかというと、
なんと韓国陸軍で受け継がれておるのだそうです。
「漢江の奇跡」の立役者・故朴正煕大統領はじめ、
一昔前の韓国の有力者には旧軍や日本統治時代の偉いさんが結構いらっしゃるようです。
日本の有名人にも実は結構な数の朝鮮系の方がいらっしゃる、
というのと被って面白いですね。
それにひきかえ
ユダヤ系を中心にスラヴ人も戦前の日本でなかなか活躍していたようですが
(初期の宝塚歌劇団、指揮者の故朝比奈隆氏あたりは白系露人の薫陶を受けたようです
スポーツだと野球のスタルヒン選手とか昭和の大横綱・大鵬関、
変わったところでは後に原爆ドームとして知られる広島県産業奨励館を設計したのは
チェコ人のヤン・レツル氏であるなどなど)、
かなりの有名どころが絡んどる割にほとんど知られてへんのが残念無念…
(参考文献:
四方田犬彦『大好きな韓国』日本放送出版協会[NHK人間講座テキスト]
長縄光男、沢田和夫共編『異郷に生きる』成文社)
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両方とも正解です。例示的用法は未来時制で使われるのが、普通で、何度も書きましたが、過去で使われるのは、不規則な繰り返しのときで、動詞の方は完了体過去形ではなく未来形です。
Он потерял сознание, когда ушиблся головой?
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ушибсяの凡ミスはありますが、正解です。ただ日本語では疑問文で主語を明示しなければ、二人称と考えるのが普通だと思います。設問は医師の患者への質問です。