2012年01月20日
●和文解釈入門 第245回
最近「現代ロシア語頻度辞典Частотный словарь современного русского языка, Ляшевская, Шаров, Азбуковник, 2009」というのを買った。この種の辞書はこれまでもいくつかあったが、これは1950年から2007年までの文学、ニュース、学術文献などありとあらゆる9200万の現代ロシア語の用語例から5万語 + 3000固有名詞・略語の頻度を調べ、その頻度を調査したものである。こういう辞書を読んでもロシア語の勉強にはならないが、ロシア語を教えるときに、どういう単語を優先的に教えるべきかを判断する上で科学的根拠を与えてくれる。例えばнаписатьとписатьではписатьのほうが、個人的な経験から用例が多いような気がするが、そういう感じだけでは如何ともしがたいし、説得力もないから使えない。しかしこの辞典を見ると、написатьが100万の文例で336.2回(294位)、писатьが444.3回(213位)と確かにписатьが多いことが分かる。
頻度の1番から2万番までのリストもあって、堂々のトップはиで、2位はв、3位はнеで、на, я, быть, он, с, что, а, по, это, она, этот, к, но, они. мы, как, из, у, который と続く。яが5位に食い込んでいるが、日本語ではありえないことである。日本語は一人称を示す言葉が非常に多いし、省略されることがロシア語よりは多いからだ。ロシア語ではя以外では書き言葉の「筆者автор этих строк, автор этой книги, пишущий эти строки」や「мы朕とか学術論文の筆者」ぐらいだろう。
しかも文学とそれ以外の評論に大まかに分け、1950年代から60年代、1970年代から80年代、90年代から2000年代の3つのカテゴリーでも頻度が分かる。つまり参考書や単語集、熟語集を作る上で大いに参考になるわけである。露和辞典で頻出する単語に星印を一つは1000位以下、二つは500位以下、三つは100以下というふうにもできる。参考書を作る機会に恵まれないのなら、頻度の高い語彙を優先的に覚えるよう生徒に指導できるというものである。しかも科学的裏付けもあるから説得力もあるというわけである。無論長年ロシア語をやっているから、どういう単語がよく使うかは感覚で分かるが、具体的に最重要1500語を選べと言われても困るわけで、そういうときに大いに力を発揮する。他にも使い道はあるだろうから、いろいろ考えてみたい。
設問)「彼女をどこまで送るとか、どこで彼女とさよならをするかを決めるのは(いつも)彼だった」をロシア語にせよ。
Докуда ее проводить
и где с ней
попрощаться, это
всегда определялось
по его инициативе.
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体の用法も正確で、強調構文的なものも使っているし、正解と言っていいでしょう。ただ不定形以外の動詞が問題です。определитьがお好きなようですが、第237回でご説明したように、決意する(意志を決める)という意味では使いません。ここは素直にрешатьを使ったほうがよいと思います。そうでないと、「私から言いだして、定まった」というような変なロシア語になります。私の答えは、Это он решал, докуда её проводить и где с ней проститься.
ラスードヴァ先生の「ロシア語動詞 体の用法」には、反復性は主文の中の動詞によって表現され、従属節中の不定法は完了体で用いられるのが普通であると書かれている。これは反復という動作を主体の動詞が担い、不定法で示される動作を例示的な単一の動作と見ているからだと思われる。
構文自体は強調構文で、英語ならIt is ... that ...という構文だが、これをЭтоを使って表現してみた。
Это всё время был он, кто решил до какого места проводить её, где попращаться с ней.
(いつも)彼だったのところで、適当かなとおもったникто иной ではじめようかと考えましたが、こちらにした方が自然と判断しました。
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не кто инойのことですか?Это сказал не кто, иной Петров.(言ったのはほかならぬペトローフだった)という構文もあります。無論 強調構文を意識しているところは評価できます。「いつも」があるので、主文の動詞は不完了体решалでなければおかしいと思います。つまり。Это он всё время решалとすれば正解です。попрощатьсяの凡ミスがありますが(会話で発音する分には変わりませんが、ちょっとしたことですから気をぬかないようにしましょう)、よくできています。今回の設問で一番難しいのは不定法が完了体というところです。これができていればあとは大したことではありません。ただ強調構文は英語のような形は取りません。英語ならIt is ... that ...という構文ですが、ロシア語はそうはならず、
a) Прежде всего нужны факты, факты и факты.(まず必要なのは事実、事実、事実だ) 名詞を並べるタイプ。
b) Это вы принесли пакет.(その束を持ってきたのはあなたですよ)*Этоの後に強調するものをおく。
c) Этот вопрос решаете Вы.(この問題を解決するのはあなただ) *文章の最後に強調するものをおく。
Следовать "старине" Пётр более не желал.(古風に従う事をもはやピョートルは望まなかった)否定文ではこのように動詞を強調する場合が多いようです。
решилと完了体過去形を使ったのは、完了体の例示的用法の取り違えでしょうか?そうであれば、例示的用法とそれとよく似た繰り返しの用法の違いについて書いておきましょう。
例示的用法は未来時制でよく使い、不規則な繰り返しで、(何かあれば)いつでもというような潜在的可能性を示し、完了体未来形を使います。過去時制でも使われますが、使われるのは完了体過去形ではなく、完了体未来形です。詳しくは第233回の表を参照ください。
一方繰り返しは規則的な繰り返しを意味し、使われるのは不完了体のみで、過去時制、現在時制でよく使われ、まれに未来時制で使われます。数少ない未来時制の例を第233回の表に挙げてあります。設問はデートしたら「いつも~した」という過去の事実(可能性ではなく)であり、規則的な繰り返しであることは明確ですから、これを使う必要があります。いつでもとかいつもというような単語そのものではなく、単語というのは文脈で意味のニュアンスが変わる場合もありますから、文全体のニュアンスをとらえるようにしましょう。
Докуда проводить ее или где попрощаться с ней, решал он.
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正解です。
彼女をどこまで送るとか、どこで彼女とさよならをするかを決めるのは(いつも)彼だった
Им был тот, кто решает такие дела, как до какого место проводить ее и где они сказать друг друга "До свидания"!
もう全然わかりません(回答する気が失せるくらい…)
関係詞が使えるのではないか、と考えました。
城田俊『現代ロシア語文法』330頁の練習問題の文を参考にしました。
・決める
「(いつも)彼が決めていた」とあったので不完了体を充ててみました。
それだけで過去における習慣まで示せというのは難しそうですが…
・「送る」、「さよならする」
その都度その都度の具体的な動作と考え、完了体を持ってきました。
「送って行って、その先でさよならする」と
順次的用法のような意味合いも出せるのでは、という狙いもあります
(不定形では無理かなぁ…)
・さよならする
分からないので「互いに"さようなら"と言う」に読み換えました。
習慣のような気もしますが、
говорить "До свидания"!という語結合はないように思えました。
「"さようなら"と言う」と具体的な内容とも思えるので完了体のсказатьを使っています。
さて、正解はどんなシンプルな文でしょう
докудаとかпроститьсяとか
便利な単語がやっぱりあるやないですか!
こういう単語を探り当てることができれば便利なんですが
これは場数を踏むしかないのでしょうね。
проститься с кемで「別れを告げる」というのは
時代劇で言う「しからば御免」を連想して面白いなと思いました。
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考えすぎです。過去における規則的な習慣は不完了体過去形を使うということだけです。