2012年01月18日

●和文解釈入門 第243回

このコーナーを始めて特に感じるのはフィードバック(feedback) обратная связьの有難さである。特にいろいろ感想も含めて、疑問などを書いてくれる投稿者の回答やコメントのおかげで、第233回の表なども作れたわけであり、そのおかげで自分の考えがかなり整理できたと思う。そういう意味で投稿者の皆さんには心から感謝しているという気持ちを伝えたい。設問への回答はしないが、コメントに対する疑問とか、ロシア語に関する疑問を持っている人もいるだろう。回答しない方にもロシア語に関することならどんな質問でも受けるし、分かる限りお答えするので、遠慮せず投稿願う。前にも書いたが、世の中すべてGive and takeであり、投稿者からの質問に応えることで、そういう発想もあったのかとか、やはり自分と同じように考える人もいるのだなとか、これからの自分の勉強のヒントをただで得ることができると思うからである。

 露文タイプの練習するときに各キーにロシア文字を貼りつけるという人も多いと思う。そういうシールもモスクワなどでは売っているが、使うのは勧めない。貼ってあると覚えないからだ。それよりもキー配列をタイプアップしてプリントアウトしたものをコンピューターのそばにおき、単語や短文を打つ練習をした方が覚えるのが早い。タイプは英文も露文も両手の五本指で打つが、私はブラインドタッチはできないし、またその必要もない。結局覚えるのに至らなかったが不自由していない。知り合いにロシア語でメールするときも、いくつか単語を打っては直し、文を見直すことがしばしばで、頭の中でロシア語の文章が整理されている人は別だろうが、ブラインドタッチを覚えなくとも十分間に合うのだ。これから露文タイプをしようとする人に、一つヒントを上げよう。ロシア語のエスと英語のcのキー配列は同じである。これだけでも覚える負担が1/33減ったことになる。それとタイプの練習の時にでたらめに打つのではなく、машинаとかчеловекといったように単語で練習するとよい。語彙も覚えられて一石二鳥である。ウィンドウズXPでロシア語が打てるように設定してあれば(私のホームページ「ランポポー」のトップページにその設定の仕方が記載してある)、ワードやエクセルで和文や英文から露文タイプに切り替えるにはAlt + Shiftキーを押せばよいし、もう一度押せば元に戻る。英文と和文の切り替えは、キーボードの左上の半角/全角キーを押せば切り替わる。

設問)「我が国のチームは延長戦でスペインチームに負けた」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2012年01月18日 06:40
コメント

Команда нашей страны
проиграла команде
Испании в
дополнительное
время игры.
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正解です。私の答えは、Наша команда проиграла в овертайме испанской команде.
в дополнительное времяでもよい。「延長戦」をЛаврентьевの和露辞典にはпродлённая играとあった。これは延びた試合ということだが、これは作ったロシア語で、普通のロシア語ではこうは言わないだろう。これが正解であるためには、仮に10分の試合をして、そのまま延長仮に5分に入ったとすれば、この試合の合計は15分になる。ところが延長戦と言いのは10分の試合をして決着がつかなければ、延長戦として5分別枠となるはずである。そういうふうに理解しないとпродлитьの意味が語義上合わなくなる。だからおかしいと個人的に思うわけである。この辞典の編集者が日本語の延長戦(野球やサッカー)という意味を理解していないようだ。分からないのなら載せなければ、少なくとも変な誤解はないから、学習者に迷惑をかけることはなかったはずだ。

 和露辞典に載っている語は露和を使って類推できるものがほとんどである。コンラッドの和露は諺などで参考になるものもあるが、収録されている語数が10万語と豪語しても古語ばかりだし、肝心の現代語の訳がよくないし、使えるような例文もない。3巻本の英露辞典にはв дополнительном времениと前置格の例文があり、この方がましだが、用例としてあまりこうは言わないと思う。自分なら使わない。英露辞典の技術関係のように語と語が1対1で対応している場合には、特に英露船舶辞典とか、露英ポリマー辞典とかならまだ誤訳の可能性は少ないというのは経験上言える。

 しかし辞書の訳が間違っていると大それたことを言っているのではなく、どの文脈で使うのかが明示されていないから、全部この語で間に合うと辞書を引く人は思い込んでしまう。それと学者は現場の事を知らないか、どう考えても直訳したとしか思えない訳もある。文化というのは国によって違うから、そういうのを説明しようとすると直訳というか、説明調にならざるを得ないのは理解できる。それならそれを明記すべきだし、よほど自信があるのなら別だが、ないのなら記載しないでほしい。間違いのもとだ。少しロシア語をかじれば直訳ぐらいは誰でも作れるから、勝手に拵えた直訳は載せてはいけない。いずれにせよ和露辞典には用例も載っている語彙も少ないから、どういう場合に使えるのかが今一つピンとこない。まさかどんな訳語でも万能で(どんな文脈でも)使えると思って辞書に載せたわけでもあるまい。多分概ねこのやいうで間に合うだろうというのを載せてあるのだろうが、実戦では和露辞典は使えないというのが私の見解である。結局のところ和露辞典に頼らずに、こつこつと自分で必要な語彙とその用例を自分用に集めるに如かずというのが私の30年来の持論でもある。

Posted by カレヤンカ at 2012年01月18日 07:34

キーボード操作で、「ワードで和文や英文から露文タイプに切り替えるにはAlt + Shiftキーを押す」ことは知りませんでした。やってみます。

Команда нашей страны проиграла(уступила) команде Испании
в дополнительное время.
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エクセルでも同じです。この点について第243回の本文に少し追記しました。さて正解ですが、уступитьは「抵抗を止める、相手が優位であると認める」ですから、「試合で負ける」という意味にはならないと思います。試合中は全力でプレーしないとスポーツマンシップに劣ると判断されるからです。ただこの劣るという意味なら使えます。

Posted by メイ at 2012年01月18日 23:08

英語版ウィキペディアがなんやらとかいう法案に抗議してサーバを停めておるのだとか。
言論の自由を守るための闘争は大いに結構ですが
米国時間で抗議せんでくれぃ
日本時間ではもろ夜に当たるやろが
地味に和文解釈で英語のウィキペディアも使とるんやで…
(問題文→アルクで英訳を探す→ウィキペディア英語版→露語版に飛ぶ
→本文から動詞やその他の語結合を確認→ヤンデックスで再確認→投稿 )
それはさておき

>キー配列をタイプアップしてプリントアウトしたものを
>コンピューターのそばにおき、単語や短文を打つ練習をした方が覚えるのが早い。
あ、これコーシカもやりました:手書きでですが。
おかげさまで今は日英露ともブラインドタッチでやってます
(露語は記号がちと怪しいですが気にしない!)。
(仏語はラテンアルファベットのくせに
[露語なみに]英語と配列がかけ離れておって未だに覚えられませんよ)

(お題)
我が国のチームは延長戦でスペインチームに負けた

Наша команда проиграла испанскому на овертайме.

さとうさんの『ロシア語会話表現集』52頁を参考にさせていただきました。
・延長戦 овертайм
和露を引きましたがしっくりこないので
今回も露語版ウィキペディアのお世話になりました:
http://ru.wikipedia.org/wiki/%D0%9E%D0%B2%D0%B5%D1%80%D1%82%D0%B0%D0%B9%D0%BC
・(対格か前置格はまぁええとして)вかнаか
наが適すると考えます:「延長戦」という特定の条件下での出来事を扱った文だからです
(岩波899頁、на、定義46および48;研究社1,055頁、同、定義II, A, 4およびII, B, 1)
・負けた
結果の存続と考えて(というのも話者にとっては腹の立つ話でしょうが)
完了体過去形を使っております
・延長戦で
延長戦”という状態において”と考え、前置格を充てております。
延長戦”にもつれ込む”と移動ないし転移を表すのであれば
対格が適すると思われます。
・用語その他
露語版ウィキペディアの「футбол」の頁にてサッカー用語がたくさん採れました:
http://ru.wikipedia.org/wiki/%D0%A4%D1%83%D1%82%D0%B1%D0%BE%D0%BB
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ほぼ正解です。овертайм(ホッケーやサッカーのなどの延長戦дополнительное время)は最新のアカデミーの露露ではв овертаймеです。ウィキペディア以外にовертаймでヤンデックスを検索すれば、どちらの前置詞を使うか参考になります。そうなるとв дополнительном времениではないかという疑問もわきますが、こういう用例は確かにありますが、少ないようで、в дополнительное времяのほうが多いようです。異論があれば投稿ください。
 問題なのはпроигралаを結果の存続(現存)だけと理解していることです。試合がたった今とか昨日終わったとか、あるいは1年前終わってそれ以降試合をしていないという場合は、確かに結果の存続です。しかし、具体的な負けた試合というのを心でイメージすれば、必ず過去の一点です。具体的な過去の一点を示す文言(вчера, в 2006 г.)が来れば、アオリストの用法であることは明らかですが、そうでなくとも過去の一点であることを話者が意識していれば、それはアオリストの用法です。ですから設問は文脈により結果の存続、あるいはアオリストであるが正解です。ただ和文露訳の場合、いずれにせよ完了体過去形が来るのですが、この使い方意識しないと体の用法を会得することは永久にできません。
 延長戦、つまりこの場合は時間の副詞について前置格としていますが、状態においてなら前置格をというのは非常に単純化した見方です。時間の副詞句は理解難しいものの一つです。в + 対格でも、в один прекрасный день(あるとき), в последнее время(最近)というのがある。時の副詞句で一番いい参考書は、第42回の回答でも触れたСпособы выражения временных отношений в современном русском языке(現代ロシア語における時制対応表現法), Всеволодова, Издательство Московского университета, 1975です。

Posted by コーシカ at 2012年01月19日 01:58

Наша сборная в дополнительное время проиграла Испании.
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正解です。

Posted by Ml at 2012年01月19日 03:42
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