2011年12月24日
●和文解釈入門 第218回
どの分野のロシア語の単語がむずかしいのだろう?政治や経済だろうか?しかし対応する日本語自体の意味が分かれば、そのロシア語は通常訳語は一つである。対応する訳語が一つしかないなら(1対1なら)機械的に覚えればいいから簡単だと言える。技術用語にしても基本語は少しは厄介かもしれないが、基本的には意味は一つだから覚えるのは簡単である。難しい言葉と言うのは多義語である。どの状況でどの語彙が出てくるのか、文脈を見極めるのに修練が要るからだ。しかもそれは露文和訳であって、それなら露和辞典や露露辞典とにらめっこすればほぼ解決できる。ところが会話での和文露訳なら、今度は日本語の多義語も相手にせざるを得ない場合もある。日本語のどの語彙がどのロシア語の語彙に合うのか、類義語中から選択しなければならないからもっとややこしい。
日本人が不得手なロシア語の用法は体の他に、複数・単数もあるが宇多文雄先生の「ロシア語文法便覧」(東洋書店、2009年)などを理解すれば、あとは実戦で鍛えるだけであるから問題そのものは解決したと言える。最大の問題は私の見るところ、類語の使い分けである。ロシア語、日本語のそれぞれに類語がある場合もあるし、多義語が相手という事もある。例えば第23回でпричинаには原因と理由という意味があると説明した。一方日本語の理由には根拠と口実という意味がある。だから数学の集合の解ように、互いの語のオーバーラップする部分を如何に訳出するかが通訳の腕の見せ所という事になる。причинаのように意味が違うと結びつく前置詞が変わったり、あるいは文脈によってはその日本語に対して別の類語を持ってきたり、日本語は名詞1語なのに、ロシア語では句動詞にしたり、名詞句、形容詞句にしたりということが現実に起こる。和文露訳でも露文和訳でも双方の言語に精通していないと正確な訳ができないというのはそういう意味である。
設問)「外科の治療を受けたことがおありになりますか?」をロシア語にせよ。
а) У вас есть опыт
обращаться к
хирургу ?
б) Вы когда-то
лечились у хирурга?
в) Вы когда-нибудь
подвергались
хирургическому
лечению ?
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a) は「外科医に相談すべき経験がありますか?」となんかへんなロシア語です。
б) は「外科医のところで治療したことがかつてありましたか?」正解と言っていのですが、когда-тоはなくても意味は通じます。
в)正解です。ただ外科手術といいたければоперация, хирургическое (оперативное) вмешательствоといういい方がありますが、後者は硬い言い方です。私の答えは、Вы лечились в хирургическом отделении?
動作の有無(この場合は経験)だから不完了体過去形を使う用法の復習。「入院したことがありますか?」ならВы лежали в больнице?
когда-нибудь (когда-либо)は不定の時を示すわけで、普通は未来で、「いつか」という意味で多く使われますが、過去でも疑問文で、「かつて」という意味で使われる場合があります。Видели вы это когда-нибудь?(それをご覧になったことがあるのですか?)。когда-тоは過去の「かつて」ないしは未来の「いつか、つまり直近ではない未来」という意味です。
設問)「外科の治療を受けたことがおありになりますか?」
Вы проходили хирургическое лечение?
今回は、過去の出来事、動作の名指し、経験(~したことがある)を問うている。この場合は、不完了体過去の動詞を使うはず。しかし、「・・・おありになりますか?」と丁寧な言い回しをしているので、丁寧な言い方も考えなければ・・・。Тыではなく、Выを使用することだけでクリアできるのかが、気になるところです。
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正解です。
Вы лечились хирургическим пучём?
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まあ大体いいのですが、путёмのスペルミス(凡ミス)があります。
あっ、現在完了や
外科の治療を受けたことがおありになりますか
Вы переносили какие-нибудь хирургические лечении?
研究社でоперацияを引いたら
ほぼ同じ例文が見つかったので流用しました。
経験の有無(=動作の有無)を尋ねる不完了体過去と考えます。
さて、正解は
動詞は簡潔にлечиться。
外科という部門で治療を受けたことがありますか、
と考えるんですね。
なるほど~
ついでなんで
英語だとどうなるかはうちのブログ(本店)で考えてみます。
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перенстиは医療関係では「手術に耐える」か「病気をする」かで使いますが、設問は必ずしも手術ではなく、外科で治療(施術といって外科手術の一歩手前ので、2,3日で退院できるようなものとか)、手術の相談かもしれません。それに麻酔すれば必ずしも手術に耐えるということではないので、この動詞は使わない方がいいでしょう。Больной недавно перенес тяжёлую болезнь.(患者は最近大病をした)なら可能です。