2011年12月14日
●和文解釈入門 第208回
歴史的過去の用法の一つに劇的過去настоящее сценическоеというのがあり、アカデミー文法ではнастоящее комментирующее(注釈的現在とでも訳すのか)と歴史的現在とは別の項目を立てている。これは脚本のト書きのようにこれから起こる出来事を不完了体現在形で記述するもので、物語をかいつまんで紹介したり、その絵画が何を表しているのかの説明とか、文学作品の中で出来事を時間の流れに沿って描写するときなどに使われる。この用法は歴史的現在と違い、過去の出来事をあたかも目前にあるかのようにするというような状況設定は必要ない。実際の作者が全てを見通していて、ある種の筋書きという線路の上を走るようなものだから不完了体現在形が使われるのだろう。例えば「Москва слезам не верит(原題はМосква слезам не верит, ей дело подавай.「泣き言は言わずにさっさとやれ」という諺から来ていると思われる)」という有名な映画の粗筋紹介では、Действие фильма происходит в 50 – 70 –е гг. ХХ в. Три подруги приезжают в Москву из провинции.(映画の舞台は1950年~70年代。女友達3人が田舎からモスクワにやってくる)と、別段シーンが目の前に浮かんでくるという感じではないが、立派な劇的現在の用法である。
ロシア語百科Русский язык, энциклопедия, Филин, Советская энциклопедия, 1979で現在時制の説明を読んでいたら、歴史的現在には過去のみならず未来をも不完了体現在形で示す用法があるとして、Через месяц я кончаю институт и начинаю работать в школе.(1ヶ月後大学を卒業して、学校で働き始める)という文を挙げていた。専門家ではないから何とも言えないが、これは不完了体現在の予定の用法にすぎないように思われる。これをわざわざ歴史的現在と呼ぶ必要があるのか非常に疑問だ。
設問)「彼は上司とそりが合わない」をロシア語にせよ。
Я не схожусь
характерами со своим
начальником.
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まあ主語は彼ですが、凡ミスでしょう。不完了体現在形を使っているのは否定文だからと思いますが、それが絶対だめだとは言いませんが、設問は結果の評価です。ですから完了体過去形を使うほうが自然だと思います。私の答えは、Он не нашёл с начальником взаимопонимания.
「それが合わない」は他にも、не сошёлся характером с руководителями(会社のトップとはそりが合わない)、не ладил с ним(彼とはそりが合わなかった)とか、не сработался с руководтсвом(〔仕事で〕上層部とそりが合わない)などが使える。「馬が合わない」としても同じだろう。
Он не сходится характерами с начальником.
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完了体過去形にした方が自然だと思います。
Мы с начальником не ладим.
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主語は彼だということを除けば、正解です。この動詞は完了体がないのでこれしかいいようがないでしょう。
ありがとうございました。残念ながら不完了体のつもりで投稿しましたので正解ではありません。辞書(研究社露和)には ладить に対応する完了体としては書かれていませんでしたが,поладить = прийти к соглашениюю, установить взаимопонимание, возможность совместной жизни, деятельности. П. с соседом. (ожегов: словарь русского языка) とありますので,結果の現存で Он с начальником не поладил. とは言えないでしょうか。
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поладитьには二つの意味があり、一つはна + 前置格を取るもので、「話をつける」という意味で、もう一つが、установить взаимопониманиеで、これなら「そりが合う、馬が合う」という意味で使えるでしょう。この動詞がладитьが多義語で、代表的な意味として、быть в хорошем отношенияхという動作ではなく状態の意味があるからでしょう。その意味でладитьはよく聞く動詞です。不完了体のладитьについていえば状態を示すので正しい用法といえます。この他にも、少し意味は違いますが、Семейная жизнь с Пера и первой супругой не заладилась с самого начала(ピョートルと最初の妻との家庭生活は最初からうまくいかなかった)があり、これは否定でよく使われ、удатьсяという意味です。ладитьと поладитьの関係はсидеть とсестьの関係と同じではないかと思います。ともに体のペアではありません。
いや別に上司とは(汗)
確かにタイプは違うけど(冷汗)
楽屋オチはさておき
(問)
彼は上司とそりが合わない
1) Он не сходит характером с его начальником.
2) Он не в ладу с его начальнком.
直属の上司個人と上手くいっていない、と考えました。
начальникを複数にした場合は上役全体の覚えがめでたくない
という意味になろうかと思われます:
この意味ではначальствоを使っても同義になるのではないでしょうか。
さて、正解は
えっ、結果の評価で完了体過去なんですか。
現在進行形でうまくいってないので不完了体現在と思ってました。
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上司については単数と複数の違いはおっしゃる通りです。1)はне сходитсяでしょう。否定形だし、これで絶対に間違いとは言えませんし、そういう風に使う人もいます。ただ完了体過去形の結果の評価と取る例がはるかに多いようです。ただ動詞を変えて、Жена явно не подходила Петру по храктеру(妻は明らかに性格的にピョートルに向いていなかった)とするのは状態ですから自然です。2)は最新のアカデミー版ではне в ладу (ладах) = нарушатьчто-либо, пренебрегать чем-либо, плохо разбиратьсяとあり、4巻本に載っていたне согласно, в ссореが外されています。アカデミー版の用例もИ живя не в ладу с законами. (それに法律とはうまくいっていないんだ)とかУ Цезаря Петровича руки золотые, а с теорией не в лалах.(ツェーザリ・ペトロヴィチは腕はいいのだが、理論となるとからっきしだ)などですから、こういうのを見ると正解にしていいものか迷います。不完了体でも状態を示すのなら正解だと思います。動作死か関係しない動詞では、私個人はこのような意味では使わないということで、あとは個人の考え方です。
ладить が状態を表すということは、Он с начальником не поладил. よりも、最初の投稿の Мы с начальником не ладим. のほうがよく使われるのですね。詳しいご説明ありがとうございました。