2011年11月30日
●和文解釈入門 第194回
「ロシア語の体の用法」(原求作、水声社、1996年)は名著だが、その123ページのПриезжайте в Осаку.(大阪にお越しください)という命令形は、「過程を表現できない動詞ですから、当然動作への着手も表現できない、ということになるのですが、命令形で使われる場合は例外、ということになります」とある。приходи(те)だって、Приходите и приводите друзей, если вам так хочется познакомиться с нашим заводом.(当社の工場をそんなに見たいとおっしゃるなら、いらしてください、ご友人もご一緒に)などと使う。これも着手の用法から派生した促しという用法である。これは動作の時間と回数の制約がない「いつか」という意味の着手と考えてもよいような勧誘的意味合いを持つ動作の要請で、相手を拘束しないような動作の時に用いられる。さらに、Белые братья – Наливайという歌の歌詞にНаливай, выпивай, кайф поймай, и еще раз...(注げよ、飲めよ、ハイになれ、そしてもう一度)のвыпивайは多回体だから過程の意味は表すことができないが、この場合明らかに着手の用法である。過程と着手の用法は関係ないのではないかというのが私の考えである。
приезжай(те)という命令形はприезажатьという不完了体だけでなく、完了体のприехатьの命令形でもある。Приезжайте в Осаку.は通常の会話の文脈から考えると明らかに不完了体の命令形で着手の用法だが、そのため用例としてはあまり適切とはいえない。
それと同書に「普通の状況では不完了体の命令形が使われるのが当たり前であるような動詞というのは、おのずと決まっています。以下のような表現は、そのまま、丸暗記しておけばよろしい。Входите. Проходите. Приезжайте. Приходите. Раздевайтесь. Садитесь.」と書いてある。むろんこれに反対するものではないが、露文解釈の専門家やロシア語の会話は原則としてしないという人であればこれでよいかもしれないが、通訳やガイドといった和文露訳の専門家のみならず、ロシア語の会話に興味があるような人に対してはこのようなアプローチはよくない。着手の用法は不完了体の基本的な意味でもあるので深く理解していないと、命令形といえば完了体しか出てこなくなるというような弊害を生むことになる。
本書とは関係がないが、思い出したのでついでに書いておく。при-という接頭辞のつく動詞は過程を示すことができないから、そこから派生すると考えられる予定の意味では使えないと考えられるが、L. MuravyovaのVerbs of motion, Русский язык, 1975の184ページにприходит, уходит, выходит = собирается прийти, уйти, выйтиとあり、
- Вечером у нас будет весело.(夜は楽しくなるわ)
- Кто-нибудь приходит к вам?(誰かお宅にいらっしゃるの?)という例を挙げている。
設問)「スーズダリはロシア有数の古い都市で、1024年から知られている」をロシア語にせよ。
1) Суздаль – один из древнейших городов России, известный с 1024 г.
2) Суздаль, один из древнейших городов России, известен с 1024 г.
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正解です。私の答えは、Суздаль – это один из древнейших российских городов, известен с 1024 г.
形容詞の短語尾известенでも結果の現存の用法があることが分かる。不完了体現在形を使えば、Море издавна славится как район добычи ценных сортов рыбы.(その海は昔から貴重な魚種の漁場として有名である)となる。
Суздаль является
видным старинным
городом в России, и он
известен с 1024 года.
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まあこれでも分かるでしょう。
スーズダリはロシア有数の古い都市で、1024年から知られている
Суздаль, один из русских старейшних городов, знаменит уже в 1 024 года.
1024年に史書に現れる、とのこと。
都市の創建はそれ以前と考えられるため、あえて意訳しました。
стал известнымも考えましたが、
1000年近く結果の存続というのも無理があるのでは…
と考え、形容詞短語尾にて述語的用法を使いました。
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結果の現存に千年や万年といった時間の制限はありません。お答えについては二つ問題があります。多分凡ミスだと思いますが、в 1 024 годаと書いていることです。сとвを間違えたのでしょう。それと4ケタの数字の場合続けて書くのがロシア語では普通ですし、年を表す時に3桁で区切るということは絶対にしません。
こんばんは。
Суздарь представляет один из найболее старых городов России, который известен с1024 года.
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正解です。ただСуздарьではなくСуздальです。それとкоторыйを受けるСуздальが離れているので、カンマもありますから取ったほうがよいでしょう。構文的には問題ありません。представлятьも「提示する」というのが基本的な意味であり、多義語ですから、собой, из себяをつけたほうがよいと思います。
Суздаль является превосходным, древним в России городом и известен с 1024 г.
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「有数の」の部分の訳が弱いように思います。それ以外はOKです。один и + 最上級の訳を「最も~の一つ」とだけ覚えるよりは、指折りのとか、有数のとか、最大級のとかの訳にも文脈によっては使えます。