2011年11月29日
●和文解釈入門 第193回
清水幾太郎(1907~1988)の「私の文章作法」の中に文章の書ける人(文章に縁のある人)と書けない人(縁のない人)とあって、文章の書ける人とというのは、文字や言葉や文章に相当好き嫌いのある人とある。次いで文章修業というのは自分の好きな文体の所有者の文章を徹底的に真似ることである。かなり英語ができる日本人でも、また一般のロシア人でも、ことロシア語となると、このような文章修業とこのコーナーで出題しているような作文の勉強は違うという事を認識していない人が多い。だから外国語であるロシア語で作文しても、文法や語法が間違っているのを直してもらうのは当然だが、文章が下手だからこう直したらいいというのは、直すロシア人がよほどロシア語の文章の達人でも御免蒙った方がよい。文章修業と作文の勉強を取り違えているのである。我々は日本語でもロシア語でも実用文で平明達意の文を書けることを目指すが、ロシア語の学習者として、とりあえずは文法や語法にできるだけ間違いがなく、白を黒と言わないようにということを心がける。基礎ができないでいきなり応用とはいかないからだ。基礎も応用もごっちゃにして説明しているロシア人の先生もいるように見受けるが、この二つは別物であり、応用の、いわゆる文章修業というものは人から手を取り足を取りして習うものではない。文章というのは人によって好みが違うし、よい文章にもいろいろなものがあるからだ。
設問)「壁は緑色に塗られている」をロシア語にせよ。
Стены окрашенны
красками зелёного
цвета.
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Стены окрашены зелёной краской.のほうがよいと思います。 スペルをокрашенと直すのと、1色の塗料を複数にするというのはどうかなと思います。またкраской зелёного цветаでも間違いではありませんがくどい感じがします。私の答えは、Стены покрашены в зелёный цвет.
「塗装する(塗る)」という意味ではкрасить (покрасить, окрасить, выкрасить)であり、語結合には二通りあって、красить в цвет (красить в краскуは古い用法), красить краскойがある。例文で示すと、
Свечи красили в розовый и голубой цвета.(ロウソクはピンクと空色に塗ってあった)
окрасить пластмассу в определённый цвет(プラスチックをある色に塗る)
окрасить краской на 2 слоя (на 2 раза)(二層(二度)塗りする)
日常よく見るのはОсторожно окрашено!とか Окрашено!で、「ペンキ塗りたて」という意味である。被動形短語尾の結果の存続という用法で、この場合「塗った直後」という意味がある。頻度は少ないがПокрашено! も使える。
名詞はокраска(塗装)となる。 нанести окраску по всей поверхности трубопроводов(パイプラインの全面に色を塗る)。закрашивать/закраситьは塗りつぶす、塗り隠すという意味で、закрашивать пятна в белый цвет (белым цветом)(しみを白色に塗りつぶす)である。
これに似た表現に「塗膜を塗る、コーティングcoatingする」というのがある。これはнаносить/нанести покрытие на + 対格で、
наносить покрытие на пластмассовые детали(プラスチック部品にコーティングする)
нанести антикоррозионное покрытие на трубы(パイプに耐食〔錆び止め〕コーティングを施す)
Стены окрашены в зеленый цвет.
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正解です。
ロシア人なら誰にでも直してもらえるというわけではないというのはわかる気がします。ただ自分は文章以前(文法校正の段階)なので大きなことは言えません。話してみて自分が信用できる人なら,文章の流れを統一してもらえれば有難いかなと思っています。
Стены окрашены в зелёный цвет.
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正解です。要は文法的ミス、用法のミスと、文章としてはこちらが自然だというのを区別してもらえるよう、直してもらったときに、どうして間違いなのかを相手に聞く勇気と、言い方(せっかく直してもらったのに図々しいととらえられるのはどうかとか)だと思います。しどろもどろのロシア語でもロシア語がうまくなりたいという熱意が相手に伝われば、基本的にロシア人は親切ですからそれに応えてくれると思います。
壁は緑色に塗られている
1) Стена окращена в зеленый цвет.
2) Стена окращена зеленой цветой.
研究社と岩波の例文を参考にしました
(研究社1,298頁、岩波1,098頁、окрасить)。
とはいえ1) は対格なので、緑に"なる"と状態の変化を強調するようにも感じます。
о...は表面の全体に及ぶ動作、とのことで
окращатьを使っております。
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被動形短語尾単数女性形はокрашенаです。
設問)「壁は緑色に塗られている」
① Стена покрасится в зелёный цвет.
② Стена выкрашена в зелёный цвет.
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二つ目のは正解ですが、初めのは間違いです。まずкраситьсяの意味は、主語が人間なら「自分の化粧をする〔完はнакраситьсяでも可〕」、「毛を染める」、「ペンキで汚れる」で、ものが主語なら、「染めやすい〔完はокраситьсяも可〕」、「染まる(比ゆ的な意味ではなく)で、完了体はвыкраситься, покраситьсяです。壁が勝手に(これから)緑色になるなら別ですが、こうは言わないでしょう。それとすでに塗られているわけですから完了体の未来形は使えません。
>被動形短語尾単数女性形はокрашенаです
あ~
仕事で翻訳したのなら信用に関わるところです、気を付けます…
покраситьだとどう違う?
と調べてみました
どうやらвыкраситьと一緒なようで、
окраситьと露露の定義が変わりませんでした…
確かにвы...を頭につけたら「…し尽くす(関西弁で「…したおす」)」になるけど…
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お調べのようにпокраситьとвыкраситьと同義語ですが、口語的です。ちょっと塗る(これは補語を取らないときの独自の用法)という意味もあります。しかもвыкраситьもокраситьと同義語です。