2011年11月16日
●和文解釈入門 第180回
英語とロシア語は同じインドヨーロッパ語族だから似ているとはいえ、体の用法というのはスラブ語独自のものであるとイェスペルセンも具体的な例を挙げて説明していることは第176回に紹介しておいた。英語では体の用法を慣用句でカバーしているわけである。むろん慣用句を多数覚えるというのも大変だが、しかし、それはある意味で機械的作業と言える。体の用法の理解というのはその本質を理解することであり、機械的に単語を覚えるのとはわけが違い、難しい。ロシア語の学者でも体の用法の重要さを指摘している人は少ないように思われる。指摘している人でも、それはあくまで露文解釈の観点からであって、通訳やガイドの経験がほとんどないからか、和文露訳のそれではない。イェスペルセンは教養のない農民でも25,000ぐらいの母国語の語彙はもっていると述べている。一概にデンマーク語や英語と比較できないけれども、同じ論法でいけば、ロシア語だって辞書1冊とは言わないまでも、その1/4ぐらいの語彙を覚えないとロシア語を最低限理解したとはいえないことになる。英語は初歩の文法と語彙をある程度覚えたら、その後、慣用句を大量に覚えればそれでマスターという事になるのかもしれないが、ロシア語ではそうはいかない。露文解釈はまだそこに、普通は正しいロシア語が書かれているから体の用法を特に気にしなくても訳せるかもしれないが、和文露訳では体の本質を理解しないと、1万か2万の語彙を覚えても、結局はロシア語がよく分からない、朦朧とした状態が続くことになる。しかもその語彙がたんに覚えるだけでなく、使えるようになるまでには何年かかることか。それゆえロシア語をマスターするためには、初級の段階で体の用法の本質を理解する重要性が理解されるはずだ。体の用法さえマスターすれば、後は類語と語彙を機械的に増やして行くだけでよい。
ロシア語の住民名で、モスクワや東京などは露和辞典にも載っているからいいが、他の都市ではどういうのか想像はつくもののはっきりとは分からない。それで何年か前から自分でエクセルに読んだ小説の中に都市の住民名が出て来るものは別にリストアップすることにした。しかし、私のコレクションは外国の都市名も入れているとはいえ、179と大した数ではない。最近黒田龍之助先生の「ロシア語の余白」(現代書館、2010年)を読んだら、Русский названия жителей, словарь-справочник, И.Л. Городецкая/Е.А. Левашов, Астрель/АСТ, 2003という辞書のあることが紹介されていた。早速ナウカに注文し、購入した。これはロシアの都市の住民名を用例と共に約14,000収録している。これまでロシア語関係の辞書は320種集めたが、これは知らなかった。いろいろな辞書があるものである。黒田先生は言語学者でもあり、ロシア語についてはオーソドックスなアプローチで、初心者にロシア語をどう教えるかということのエキスパートだが、私は、一度(あるいは一度ならず)ロシア語を諦めた人たちにロシア語会話で実際にロシア人と会話するにはどうしたらよいかを文法を軸に趣味としての再学習を勧めるという立場である。一度ロシア語を諦めた人は都市鉱山のようなもので、その埋蔵量というか可能性は非常に大きいと思う。私のコーナーはこういう人たちに、ロシア語を趣味や生きがいにしてもらおうという試みの一つである。
設問)「前を失礼します」をロシア語にせよ。
(1) Простите пройти
мимо вас.
(2) Разрешите идти
впереди вас.
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最初のはあなたのそばを通るですから、前でなくともいいわけです。つまりこれは正解ではありません。二番目はあなたの前を私が歩く(つまり両方とも動いている)ということで、これも違います。設問の趣旨は、座っている(立っている)人の前を歩いて横切るという意味です。私の答えは、Разрешите мне пройти перед вами.
Разрешите пройти.
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これだと通り過ぎるだけですから、前でも横でも後ろでもよいわけです。これだけだと不正解です。
だれかの目前を横切ることを想定して、考えて
みました。
Разрешите пройте через вас.
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設問はご理解の通りですが、お答えを和訳すれば、あなた方の間を通り抜けさせてくださいとなります。もしあなたが一人ならあなたを越えてとなりますから、実際問題としてあり得ないと思います。
ここ数日、睡魔との戦いが続き、不正解はともかくとして、スペルミスが多く、お恥ずかしい限り・・・
翌日確認する度に赤面!しております。しかし、まだまだ頑張って続けたいと思いますので今後もご指導いただけますようよろしくお願いいたします。
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まあスペルミスはなくすようにすべきですが、テストでもありませんし、要は間違いに気づくということだと思います。それに一応は会話における和文露訳ですからね。気楽に続けるのが一番です。
今回は「深読みまちがい」と「省略まちがい」でしたね。やられました。